第八十二話:新しい戦乙女の発掘
「新たな戦力をスカウトする」――安倍星華の提言は、一行に新たな希望をもたらしたが、その方法はあまりにも悩ましい問題だった。
「全国地方の古来からの英雄を戦乙女として顕現させると言っても、簡単ではない。ましてや、八咫烏に既に取り込まれている可能性を考えると…」
星華が懸念を口にする。
「今回の新選組のように、主君を失った魂が、偽りの『誠』に利用されるパターンもある。下手に覚醒させるのは、敵に塩を送る結果になりかねん」
「新選組はオレと絆を結んでいたんだけどな…北海道の闘いの前にそれが何か断ち切られたというか…」
その言葉に、基地の空気は再び重くなる。
「じゃあ、もういっそ、これまでみたいに地方と強ーい結びつきがある英雄は止めて、『フリーランス』の人、探しますか!」
健太が、場を和ませようと冗談めかして言った。
「そんな都合のいい戦力が、いるわけ…」
彩花は苦笑したが、その言葉の途中で、何かに気づいたようにハッと目を見開いた。
「…あ、いるかも」
「え、誰!?」ユウマが身を乗り出す。
「戦国武将や知将といった、部隊を率いる能力はないかもしれない。でも、日本には、戦国時代から数多くの武神とも言える、一つの流派を築き上げた『剣豪』たちがいる!」
彩花は、興奮したように続ける。
「例えば、桜親ちゃんの桜新陰流は、元々、柳生新陰流からの派生。他の皆が使う武術にも、それぞれ源流をたどれば、伝説的な『真祖』がいるはず。その魂を現代に受け継ぐ人材を発掘しましょう!」
「剣豪って…アレか?宮本武蔵とか?」
ユウマが聞くと、彩花は大きく頷いた。
「その通り!実は、日本には『武芸百人一首』と言われる、古今の名だたる武芸者の記録が残ってるの。これを辿れば、きっと見つかるんじゃないかな!」
だが、その意気揚々とした提案に、服部夜刃が少し微妙な顔をした。
「…理屈は分かるが、そう簡単ではないぞ。知名度の低い流祖などは、そもそも魂が現代に留まっておらず、顕現しづらい。流派だけが形として残り、開祖が誰かすら、失伝してしまっている場合もあるからな」
夜刃は、さらに重要な事実を付け加えた。
「むしろ、史実よりも、虚構でも知名度が高い存在の方が、人々の想念を集め、顕現しやすいことさえある。我ら伊賀九曜衆にも、真田十勇士にも、歴史上は架空とされる術者がいるのが、その証拠だ」
「まあ、分かんないから、とりあえず探してみようぜ!」
複雑な議論を、ユウマの一言が断ち切った。
「家に籠ってても、何も始まらない。行ってみて、ダメだったら、また次の手を考えればいいだろ!」
その鶴の一声で、方針は決まった。
「最初の目的地は、熊本。剣豪・宮本武蔵が、晩年にかの有名な『五輪書』を遺した地だ」
こうして、ユウマと玲奈、そして護衛役として星荘と桜親を加えた四人の、新たな仲間を探す旅が、始まろうとしていた。




