第七十七話:新宿決戦:【絆】の逆転劇
「―――八犬義盟・不壊之陣!」
八犬士たちが組んだ、悲壮なまでの覚悟の円陣。だが、武田・上杉連合軍の猛攻は、その決死の守りさえも打ち砕かんとしていた。
「これで終わりよ!我が風林火山の奥義、受けてみよ!『紅蓮輪陣』!」
武田嵐花が軍配を振り下ろすと、山県昌美率いる赤備えの騎馬隊が、炎の化身となって円陣の周囲を高速で駆け巡る。それは、全てを焼き尽くす巨大な火炎竜巻となり、八犬士たちを絶望の渦へと追い詰めていく。
『ダメだ…もう終わりだ…』
『八犬士が…負けるなんて…』
『八人全裸ありがたや~』
『ここで逆転はムリか…』
ユウマの必死の応援実況も虚しく、配信のコメント欄には絶望的な言葉が並ぶ。八犬士の霊力が、まさに尽き果てようとした、その瞬間だった。
―――天から、一本の光の柱が降り注いだ。
その神々しい光は、八犬士たちが組む円陣の中央へと正確に降り立ち、猛威を振るっていた武田の炎の騎馬隊を、まるで陽炎のように掻き消した。
「なっ!?この強力な霊圧は…!?」
武田も上杉も、そして八犬士たちも、驚愕に目を見開く。
光が収まった円陣の中央には、石川五愛萌に支えられ、凛として立つ佐藤玲奈の姿があった。
「みんな、お待たせ!」
その声は、何よりも力強い勝利の狼煙だった。
玲奈の胸で、母なる星【伏】の宝玉が、これまでにないほどの輝きを放つ。ユウマを通じて流れ込む応援の力が、玲奈という完璧な増幅器を得て、純粋で強大な守護エネルギーとなり、枯渇しかけていた八犬士たちの全身へと、奔流の如く注ぎ込まれた。
「―――八犬義盟・烈火桜乱!」
「今です、桜親さん!」
玲奈が叫ぶ。
八犬士全員の力が、玲奈を通じて一つに集約され、その全てが犬江桜親の愛刀「桜嵐」へと注ぎ込まれる。刀身は、仲間たちの想いを受けて、桜色の極光を放った。
「桜新陰流奥義!桜嵐・零式――千にして、一つの太刀筋!」
さくらが放った一閃は、もはや剣技ではなかった。仲間たちの絆そのものが刃と化した、絶対的な一撃。それは、武田軍の陣形を、そして総大将である武田嵐花ごと、音もなく切り裂いた。
「…馬鹿な」
嵐花がその一言を呟くと同時に、彼女が纏っていた武技礼装はガラスのように砕け散り、その肢体を晒して大地に崩れ落ちた。
「…真田十勇士、しくじりましたね」
それを見届けた上杉聖流は、静かにそう言い残すと、毘沙門天の旗と共に、戦場から姿を消した。
歴史上、相容れることのなかった二大勢力が手を組んだ「紅白連合」が、八つの絆の前に敗れた瞬間だった。武装解除された武田軍の面々は、駆け付けた安倍星華たち「星詠司」によって、静かに回収されていった。




