第六十二話:最終決戦:【黄金の野望】 vs 【八つの絆】
東京上空から見下ろすように黄金に輝く空中城郭――
配下たちが次々と打ち破られ、あるいは無力化されていく中、豊臣華織はただ一人、東京の中心で不敵に笑っていた。
彼女の周りを、満身創痍ながらも固い決意の瞳を宿した八人の戦乙女たちが、包囲するように取り囲んでいる。
「上等やんか。結局、最後はトップ同士の器量比べっちゅーわけやな」
華織の全身から、これまでとは比較にならないほど強大な黄金のオーラが立ち上る。それは、一人の人間が抱く野心としては、あまりにも巨大で、あまりにも眩い光だった。
「見せたるわ!あんたらの信じる、脆くて曖昧な『絆』とやらが、うち一人の絶対的な『野望』の前に、いかに無力かっちゅーことを!」
■第一段階:黄金太閤・天魔招来
華織の霊力が、彼女が立つ地面――日本の経済を象徴するアスファルトを黄金に変えていく。金は瞬く間に天へと駆け上り、巨大な黄金の大阪城、あるいは第六天魔王の居城であった安土城を模した、禍々しい天守閣を構築する。
華織自身も、黄金の甲冑を纏った「太閤」の姿へと変貌。その力は、もはや一人の戦乙女ではなく、一つの軍勢、一つの災厄そのものだった。
「全財産、賭けたるわ!『金華繚乱・天下布武』!」
黄金の城から、無数の金の矢、金の砲弾が雨のように八犬士へと降り注ぐ。それは単なる物理攻撃ではない。触れた者の心を「金」で支配し、戦意を削ぎ、仲間への不信感を植え付ける呪いの弾幕だ。八犬士たちは、それぞれが連携して防御するものの、その圧倒的な物量と精神攻撃に、じわじわと追い詰められていく。
■第二段階:八宝玉・天命創世
「みんな、心を一つに!」
後方で戦いを見守る玲奈が叫ぶ。彼女の胸で、母なる星【伏】の宝玉が、これまでにない輝きを放った。ユウマが集めた、日本中の視聴者からの純粋な応援の「想い」。玲奈は、その想いを増幅させ、八人の戦乙女たちの心へと直接送り込む。
「「「おおおおお!」」」
八犬士たちの心が、完全に一つになる。金の呪いは、彼女たちの揺るぎない絆の前では意味をなさない。八人は、玲奈を中心とした完璧な円陣を組む。
星荘の【義】が天を指し、
桜親の【仁】が地を護り、
雷道の【智】が敵の弱点を暴き、
碧毛の【礼】が陣に秩序をもたらし、
凪角の【信】が仲間との信頼を結び、
聖乃の【忠】が陣の核を支え、
華信の【孝】が感謝の力を与え、
雫文の【悌】が陣全体を癒し、繋ぎとめる。
八つの宝玉から放たれた、仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌、それぞれの色を持つ八色の光が、天守閣の中心で一つに収束していく。
「これがあんたの野望への、私たちの答えだ!」
星荘の叫びと共に、八色の光は、全ての色が混じり合った純白の、しかし虹色の輝きを秘めた巨大な光の奔流となって、黄金の天守閣へと放たれる。それは、個人の野望(金)と、人々が紡いできた絆の集合体(虹)との、最終的なイデオロギーの激突だった。
■決着
黄金と虹色の光が激突し、東京の空が昼間のように照らされる。一瞬、華織の黄金の力が、虹色の光を押し返すが、その光の向こう側には、ユウマを通じて応援する数十万、数百万の人々の顔があった。
―――パリン。
何かが砕ける音と共に、黄金の天守閣に亀裂が走る。そして、連鎖するように、城は、華織の纏っていた甲冑は、彼女の野望そのものが、ガラスのように粉々に砕け散った。
後に残ったのは、全ての霊力を失い、呆然と天を仰ぐ豊臣華織の姿と、彼女を静かに見下ろす、八人の勝利した戦乙女たちだった。




