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バトル・メイド・サーヴァントII~大東京八宝玉魔法陣編  作者: 黒船雷光


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第六話:メイド日和

 ■秋葉原の余韻と新たな展開


 秋葉原での激戦を終え、ミッドナイト基地は束の間の平穏を取り戻していた。

 しかし、ユウマのチャンネルは、さらなる活況を呈していた。

 「#東京魔法陣」の噂はさらに広まり、オカルト情報とメイドに関するタレコミが日夜寄せられるようになった。


「いや〜、視聴者さん、マジで感謝しかないぜ! オカルト情報にメイド情報、これからはもっとバズるネタ提供していくからな!」ユウマは画面に向かって手を振る。

 膨大な情報量に、これからどう活用していくか、ユウマの頭の中はフル回転だった。


「ホシナさんさ、俺さ、共鳴者としての使命が戦乙女の力を共鳴増幅させることならさ、他の戦乙女も全員紹介してくれないかな? その方が効率いいじゃん?」ユウマは星荘(ほしな)に素直な疑問をぶつけた。


 しかし、星荘(ほしな)はぴしゃりと却下した。「無理だ、ユウマ。私は今、サンシャインシティで行われるコスプレ同人即売会の準備で忙しい。それに、全員をいきなり紹介するのは、まだ時期尚早だ。」

「えーっ、ホシナさん…東京魔法陣の危機と同人誌って比較対象…なんすか?そんなこと言わないでさ〜」

ユウマが食い下がると、玲奈が目を輝かせてホシナに話しかけた。

「サンシャインシティでコスプレ同人即売会! いいですね! 私、乙女ロードの話とか、もっと聞きたいです!」玲奈の声が弾む。星荘(ほしな)と同じ穴の(むじな)という奴か…どうやら個人的な興味と一致したらしい。


 その傍らで、健太はパソコンの画面と格闘していた。集まる情報の量は膨大で、真偽が混交していることに苦慮しながらも、データベースの作成を続けている。

「うーん、この情報、ホントかよ? 怪しいな…でも、捨てるわけにはいかねえし…」


 彩花は、これまで戦った敵集団、織田焔たちの歴史的背景をサイケデリックな図表にまとめ上げていた。「織田信長…第六天魔王…ふふふ、彼の魂がどのような変遷を経てメイドになったのか…興味深い…」彼女の周りには、怪しげなオーラが漂っている。


 安倍星華(あべ・せいか)が姿を現し、冷めた口調で忠告する。

「油断はならないが、織田焔(おだ・ほむら)程の実力者があれだけ一方的に敗れたとあれば、しばらくは他勢力も何も動きはないだろう。今のうちに、体制を整えておくことだ。」


 ■予期せぬ再会と新たな出会い


「やっべ、暇になっちゃったな…」健太のタスクを尻目にユウマは手持ち無沙汰に(つぶや)いた。

すると、星荘(ほしな)が「お前もコミティナに来るか? 荷物持ちくらいにはなるだろう」と意外な提案をしてきた。


「えっ、マジっすか!? 行く行く!」ユウマは二つ返事で快諾した。


 サンシャインシティのイベント会場は、まさに熱狂の渦だった。色とりどりのコスプレを身にまとった人々がひしめき合い、華やかな雰囲気がユウマを包み込む。そこで、ユウマは意外な人物と再会する。


「あら、ユウマじゃない。こんなところで会うなんて奇遇ね」


 振り返ると、そこにいたのは新宿で出会ったメイド、桜親(さくら)だった。彼女戦乙女とは異なるメイド服を着て撮影に応じていた。

「サクラさん! え、何してるんすか、こんなとこで?…本職もメイドさんなんすか?」


「ふふ、ちょっとした営業活動よ。あなたも相変わらず騒がしいのね。」桜親(さくら)は意味深な笑みを浮かべ、ユウマの胸の紋章に視線を向けた。

「え?本職もメイドってもう何が何だかわからないっすね…」

「え~っ!コレでも新宿じゃ結構有名なコンカフェの看板娘なんだぞ?」ちょっと胸を張る桜親(さくら)。大胆にスリットが入った胸元の谷間が美しい。

「じゃ、じゃあ…今度ウチのチャンネルにコラボして生出演してください」

「それはどっちのサクラがいいの?」

「それ、どっちとかあるんすか?」

戦乙女(バトル・メイデン)としては流石に無理かな~まあ、認識阻害があるからどっちにしても無理か…」


 星荘(ほしな)がそこに差し込んできた。

「今日は新宿空けてて良いのかよ?」


「あら、星荘(ほしな)じゃない…アンタこそ」

「いやだって、ここ地元だもん」

「最近景気悪くてメイド喫茶も営業必須なんだよね…イベントあれば即参上!」

戦乙女(バトル・メイデン)って結構苦労人多いの?」とあきれているのは玲奈である。


 ひとしきり話した後、即売会会場に向かう。

 そこでユウマはブースで目を疑う光景を目にする。


「いらっしゃいませ。こちらの『雷光の乙女は夜に喘ぐ』は、今しか手に入りませんよ」


 なんと、そこには紺色のメイド服ではない、私服姿の雷道(ライカ)が、きわどいイラストの同人誌とゲームソフトをを笑顔で販売しているではないか。雷道(ライカ)の背後には、健太のデータベース構築に使用されていたものと同じような、複雑なアルゴリズムが描かれたボードが立てかけられている。


雷道(ライカ)さん!? え、何、これ…」ユウマは言葉を失った。


 雷道(ライカ)は涼しい顔で答える。「ああ、これかい? 私の趣味でね。同人活動も、情報収集の一環だよ。【智】の宝玉の守護者も、たまには羽を伸ばさないとね。」彼女はユウマに一冊の同人誌を差し出した。「よかったら、買って行ってくれ。売り上げは、私の研究費になる。」

「買うのは良いですが…プレイ実況配信とかいいですか?」

「あはは…垢BANされたくなかったらお勧めしないかなー」

「あ~そっちっすかぁ~まあ、健太への土産にはなるか…」


 ■賑やかな事務所と頼れる仲間


 結局、イベント終了後ユウマの事務所にメイドたちが集合することになった。

 サンシャインシティから連れ帰った雷道(ライカ)…そして星荘(ほしな)と玲奈。


 事務所に集まったメイドたちを見て、玲奈は眉間にしわを寄せた。「なによ、また女の子が増えて…私の居場所がなくなるじゃない…」しかし、今回のイベントで確保したBL本のお陰ていつもよりは期限が良さそうである…


 健太と彩花は目を輝かせている。「うおお! 雷道(ライカ)さん、事務所にいるとかマジっすか! 俺、サイン欲しいっす!」健太は興奮を隠せない。


 彩花は雷道(ライカ)の隣に陣取り、オカルトノートを広げている。「雷道(ライカ)さん、電気の精霊の召喚術について、詳しく教えてください! この文献に書いてある【雷神の血統】って…」


 そして、さらに賑やかさが増したのは、桜親(さくら)が事務所に現れた時だ。「ごめんくださいまし〜。ユウマ様のお邪魔かしら?」サクラは優雅な所作で事務所に入ってきた。


「サクラさん! え、どうしたんすか?」ユウマが驚いて尋ねる。


 桜親(さくら)はにこやかに答えた。「せっかくの縁だもの、店長と交渉したら、客呼べるならOKって…それで、あなたたちのお手伝いができればと思って。それに、気になることがいくつかあってね。」彼女の視線が、彩花のオカルトノートに注がれる。


「まあ! 桜親(さくら)さん! もしかして、歴史とかオカルトとか、お好きなんですか!?」彩花は興奮気味に身を乗り出した。


 サクラは優雅に微笑んだ。「ええ、少々ね。特に、幕末の動乱期には関心があるわ。新選組の土方美鈴さんとも、何度かお会いしたことがあるのよ。」


「ひゃーっ! マジですか!? 土方美鈴さんの武勇伝とか、裏話とか、色々聞きたいです! 私、幕末の戦乙女伝説、最近ハマってて…」彩花はサクラの手を取り、目を輝かせながら話し始めた。二人は瞬く間に歴史トークで盛り上がり、事務所の一角は歴女たちの熱気で包まれた。

「ちょっと待て…このまえガチでバトってたじゃん…それって?」

「こう見えても桜親(さくら)は桜新陰流という柳生派生の桜花特化型の流派の免許を受けている身。対して新撰組の土方と言えば天然理心流…江戸末期の実践剣法として有名だからな…手合わせは望むところだ」

「それは親交じゃなくて戦闘ですよね?」

「これかだから素人は…剣士は剣を交えて鎬を削るだけで何万という会話をするんだよ~」

「へ、へえ~そのエピソードって配信していいっすか?」

「ははは…解説ネタにしてくれてもかまわないけど、共鳴者(レゾネーター)としてちゃんと味方してくれよな」


 星荘(ほしな)は賑やかな光景に呆れつつも、「流石、共鳴者(レゾネーター)だな…」と呟いた。共鳴者(レゾネーター)であるユウマの周りには、自然と様々な存在が集まってくることを再認識しているようだった。


 そんな中、雷道(ライカ)が健太のデータベース構築を手伝うことを申し出てくれた。

「健太君、君のデータベース、見せてもらったよ。かなり優秀だ。だが、情報の真偽顛倒(しんぎてんとう)を処理するには、もう少し工夫が必要だね。私の持つ知識で手伝わせてもらおう。」


 雷道(ライカ)は、健太が集めた情報提供者の過去投稿をリサーチし、信用度をスコアにしてある程度の情報を優先度付けしてカテゴライズしたり、類似性のある情報を精査するなど、拡張性と一次フィルターでスピードと正確性を向上させるシステム導入を提案した。


「ホントはこんな作業内閣府御庭番の仕事だよね、これ」雷道(ライカ)はそう言って笑った。その言葉に、健太は驚愕する。「内閣府御庭番って…まさか雷道(ライカ)さん、何者なんすか!?」


「私は違うぞ…ただの電脳オタクのフリーターだ」雷道(ライカ)は意味深に微笑む。


 そんな中、健太のデータベースに新たな情報が(もたら)された。


「ユウマ! 来たぜ!上野着の新幹線に隻眼のメイドが乗車してるってタレコミが複数だ!」

「 伊達政宗の情報を継ぐ隻眼のメイド、伊達星夜(だて・セイヤ)…」星荘(ほしな)が継いで語る。


 またしても安倍星華(あべ・せいか)が何処からともなく現れる。

「彼女が八坂瓊曲玉を狙って、上野にくるって訳か…思ったより早いな。新宿、秋葉原の守護戦乙女が揃っているとはな…好都合です。上野の【礼】の宝玉の(バトル・)守護(メイド・)戦乙女(サーヴァント)と集結して一気に撃退してください…」


 ユウマの胸の紋章が再び強く脈打ち始めた。

 予告された次の戦いが、もうすぐそこまで迫っていることを告げるかのように。

■参考文献


荒俣宏「帝都物語」

加門 七海「大江戸魔方陣」「東京魔方陣」

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