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バトル・メイド・サーヴァントII~大東京八宝玉魔法陣編  作者: 黒船雷光


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第五十七話:第一戦線:【義】と【仁】 vs 【鬼】

「行かせてもらうぞ、小娘ども」


 轟音と共にアスファルトを砕き、連合軍の先陣を切って突撃してきたのは、「鬼の佳月」の異名を持つ

 柴田佳月(しばた・かづき)だった 。その手に持つのは、もはや武器とは呼べぬほどに巨大で、禍々しいオーラを放つ金属製の長柄長刀。彼女の体躯を遥かに超えるその得物が、嵐のような勢いで薙ぎ払われる。


「させない!」

「させません!」


 その破壊の化身の前に、二つの影が立ちはだかった。池袋の守護者・犬川星荘いぬかわ ほしなと、新宿の守護者・犬江桜親いぬえ さくらだ。


「さくらちゃんは、懐へ!私が正面から受け止める!」

 星荘(ほしな)は十字槍「星嵐槍」を大地に突き立て、迫りくる柴田の薙ぎ払いを真正面から受け止める。凄まじい衝撃が星荘の全身を襲い、腕が痺れる。だが、彼女の【義】の宝玉は、仲間を守るという固い決意に呼応し、決して退くことを許さない。


 ガギィィィィン!


 星荘が盾となっている、その一瞬の隙。

「はあっ!」

 桜親(さくら)は、桜の花びらが舞うように優雅なステップで柴田の足元へと潜り込む。彼女の愛刀「桜嵐」が、下から上へと、鬼の懐を切り裂かんと閃いた。桜新陰流の神速の剣技だ 。


 だが、柴田は「鬼」の名を冠するだけではなかった。

「甘いわ!」

 彼女は星荘の槍を力で押し返しながら、体勢を崩すことなく、さくらの剣を長柄の石突で弾き飛ばす。力だけでなく、その巨体からは想像もつかないほどの技量。


「なっ…!」

 体勢を崩したさくらに、柴田の無慈悲な追撃が迫る。

「さくらちゃん!」

 星荘は即座に槍を振るい、柴田の武器を横から打ち据えることで、辛うじてさくらを救出した。


「強い…!」焦る星荘(ほしな)

「力が、違いすぎる…!」太刀の間合いではどうにもならないほどの不利を感じる桜親(さくら)


「柴田勝家といえば、信長の忠臣の中でも筆頭…なんで焔さんが倒れたとはいえ、こんな安易に豊臣に仕えるなんて…」彩花の歴女としての知識がその違和感を払拭できない。

「なにせ、史実では信長の妹の絶世の美女でもあるお市の方と結婚されてますからね…今はおんなのこだから百合かしら…きゃぁ~」なんかおかしな方向に暴走している…


 二人のエースをもってしても、柴田佳月の圧倒的な力の前に、じりじりと追い詰められていく。その光景は、ユウマの配信を通じて、数十万の視聴者へと届けられていた。


『まずい!星荘とさくらが押されてる!あの鬼メイド、強すぎるぜ!視聴者さん、二人を信じる力を、今こそ送ってくれ!』


 ユウマの絶叫。それに応える、爆発的な応援コメント。歴史的な見識も彩花の誘いもあって増える。

「#焔のことを思い出せ!」「お市の方が泣いているぞ」「勝家お前だけは織田を裏切らなかった」

 その想いを、玲奈が【伏】の宝玉で受け止め、純粋な力へと増幅させる。

『ユウマ、みんなの気持ち…今、二人に届ける!』


 ―――その時、奇跡が起きた。


(この人の力は、ただの破壊じゃない…誰かを想う、あまりにも真っ直ぐな、忠義の力…!)


 星荘は、最後の力を振り絞り、叫んだ。

「あなたのその力、本当に今の主君に捧げるべきものですか!?織田焔様に仕えたあなたの『不撓不屈(ふとうふくつ)』の忠義は、そんなものではなかったはずだ!」


 その言葉は、呪いのように柴田の動きを縛った。

 彼女の脳裏に、鮮烈な記憶が蘇る。


 ―――くわっはっは!見事な働きじゃ、佳月!それでこそ、わしの右腕よ!


 傲慢で、不遜で、しかし誰よりも気高い、かつての主君・織田焔の笑顔。己が忠義を捧げた、唯一の存在。


「お館…様…?」


 鬼の形相が、一瞬だけ揺らぐ。長柄を振り下ろす腕が、コンマ数秒、ためらった。

 その、永遠にも思える一瞬の隙を、さくらは見逃さなかった。


「今です、星荘さん!」


『二人を信じる力を、今こそ送ってくれ!』

 ユウマの絶叫と、玲奈の増幅を経た共鳴の光が、二人に降り注ぐ。


「私たちの【義】と【仁】…そして、みんなの想い!あなたの本当の忠義ごと、受け止める!」

 星荘の槍が、柴田の渾身の一撃を、今度はピタリと受け止めた。鬼の動きが、生まれて初めて完全に停止する。


「ありがとう、ほしなちゃん!みんな!」

 さくらの姿が、霞む。それは、桜新陰流奥義の構え。


「我が一閃、桜と共に舞え。《桜嵐・零式》――刹那にして千の刃!」


 桜吹雪のように舞う無数の斬撃が、動きを封じられた柴田佳月の全身に、休むことなく叩き込まれた。それは、敵を討つためだけの刃ではない。彼女を縛る偽りの忠誠を断ち切り、その魂を解放するかのような、慈悲の嵐だった。


「ぐ、おおおおおっ!」


 鬼の絶叫が、東京の空に木霊した。

 柴田佳月の武技礼装が破壊され、美しく鍛え上げられた肢体が倒れて残る。

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