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バトル・メイド・サーヴァントII~大東京八宝玉魔法陣編  作者: 黒船雷光


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第五十四話:戦乙女メディアミックスプロジェクト

 かつての混沌とした熱狂は、今や静かな、しかしより強固な自信へと変わっていた。


 池袋のミッドナイト基地は、ただの配信スタジオではない。伝統と現代を結び、日本全土の「想い」を集約する、新時代の霊的情報戦略拠点へと変貌を遂げていた。



「――つまり、この勾玉は古代の人々にとって、神や祖先の魂が宿る『サーバー』のようなものだったのです」


 基地の一角に設けられた撮影セットで、犬坂碧毛(いぬさか・あおい)が、博物館の所蔵品の精巧なレプリカを手に、穏やかに語りかける。彼女の個人チャンネル「あおい先生のわくわく歴史ミステリー」の収録中だ。


 その隣、カメラの死角で、真剣な眼差しでモニターを見つめる玲奈が、インカムに指示を出す。

「健太、テロップはこう入れて。『古代の魂のクラウドサーバー』って。彩花ちゃん、次の資料お願い」


 彼女はもはや、ただのサポート役ではない。ユウマが集める視聴者の熱狂を、その身に宿した【伏】の宝玉で受け止め、誰もが理解できる「共感」へと変換・増幅させる、プロジェクトの心臓部だ。


「視聴者のコメント、すごい勢いだよ!」

 配信全体のモニターを管理するユウマが、興奮した声を上げる。「『なるほど、戦乙女の力ってそういうことか!』『ただのバトルじゃなくて、日本の歴史を守ってるんだな!』…みんな、ちゃんと理解しようとしてくれてる!」


 ユウマが集めるアンテナ役としての「共鳴」。それを玲奈が増幅器として「共感」に変える。その力を受け、碧毛のような戦乙女たちが専門家として「コンテンツ」を発信する。この新たな力の循環が、視聴者との間にこれまでにない強固な絆を生み出していた。


 休憩中、健太が嬉しそうに報告する。

「『アイドル八犬伝』プロジェクト、大成功だよ!桜親(さくら)ちゃんのデビュー曲はネットチャートを席巻してるし、星荘(ほしな)さんの『現役執事が教えるマナー講座』は女性ファンが急増中。雷道(ライカ)さんはeスポーツチームからスカウトが来たらしい!」

「いいね!…最後のは大丈夫か?って思わなくはないけど…雷道(ライカ)ちゃんややチート臭い気が…」とユウマが率直に聞くと「雷道(ライカ)さんは、ちゃんとプレイスタイル手元含めて実況画面見せてやってるから全然正々堂々だよ!」健太がちょっと何言ってんの?という勢いで擁護する。


 彩花も頷く。

「コメントの質も変わってきたよね。『誰推し』っていうのもあるけど、それ以上に『【義】の心って大事』とか、『私も【仁】の気持ちを大切にしたい』みたいに、彼女たちの信念そのものを応援してくれる人が増えてる」


「そうか…まあ、エンタメ風ではあるけど、本質的にあるものがちゃんと共感されるなら、これ以上目的に即しているものではないからな…歴史は年表覚えるものではなく、何を積み重ねて今に至るのか…を知ってもらえるならそれに越したものではなよな!」ユウマも偉そうに口上を述べる。


「まあ、元々オカルトマニアとかオタクってそういう経緯調べて語るのが大好きだからね…私もだけど…ふふふ…」彩花は本質的には何も変わってないなと安心させられる。


 ユウマは深く頷いた。北海道での戦いの後、彼らは気づいたのだ。中華チャンネルのような刹那的な欲望を煽るコンテンツには、同じ土俵で戦っても勝てない。

 だが、自分たちには、彼女たちが背負う二千六百年という日本の歴史と、そこに込められた人々の想いがある。


「俺たちがやるべきは、ただ再生数を稼ぐことじゃない」

 ユウマは、隣に立つ玲奈を見つめた。彼女の瞳には、かつての不安はなく、絶対的な信頼と自信が宿っている。

「この国の伝統と、俺たちデジタル世代の架け橋になること。古来の力を、今の時代を生きる俺たちが理解できる『物語』にして、伝えていくことなんだ」


 玲奈が、そっと胸に手を当てる。そこにある母星としての【伏】の宝玉が、ユウマの決意に呼応するように、温かい光を放った。

「うん。その力があれば、私たちはどこにいても繋がっていられる。東京にいなくても、北海道で戦う仲間を、全力で支えることができる」


「と・こ・ろ・で…」玲奈は改めてユウマに向き合う。

「な、なんだよ…改まって?」


「ユウマって鈍珍だから自覚なく言ってたというのは十分わかっているんだけど……」

少し俯きながらユウマのTシャツの裾をつかんで引っ張る。

「え?な、なんか言ったっけ?」

「私のことは家族って言ってくれてたじゃん?」

「う、うん…まあ、妹みたいな?」

「それって…血縁関係にあるってことよね?」

「そりゃそうだけど…」

「私は血縁じゃないわよ…」

「な、何が言いたいのかな?」

「血縁でなくて家族って…」

「うん?……ちょ、ちょっとそんなにシャツ引っ張るなよ」


玲奈は顔を赤くしてユウマを見上げる。「ふ、夫婦とか…」

「へっ?!…え?」


素っ頓狂な返事しかできないユウマの顔を見て、玲奈はスンとなり

「もう、最悪…」

と言ってスタスタと去ってしまう。


その様子をニヤニヤしながら見送る健太と彩花…

「と、尊いわ…」とか彩花は言っている。


既に常駐している星荘(ほしな)は「て、手強い…」と何に対して敵対心を持っているのかわからない独り言を言う…


 身内のゴタゴタを抱えつつもユウマたちのメディアミックス戦略は、単なるアイドルプロデュースから、日本の魂そのものを未来へ繋ぐための、壮大なプロジェクトへと進化していた。

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