第五十二話:共鳴のプロデューサー
静まり返ったミッドナイト基地の作戦室で、ユウマの告白を聞いた服部夜刃は、掴んでいた彼の方を静かに離した。彼女は冷静に分析する。
「…なるほど。共鳴の核は、単純な好意や信頼ではない。対象との関係性を『再認識』した際の、強い精神的衝撃か。…利用できるな」
そのあまりに即物的な結論に、玲奈が「そういうことじゃ…」と反論しかけるが、ユウマはそれを手で制した。夜刃の言う通り、それは一つの真実であり、次なる戦いへの鍵だったからだ。
「分かったよ」
ユウマは、決意を固めた目で仲間たちを見回した。
「俺たちの次の手は、ただ視聴者を増やすだけじゃない。健太が言っていた『メディアミックス』と、今分かった『絆の力』。この二つを組み合わせるんだ」
「というと?」健太が身を乗り出す。その顔は『アイドルやらせるなら水着グラビア』と言っている。
口に出す前に彩花がヘッドロックを決めてその言葉が口を突いて出てくることはなかった…
「つまり、戦乙女一人ひとりの個人チャンネルを作る。でも、そこでやるのは、ただのゲーム実況や雑談じゃない。彼女たちの人生そのもの…悩みや、喜びや、過去…視聴者が彼女たちの『内面』に深く触れて、俺と同じように『関係性を再認識』するほどの、濃いコンテンツを作るんだ!公式アイドルユニット「八宝備神」…とか?」
ユウマの言葉に、健太はプロデューサーの顔つきで指を鳴らした。
「最高じゃないっすか!まさに『推し』を育てるコンテンツ!例えば…」
健太は、その場で企画会議を始めた。
「星荘さんは、アニメサークル所属で執事喫茶の店員 。『現役執事が教えるマナー講座』や、『【義】の戦士が語る!アニメの中の正義!』なんてどうです?そのギャップがファンを掴む!」
「それなら…」と、彩花も目を輝かせて続く。
「碧毛さんは博物館のガイドだから 、『深夜の博物館貸し切り!学芸員が語る呪われた収蔵品』とか!オカルト的にもバッチリ!」
「桜親ちゃんはメイド喫茶の看板娘だから 、歌って踊るアイドル路線が王道よね。
凪角さんは婦警さんだから 、女性向けの護身術講座なんて、社会的にも意義があるんじゃない?」
玲奈も、いつの間にか企画に引き込まれている。
「雷道さんは天才ハッカーだからeスポーツ大会に出て無双する !」
「いや、ハッカーとして出場はマズイw」
「聖乃さんは気象予報士だから、異常気象と霊的災害の関係を科学的に解説するチャンネル !
雫文さんは看護師だから、戦場で役立つ応急手当講座 !
華信ちゃんは宝くじ売り場の子だから、全国のパワースポットを巡る開運Vlog !」
ユウマたちが次々とアイデアを出し合い、熱を帯びていく。その様子を、安倍星華は静かに見つめていた。
「…その方針、認めましょう。桜親と星荘の番組に対しての一定の固定ユーザーとその推し活は結果も出ています。絆の深化が共鳴の増幅に繋がるのなら、理にかなっている。ですが、忘れてはなりません」
星華は、一同に釘を刺す。
「あなた方が有名になればなるほど、敵の標的にもなりやすくなる。そして、世間があなた方を『本物の戦士』だと認識しすぎれば、それは社会に大きな混乱を招く。エンタメと現実の境界線は、常に意識しなさい」
「そして」と、服部夜刃が続けた。「これは、新たな戦争の始まりだ。貴様らがメディアでファンを獲得するように、ロシアも中国も、必ずや自国の戦乙女をアイドルとして売り出してくる。戦場は、物理的な空間から、ネット上の支持率や影響力を奪い合う『霊的代理戦争』へと拡大するだろう。その覚悟があるのか?」
重い警告に、一同はゴクリと息をのむ。
ユウマは、仲間たちの顔を一人ひとり見つめ、そして、力強く頷いた。
「覚悟は、あります。ただのオカルト配信じゃなくなった時から、とっくに。俺たちがやるのは、世界一のプロデュースチームになって、この新しい戦争に勝つことです。…さあ、仕事の時間だ!」




