第四十五話:符合する各地の問題
星荘と桜親のコラボ配信は、これまでの戦闘中継とは異なるファン層を獲得し、視聴者数を安定させることに成功した。
ユウマは、自身の原点であるオカルトから内容が逸脱していることに、やや不満を感じながらも、画面の向こうで喜ぶ視聴者と、それに応える戦乙女たちの姿を見ていた。自分の都合より、彼女たちを応援し、共鳴で支えること。その使命感を、彼は少しだけ自覚し始めていた。
そんな、穏やかな反省会の空気を、唐突に彩花の声が切り裂いた。
「実は、ちょっと分かって来たんだよね…」
彼女はオカルトノートとタブレットを交互に見ながら、確信に満ちた瞳で話し始める。
「蝦夷共和国の氷華さんも言ってたけど、北海道が抱える問題って、北方の領土問題、中華資本による土地の買い占め、財政破綻した市の問題…これって全部、表の政治に直結してる。オカルト的に言えば、『日本の龍脈そのものが、自分たち以外の存在に奪われている』っていう現状だと思うんだ。東京ドーム800個分もの土地が買われてるって話もあるし、かなり深刻だよ」
彩花の言葉に、一同は息をのむ。彼女の分析は、各勢力の動機へと鋭く切り込んでいく。
「東北の隻眼北斗龍は、やっぱり3.11の震災復興や原発問題に対する、国の対応への根深い不信感が原動力になってそう。
新潟を拠点にする龍神毘沙門天も、最近の大きな地震からの復興での対応の遅れとか、東京じゃなくて良かった…とか同じように国への不満を抱えている人は多いと思う。現政権に対するそういう不信感と絶望が分かりやすい形になったから、甲斐の風林火山もそれに呼応したんじゃないかな…」
「表裏一体って訳?」健太が分かった風に聞く。
「大阪の黄金の羅針盤は、もっと分かりやすいよね。万博で膨らんだ借金問題とか、外国人移住による治安悪化に対する、地元の人たちの不安がそのまま彼女たちのエネルギーになってる」
彼女は一度言葉を切ると、少し困ったように笑った。
「まあ、織田ちゃんは…よくわかんないけどw」
ユウマは、彩花の立てた仮説を頭の中で反芻し、一つの結論にたどり着いた。
「つまりは、今の日本各地が抱えるリアルな不安要素が、そのまま東京魔法陣に対する霊的な干渉と、完全に一致しているっていうことか…?」
その問いに、彩花は「あくまで、そういう可能性があるんじゃないかって、私の憶測だよ」と肩をすくめる。そして、悪戯っぽく笑って続けた。
「でも、火のないところに煙は立たないって言うじゃん?」
彩花の言葉は、一同に重い現実を突きつけた。彼女たちが戦っている相手は、単なる歴史上の怨念や異世界の侵略者だけではない。それは、現代日本が抱える痛みや不安、そのものなのかもしれない。
「それで言うと、次にどの勢力が攻めてくるとか予測が立つ?」
彩花の鋭い分析に、ユウマは思わず身を乗り出して尋ねた。彼女の仮説が正しいのなら、次なる脅威を事前に察知できるかもしれない。だが、彩花はふるふると首を横に振った。
「うーん、それは天気予報より確率が低いよ…。だって、南海トラフ地震が来るって、もう何十年も前から散々言われてきてるけど、じゃあ明日来るの?って言われたら誰も分からないでしょ?それと同じ。日本が抱える未来への不安、そのものに、今の私たちは試されてる…とか?」
「なるほど、面白い仮説だ」
その声は、部屋の誰もいないはずの空間から響いた。一同がぎょっとして振り返ると、そこにはいつの間にか、腕を組んだ安倍星華が立っていた。彼女は、感心したように彩花を見つめている。
「星華さん!頼むから突然出てくるの止めてくれないかな…心臓に悪いって!」
ユウマが抗議の声を上げる。
「何を言っている。お前たちは今や、この国の国防に関する最重要人物になっているのだぞ。監視もするだろう」
「え?そういう話になってんの!?俺たち、只の動画配信者だぜ?」
「そう思っているのは、お前だけだ」
星華はユウマの反論を冷たく一蹴すると、本題に入った。
「まあ、今日来たのは別の用事だ」
「なんですか?」
「以前、全ての国内勢力を裏で操る黒幕がいて、その候補が『八咫烏』だという話をしたと思うが…」
「はい、覚えています」
星華は、一度ゆっくりと息を吸い込み、そして、爆弾を投下した。
「最近、その組織の中に、我々が注視すべき人物がいるという報告が入ってな…誰だと思う?」
「誰ですか?」
星華は、真っ直ぐにユウマの目を見据え、告げた。
「潟梨幸太郎。…お前の父親だ」




