第四十四話:チャンネル配信視聴者交流編
【ユウマのミッドナイト・トーキョー!特別配信】
『――というわけで、武闘対決はまさかの引き分け!二人とも、お疲れ様でした!』
ユウマの興奮した声と共に、画面が切り替わる。仮想道場からミッドナイト基地のスタジオに戻った犬川星荘と犬江桜親が、少し息を切らしながらも満足げな表情でソファに座っていた。
『いやー、二人ともマジでカッコよかったぜ!』
『視聴者さんからのスパチャも鳴り止まないよ!「最高の戦いをありがとう!」「二人とも推せる!」だって!』
ユウマと健太が盛り上げる中、星荘とさくらは少し照れくさそうにお互い顔を見合わせた。
『さて!熱い戦いの後は、クールダウンと行こうぜ!』ユウマが進行役として仕切り直す。『ここからは、視聴者さんから寄せられたお悩みに、二人がビシッと答えちゃう、「戦乙女のお悩み相談室」のコーナーだ!』
画面には、事前に募集していた視聴者からの悩みがテロップで表示される。
■ペンネーム「恋するJK」さん(17歳・女子高生)
「クラスに好きな人がいるんですが、なかなか話しかける勇気が出ません。どうしたら、もっと積極的になれますか?」
「うーん、これは青春だねぇ」さくらが腕を組む。「よし、私から!恋するJKさん、聞いてる?大事なのはね、【仁】の心だよ!」
「【仁】ですか?」星荘が問いかける。
「そう!【仁】っていうのは、相手を思いやる心。だからね、いきなり告白!とかじゃなくて、まずは相手のことをよーく見て、何に困ってるかな、何が好きかなって考えてあげるの。例えば、彼が忘れ物をして困ってたら、さっと貸してあげるとか。そういう小さな優しさの積み重ねが、きっと彼の心を動かすはずだよ!頑張って!」
さくらの、メイド喫茶で培われたであろう的確かつ王道のアドバイスに、コメント欄は「さくらちゃんマジ女神」「これは惚れる」と絶賛の嵐だ。
続いて、星荘が真剣な表情で口を開く。
「私からは、【義】の視点でアドバイスを。恋するJKさん、あなたのその『好き』という気持ちは、誰にも恥じることのない、あなただけの正義です。だから、自信を持ってください。もし、彼に話しかけるのが怖いなら、まずは挨拶から始めてみてはどうでしょう?『おはよう』の一言に、あなたのまっすぐな気持ちを込めるんです。その小さな一歩が、きっと大きな未来に繋がります」
執事喫茶で鍛えられた、凛とした、しかし優しいアドバイス。視聴者は「ほしな様…」「説得力がすごい」と感嘆の声を漏らす。
■ペンネーム「残業つらいOL」さん(25歳・会社員)
「毎日残業で、心も体もボロボロです。上司は仕事を押し付けてくるばかりで、もう会社を辞めたいです…」
「うわー、これは切実…」ユウマも同情する。
今度は星荘が先に口を開いた。
「残業つらいOLさん。まず、毎日お疲れ様です。あなたのその頑張りは、決して無駄ではありません。ですが、自分の心と体を壊してまで尽くすのは、本当の『忠義』とは言えません。時には、勇気を出して『できません』と言うことも、自分自身に対する誠実さ…つまりは【義】なのです。もし、どうしても言えないのなら、まずは信頼できる同僚や、さらにその上の上司に相談してみてはいかがでしょうか」
さくらも力強く頷く。
「そうだね!一人で抱え込んじゃダメだよ!会社っていうのは、みんなで支え合う場所のはず。もし、その上司が【仁】の心を持っていないなら、そんな人のためにあなたが心をすり減らす必要はないよ!転職だって、立派な選択肢の一つなんだから!」
二人の力強いエールに、コメント欄には「泣いた」「明日から頑張る」「俺も転職しよ」という共感の声が溢れた。
■ペンネーム「推し活ゲーマー」さん(22歳・大学生)
「ソシャゲのガチャで、どうしても推しキャラが出ません。もう課金額が限界です。どうしたら物欲センサーを回避できますか?」
これまでとは毛色の違う質問に、スタジオが笑いに包まれる。しかし、この質問に誰よりも真剣な表情になったのは、オタクである星荘だった。
「…お気持ち、痛いほど分かります」
彼女はカメラをまっすぐに見つめ、熱く語り始めた。
「いいですか、推し活ゲーマーさん。ガチャとは、我々オタクに課せられた試練。ですが、忘れてはなりません。我々の推しへの愛は、決してガチャの結果で揺らぐものではないということを!出るまで回すのは【義】にあらず!むしろ、限られた予算の中で、いかにして推しを愛でるか、その戦略を練ることこそが【智】!そして、たとえ引けなくとも、SNSで神引きした他の同志を祝福し、共に喜びを分かち合う…それこそが【悌】の心なのです!」
完璧すぎるオタク理論に、ユウマも健太も腹を抱えて笑っている。
さくらも「なるほどー!深いね!」と感心しきりだ。
女子高生からOL、オタクゲーマーまで、どんな悩みにも真摯に、そしてそれぞれの信念を持って答える二人の姿に、視聴者数はうなぎのぼりだった。武闘対決とは違う、心の強さと優しさ。そのギャップが、視聴者の心をがっちりと掴んだのは言うまでもない。
『いやー、二人とも、今日は本当にありがとう!』
ユウマが締めくくろうとした時、星荘とさくらは顔を見合わせ、悪戯っぽく笑った。
『『次は、ユウマと玲奈ちゃんのお悩み相談室かな?』』
「「ええええええ!?」」
ユウマと玲奈の絶叫が、ミッドナイト基地に響き渡った。配信は、大成功のうちに幕を閉じた。




