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バトル・メイド・サーヴァントII~大東京八宝玉魔法陣編  作者: 黒船雷光


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第三十九話:ロシアと蝦夷と…中華マネー

 堂々と正体を晒して乗り込んできたラスプーチナは、その言葉を裏付けるように、底なしの霊力を解放した。彼女が持つ「シベリアの呪杖」が禍々しい光を放つと、大通公園の地面から、あるいは虚空から、おびただしい数の妖魔が次々と召喚される。


 札幌の大通公園は大量に送り込まれる全身を氷の氷柱で覆われた虫のようなコアが赤く光る妖魔達が大量に流入し戦乙女(バトル・メイデン)達を物量で追い詰める。


「なっ…!これが、氷帝の幽姫…!?」

 北条氷華(ほうじょう・ひょうか)が驚愕の声を上げる。これまで対峙してきたどの敵とも、力の規模が、そして質が違いすぎた。無尽蔵とも思える妖魔の物量に、新選組を中心とした蝦夷共和国(エゾレガリア)のメンバーは瞬く間に押し込まれていく。


「退くな!奥州の意地を見せよ!」

 助太刀に駆け付けた伊達星夜(だて・セイヤ)率いる隻眼北斗龍ドラコセプテムステレスも奮戦するが、その圧倒的な数の前に、茂庭環(もにわ・たまき)の幻術も、片倉影(かたくら・えい)の隠密行動も、鬼季成実(おにき・なるみ)の剛勇も、全てが飲み込まれようとしていた。


 その絶望的な光景を見ていた安倍星華(あべ・せいか)が、苦々しく呟く。

「これまで小物ばかり送り込んできたロシアが、ついに名を持つ戦乙女(バトル・メイデン)を派遣してきたということは、本気でこの地を獲りに来たということですか…」

「しかし、いくら隣接するとはいえ、海を越えてこれほどの軍勢の侵入を許すとは…」


視聴者さんたち(ウォッチャーズ)!ここで踏ん張らないとマジでヤバイぜ!力を貸してくれ!」

 札幌の戦場で、ユウマは必死に叫ぶ。だが、彼の配信コメント欄は、戦況への危機感とは裏腹な、欲望に忠実な言葉で溢れていた。

「伊達さんをもっと映せ!」「ロシア美少女はいずこ?」「新選組もっとガンガレ(棒)」

 応援の熱量が、明らかに足りていない。


「くそ…なんか盛り上がりに欠けるぞ…視聴者数ってどんな感じだ?」

 ユウマの問いに、隣でスイッチング作業をしていた玲奈が、信じられないといった顔で答える。

「全然増えないヨ!…ていうか、なんか、いまネットで別の話題が席巻してる!」

「え?」


 驚くユウマの元に、ミッドナイト基地の健太から個別チャットが飛んでくる。

『中国だよ!中華チャンネルが、リテラシー無視で戦乙女たちのヤバイアングルの実況を流してる!』

「なんだって?!」


 

「なんで中国が?!…まさか?」

『そのまさかだよ!雷道(らいか)さんから連絡が来てるけど、中華資本(チャイナマネー)が買い漁った北海道のリゾート施設から、違法ドローンが大量に派遣されて勝手に実況してるんだ!』


「なんてこった!」ユウマは叫ぶ。「服部さん!」

「分かっている!」

 いつの間にか周囲の影に潜んでいた「影刃(かげやいば)」たちが、違法ドローンを次々と撃墜していく。

「ドローンと言えど、結界の中には容易に侵入できないはず…」と星華が訝しむ。

「ラスプーチナが引き入れているな…ロシアと中国が、裏で手を組んでいる…?!」

 夜刃(やいば)が険しい顔で結論づけた。


 前回の黄金の羅針盤(アウレウスユニオ)と同じだ。ネットワークを利用した人々の意識の流れを、共鳴の力として使っているのだ。

「でも、日本のネットワークとロシア、中国って直接つながってないんじゃ?」

『表向きはな…VPNを使えば普通にネットは使える。現代科学の情報共有が、良し悪し両方の側面で機能しているということだ…』

 健太からの補足に、ユウマは唇を噛んだ。


「くそ!…蝦夷共和国(エゾレガリア)隻眼(ドラコ)北斗龍(セプテムステレス)のみんな!俺の共鳴(レゾネート)から感じてくれ!!本当の敵は、目の前の妖魔だけじゃない!俺たちを盗撮する、卑劣なドローンだ!」


 ユウマの魂の叫びに、土方美鈴(ひじかた・みすず)が即座に応じる。

「心得た!全隊、上空の蝿どもを叩き落とせ!」

 その号令一下、新選組や伊達の部下たちは、自分たちに付きまとう無数の小型ドローンを次々と破壊していく。


 その光景を見て、ラスプーチナはくすくすと妖艶に笑った。

「あらあら、意外と早くネタばらしされてしまいましたわね」


 彼女は呪杖を振るい、残った妖魔を霧のように消し去ると、優雅にお辞儀をした。

「今日のところは、この辺りにして差し上げましょう。また近いうちに、お会いいたしましょうね」

 高らかな笑い声と共に、ラスプーチナは戦場から姿を消した。


「…今回も、大ピンチだったけど、どうにかなりましたね…」

 玲奈が胸をなでおろす。だが、ユウマの表情は晴れない。彼は、深く落ち込んでいた。


 そこへ、北条氷華(ほうじょう・ひょうか)が歩み寄る。

「助かりました…と言いたいところですが、なかなか厳しい戦いでした。これで敵にもし増援が来た場合、伊達殿が助太刀してくださったとしても、支えきれるかどうか…」


 中華ネットの台頭、欲望に正直で移ろいやすい視聴者、そして、自分の力の限界。課題は山積みだということを、ユウ-マは改めて認識させられた。

 北の大地で、彼は改めて自分の無力感に打ちのめされていた。

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