第三十四話:服部忍軍九曜衆
渋谷スクランブル交差点に、奇妙な静寂が訪れた。
豊臣華織と石田の自漫才に差し込む形で、服部夜刃がその姿を晒して乱入し、あまつさえ九曜と言う伊賀忍者集団を召喚したのだ。
暗部の暗部である影刃がこうしてその姿晒してでも華織の戯言を看過できなかったと言うのもあるのだろうが、八犬士達は少なからず動揺している。
「我らが『影刃』が誇る、伊賀忍軍の精鋭部隊。この国の平和を影から守り続けてきた、私の刃であり、影でもある者たち…伊賀九曜衆だ」
夜刃は一人、また一人と、背後に控えるくノ一メイドたちを、八犬士とユウマに示すように紹介し始めた。
「伊賀の上忍、百地三太夫の名を継ぐ、九曜衆の筆頭…百地三奈美」
百地三奈美は艶やかな黒髪を長編みにし、赤いリボンでアクセントをつけたクールビューティーで、忍装束はタイトな黒のショートトップとミニスカートで、肩と太ももが露出している。網目のアンダーが筋肉質でもボリュームのある肌に食い込み、強さと色香を醸し出している。
クッキリとした目鼻立ちだが、口元はマスクで見えない。紫の瞳がミステリアスな雰囲気を漂わせ、腰に差した短刀がトレードマークの様だ。
「伊賀三大上忍が一角、藤林長門守が持つ万の術理を受け継ぐ者…藤林七海」
ショートカットの銀髪に、深い緑の瞳が印象的な知的な美少女。
忍装束は薄緑のスリット入りロングスカートと、透け感のある袖が特徴。
腰に巻いた帯には忍術書を模した小物が揺れ、知性とお色気を両立している。
「物語に謳われし蝦蟇使いの妖術を、その身に宿す…自来也妃花」
燃えるような赤いロングヘアに、大きなリボンでポニーテール。露出度の高い黒と金の忍装束は、胸元が大胆に開き、網タイツがセクシーさを強調。背中には巨大な蝦蟇の刺繍が施され、自信満々の笑顔がチャームポイント。
「天下の大盗賊、その神出鬼没の技と度胸を継承する…石川五愛萌」
ゴージャスな金髪をハーフアップにし、赤い着物風のミニドレスを着たグラマラスな美少女。胸元の深いVネックと太ももまでスリットが入ったスカートが大胆。
盗賊らしい金のアクセサリーがキラキラと輝く。
「伊賀流の忍術書『万川集海』を幼少期に学び、独自の「鼠姫の忍術」を編み出した。幻術使いの名を冠する…菅沼心愛」
小柄で愛らしいルックスに、ピンクのツインテールが特徴のロリ系美少女。鼠をモチーフにしたふわっとしたミニドレスは、裾にふわふわのフリルが付き、愛らしさと色気を兼ね備える姿は忍びというよりアイドルだ。
鼠の耳型カチューシャがポイント。
「伊賀流鉄砲術の祖、その一撃必中の魂を宿す…伊賀崎美知佳」
その姿はクールな青髪をショートボブにし、鋭い眼光が印象的な美少女。黒と青のタイトな忍装束は、スレンダーな体型にフィットし、肩と背中が露出したデザインで、鉄砲をモチーフにしたペンダントが揺れる。
「真言立川流の祖、その絶大な法力と慈悲の心を持つ…空海美琴」
神秘的な紫髪をゆるやかなウェーブで流し、僧衣をアレンジした白と紫のミニドレスを着た聖女風美少女。
胸元に蓮の花の刺繍、背中に羽のようなマントが揺れる。
慈悲深い微笑みが魅力的に見えるが奥底に秘めた闇を感じる。
「そして、鞍馬の天狗に育てられし、悲運の武将の武技を極めし者…源黒実」
華奢で可憐な美少女だが、凛とした雰囲気を漂わせる。黒髪を高く結い上げ、赤と金の和風忍装束は動きやすさと優雅さを両立している。
背中に天狗の羽を模した飾りが付き、剣を手に持つ姿が美しい。
一人一人が紹介されるたび、その場に満ちる霊圧は濃くなっていく。服部夜刃は、紹介を終えると冷徹な瞳でユウマと八犬士たちを見据えた。
「我らは貴様らの仲間ではない。だが、この国の秩序を乱す者は、それが誰であろうと排除する。それだけのことだ」
ユウマは躊躇したが、夜刃が名乗って登場したからには、実況に移ることを覚悟して口上を述べたと判断し、カメラを向ける。これまで政府の御庭番として暗躍する影刃の存在は夜刃から聞いてはいたが、一切扱うな…という話であったので、そこまで徳川に対する揶揄でキレるとは…というのが正直な心象でもあった。
「おい、視聴者さんのみんな見てくれ!政府の陰で暗躍し、諜報活動をすると噂される影刃の面々がついに表舞台に!なんかよくわからんが盛り上がってきた!」
ともかく、実況者としてのユウマは盛り上げることしかできない。共鳴者としては契約もしてなくても過去に共鳴現象が起きればその力になれていた八犬士もいたが、うっすら感じる感覚として闇の奥に吸い込まれるような脅威を感じるだけで、共鳴という感覚は無い…見た目は心躍る美少女たちだが、畏怖の念の方が強い。
「伊賀最強忍軍?!」「ハットリねーさんの同僚萌エロ~」「半蔵門って彼女の実家?」「服部ってあのはっとりか?」「忍者メイドキタコレ」「無能そうな政府こんなの組織してんのかよ有能」「馬鹿これ服部家って徳川に仕える一門だろ?」「百地三太夫~」コメント自体はいつものノリである。
ミッドナイト基地からは、彩花が「伊賀最強九曜衆…ってコレ実況OKなんだっけ…はわわ…服部半蔵につづいて百地三太夫に自来也、藤林長門守とか超有名どころからマニアックなメンバーまで!っていうか空想人物までいるじゃん…なんでもありか?!まあ、法術とか陰陽師とか悪鬼妖怪まで出てくるから何でもありか~w」と独りでのたうち回りながらメモを取りまくっている。
渋谷の空の下、三つの軍勢が睨み合う。その混沌の口火を切ったのは、伊賀忍軍を率いる服部夜刃だった。
「伊賀九曜衆、八犬士に助力し、豊臣軍を排除せよ!」
その号令一下、戦況は一変した。数で圧倒的に優位に立った八犬士と伊賀忍軍は、怒涛の連携で黄金の羅針盤に襲い掛かる。




