第三十三話:豊臣劇場と伊賀九曜
「貴様ぁ!よくもお館様を!」
主君を討たれた森蘭丸の怒りは、憎悪の刃となって裏切り者・明智光を襲う。
忠臣の刃が反逆者の武技礼装を切り裂き、明智光の肢体は力なく渋谷交差点の中に崩れ落ちた。
「#エッ!!!」「燃え萌!」「下着まで〜何故にwでも許す!!」「主君裏切る理由w」
逆臣の討伐も、第六天魔王の軍勢の瓦解は、戦況を好転させはしなかった。
織田焔という強大なカリスマと、ユウマとの直接的な共鳴を失った第六天布武の戦乙女たちは、焔、光を主にその肢体を晒さんがために撤退していく。
戦場に残されたのは、圧倒的な黄金の豊臣軍勢と、絶望的な状況に追い詰められた八犬士たちだけだった。
「うおおおお!三つ巴の混乱状況は抜けたけど、一つも好転してねぇ!黄金の羅針盤、豊臣華織…強い!」
ユウマの実況コメント欄は、「もう終わりの始まり」「逃げるんだよホシナ!」「東京オワタ」といった絶望の言葉で埋め尽くされ、阿鼻叫喚の様相を呈していた。
「どや、正面対決だけが戦争ちゃうで。ちゃんと歴史に学ばんとあかんで?そなら、いっちょ語ったろかぁ〜」
【漫才:秀吉と三成の天下統一&グローバル自慢】
秀吉(華織)「 おおー、まいどー! 天下人の豊臣秀吉や! 今日はワシの成り上がりから天下統一、さらには世界に名を轟かせた話、聞いてってや! 相方はこの真面目くん、石田三成やで!」
三成(美咲)「 またそのノリか、秀吉はん! 天下人言うても、昔はただの農民やん! 草鞋持ちからスタートやろ? ほんまに天下取ったんかいな!」
秀吉「おっと、三成、ツッコミ鋭いな! せや、ワシ、尾張の貧乏ガキ、日吉丸やったけどな、そこから天下まで駆け上がったんや! 織田信長はんの草鞋、ホッカホカに温めて信頼勝ち取ったんやで!」
三成「 それ、ただのゴマすりやん! ほんで、墨俣の一夜城とか、ほんま無茶苦茶やったやろ? 夜通しで城建てるとか、計画性ゼロや!」
秀吉「 計画性!? そんなん待っとったらチャンス逃すわ! 川の流れ使って木材ババっと流して、ドーンと建ててもうた! 敵もビックリや! あのスピードがワシの関西魂やで!」
三成「スピード言うても、ただの無謀やろ! でも、確かにその後、長浜城主になって、中国攻めも任されたんはすごいわ。」
秀吉「せやろ! 鳥取城の兵糧攻めで敵をガマン比べで降伏させて、毛利ともガチンコや! そしたら、最大のピンチ! 本能寺の変や! 信長はん、明智光秀に裏切られて討たれたんや!」
三成「せや! 秀吉はん、その時、中国で毛利と戦っとったのに、めっちゃ速く戻ってきたやん! 『中国大返し』やろ? あれ、戦国のマラソン並みや!」
秀吉「 ハハハ! マラソンやなくて、戦国の新幹線や! 毛利とサクッと和睦して、軍引き連れてダッシュ! 山崎の戦いで光秀ボコボコにしたった! ほんで、織田家の実権握って、賤ヶ岳で柴田勝家はん倒して…」
三成「 はいはい、端折るな! 明智はん裏で煽ったん主だという黒い噂もありますな!そこから関白になって、大坂城建てて、九州平定して、北条もやっつけて、天下統一や! ほんま、農民から天下人って、下剋上えげつないで!」
秀吉「 おかしいやなくて、夢や! ワシの天下統一、関西のノリと仲間のおかげや! せやけどな、三成、ワシのすごさはそれだけやないで! バテレン禁止しつつ、外交で世界に名を轟かせたんや!」
三成「バテレン禁止? キリスト教締め出したんやろ? それ、めっちゃ厳しかったやん! 南蛮人、ビビってたで!」
秀吉「 ちゃうちゃう! バテレン禁止はな、キリスト教の布教が政治に絡むん防ぐためや! せやけど、ワシ、鎖国なんかせんかった! 南蛮や朝鮮とガンガン交易や! 黄金の国ジパング、ワシのブランドやで!」
三成「黄金の国て…金閣寺とかやりすぎでっしゃろ! でも、確かに秀吉はん、スペインやポルトガルとも交渉してたし、朝鮮出兵も企てたもんな。グローバルやな。」
秀吉「せや! ワシ、天下統一しただけやなくて、世界に「ジパングの秀吉や!」って知らしめたんや!」
三成「太閤なって、将軍ならんかったんは何でなん?」
秀吉「わしは朝廷とは一線をひいたんやで。それに比べて徳川の狸どもはどないや!国を閉ざして内向きになって!今の日本に必要なのは、恐れず国交を開いて世界と渡り合った、うちの初代のやり方や!この国を支配するに相応しいのは、豊臣をおいて他にはおらへんのや!」
その、徳川を非難する言葉が、戦場に満ちるはずのない絶対零度の殺気を呼び覚ました。
「……大阪商人風情が、調子に乗るな」
ビルの影から、静かに、しかし燃えるような怒りを宿した声が響く。いつの間にかそこに立っていたのは、これまで裏方に徹していた隠密部隊「影刃」のリーダー、服部夜刃だった。
「なんや、あんた。ただの忍者とちゃうな?」
華織が訝しげな視線を向ける。
だが夜刃は答えず、静かに印を結び始めた。徳川の治世を影から支えた御庭番の末裔として、その名を貶められた怒りが、彼女の霊力を極限まで高めていた。
「我が伊賀忍軍の精鋭、その目に焼き付けよ!――『伊賀九曜集結召喚』!」
夜刃の宣言と共に、彼女の背後の空間から、九人のくノ一メイドが音もなく姿を現す。それぞれが伊賀流の暗器を手に、冷徹な瞳で豊臣軍を睨みつけていた。
「なっ!?」
予期せぬ第三勢力の乱入に、華織の顔から初めて余裕が消える。
八犬士、豊臣軍、そして伊賀忍軍。混沌を極めた渋谷の戦場で、ユウマはただ、その全てをカメラに収めながら叫ぶことしかできなかった。
「もう訳が分かんねえよ!どうなってんだこれはぁ!」
コメ欄も無駄に盛り上がる「三つ巴終わったと思ったら三つ巴〜何が起き…」「徳川直系キタコレ」「スカート短かっ!」「全員ミニスカw」
目まぐるしく入れ替わる勢力図。豊臣の挑発漫才に極秘と表に出て来なかった服部忍軍が一気に登場しユウマも混乱し、視聴者はサービス精神旺盛…に見えるコスの忍に盛り上がる。果たして収集付くのだろうか?




