第三十話:激突豊臣五大猛将VS.八宝玉守護戦乙女
ユウマ達の実況は久々のスクープしかも新参メイドバトルということもあって告知からわずかな時間で同時接続者数が一気にカウンターを回した。
「#ハデ金メイドキタ」「渋谷スクランブル交差点でメイド」「天下分け目の合戦か?」「金髪ガングロメイドキタ!」
金の刺繍で派手に縁取りされたメイド服…メイドドレス?金髪で褐色、派手なメイクのギャル。
手には金の扇子で上げ底のシューズ…黄金の羅針盤の豊臣華織が天を仰ぐ。
「世にも見せたるわ、天下人の本当の魅力を――『金華繚乱・天魔覆滅』!!」
豊臣華織が放った金色の奔流が、渋谷スクランブル交差点を埋め尽くす。それは、見る者を魅了し、戦意そのものを削ぎ取る甘美なまでの破壊の力。しかし、ユウマの配信を通じてかつてないほどの「絆」の力で満たされた八人の戦乙女たちは、その黄金の津波に屈しなかった。
「みんなの想いを、黄金なんかに塗りつぶさせてたまるか! 『八宝玉・守護方陣』!」
星荘の叫びに応え、八つの宝玉が共鳴し、八色の光が巨大な防護結界を展開する。金色の花びらの刃が結界に突き刺さり、火花を散らすが、突き破るには至らない。
「ほーん、耐えるんか。これが東京の戦乙女を支える『絆』の力、ちゅうわけか。下品で、泥臭くて、計算もできん曖昧なもんや思うてたけど…おもろいやんか」
華織は扇子を閉じると、不敵な笑みを浮かべた。
「けどな、うちの天下統一は一人でやるもんやない。あんた達が絆を誇るなら、うちは歴史に名を刻んだ最強の忠臣たちで応えたるわ。いでよ、我が精鋭たち!」
華織が再び扇を広げると、結界に弾かれた金色の花びらが意志を持ったように渦を巻き、交差点の中央で五つの人影を形作った。光が収まると、そこにはそれぞれが特異なメイド服を纏い、強力な霊気を放つ五人の武将メイドたちが立っていた。
「うおお!なんだなんだ!? 敵が増えたぞ!視聴者さん、これヤバい!」
ユウマが叫ぶ横で、山本彩花の目の色が完全に変わっていた。彼女は双眼鏡を片手に、現れた武将メイドたちを指さし、オカルトマニアと歴女の血が沸騰するままに、早口で解説を始めた。
「待って、あの金髪に虎耳の子!武器は槍…間違いない、加藤清子! 史実の加藤清正は『虎退治』の逸話で有名よ! 熱血系の突撃タイプね! あの呪符手甲から繰り出す『熊本城大縄張り』は、強力な結界のはず! 」
カメラが次に、冷静沈着な眼鏡のメイドを捉える。
「そしてあのメガネっ娘!深藍色の陣羽織風メイド服…黒田官兵衛の化身黒田蘭! 秀吉の天下取りを支えた天才軍師よ! 武器の陰陽輪『水月鏡』は未来視でもする気!? 史実通りの『水攻め戦術』なんて使われたら、渋谷が水没しちゃう! 」
彩花の解説は止まらない。
「勝気な姉御肌は福島正乃()! 賤ヶ岳の七本槍の一人、福島正則ね! 雷を操るみたい! あの赤い雷紋のストッキング、イケてる! それから、あの算盤を持ったツンデレ秀才っぽい子は石田美咲! 石田三成よ! 霊力を数値化して封じる『太閤検地』なんて、厄介すぎる! 」
最後に、彩花はひときわ興奮した様子で叫んだ。
「そしてあの子!赤基調のメイド服で鹿の角の飾りに六文銭のカチューシャ…真田幸! 大千鳥十文字槍は幸村の槍! あの小悪魔っぽい笑顔…敵味方の運気を逆転させる『表裏比興の陣』なんて禁忌術を使ってくるわ!」
マニアックすぎる解説にユウマと玲奈が若干引き気味だ。
「何でそんなこと知ってるのよ?」玲奈のツッコミに
「服部さんに『警戒すべき日本全国武将転生ガイド』ってもらったのよ…うふふ…コレ、政府暗部・御庭番御用達の極秘資料だから…ふふふ…」
「何時の間にそんな服部夜刃と仲良くなってんだ…そののめり込みアヤカ怖いよ…」健太がいうと「ドルオタ黙ってろ!」と超コワイ反応で健太も黙る。
そんな中、召喚された五人の武将メイドは、それぞれが八犬士の前に立ちはだかる。
「視聴者数、7万突破! まだまだ行くぜぇ! みんなの応援コメントが、今リアルタイムで光の粒子になって、戦乙女たちに降り注いでる!」
無人と化した渋谷スクランブル交差点。
その中心で、ユウマの絶叫が響き渡る。彼の配信画面には、「#がんばれ八犬士」「#渋谷防衛戦」といったハッシュタグをつけたコメントが、奔流となって流れ続けていた。その視聴者たちの熱い「想い」は、ユウマの共鳴を通じて純粋な力へと変換され、八人の戦乙女たちのオーラをかつてないほどに輝かせていた。
「うおおおっ! これがみんなの力!」
池袋の【義】の守護者・犬川星荘の星嵐槍が、黄金の光を纏って輝きを増す。彼女の槍捌きは、これまで以上に鋭く、そして力強い。
「小手先の技など、私たちのまっすぐな想いには通じない!」
星荘は、石田美咲の算盤型法器「天地秤」が放つ能力封じの結界「太閤検地」を、純粋な突破力で強引に引き裂く。その背後で、小悪魔的な笑みを浮かべた真田幸が大千鳥十文字槍を構え、禁忌術を発動させる。
「あはっ、運気がこっちに来れば、あんたたちはおしまいだよ!『表裏比興の陣』!」
しかし、その妖術が戦乙女たちを包む前に、渋谷の守護者・犬塚華信が華音手を高らかに打ち鳴らした。
「みんなを想う気持ちが、幸運を呼ぶんです! この渋谷は、私が守る!」
【孝】の想いが込められた清らかな音色が、真田の歪んだ術を浄化していく。
戦況は、ユウマの共鳴を受けた八犬士たちが、黄金の羅針盤の精鋭たちを徐々に圧倒し始めていた。
「なんでや! うちの突撃が止められるなんて!」
熱血系の猛将・加藤清子が、式神・白虎を憑依させた必殺の突撃技「虎退治・改」を放つ。しかし、その獣の如き猛進を、品川の【信】の守護者・犬村凪角の鉄扇「凪波扇」が柳のように受け流し、目黒の【悌】の守護者・犬田雫文の「桜風杖」が的確な一撃で体勢を崩させる。
「仲間を信じる心が、あなたの牙より強いんです!」
「私たちは、こうして支え合っていますから」
【信】と【悌】の完璧な連携が、加藤の熱血をいなしていく。
「私の未来視が…読まれているというのですか!?」
冷静沈着な軍師・黒田蘭が、陰陽輪「水月鏡」で未来を読み、式神・河童で人工洪水を発生させる「水攻め戦術」を展開する。だが、その洪水の流れ、式神の動きの全てを、秋葉原の【智】の守護者・犬山雷道が見抜いていた。
「あんたの見る未来より、あたしと8万人の視聴者が作る未来の方が、一枚上手ってことよ!」
雷道の「雷鳴弓」から放たれた無数の雷の矢が、人工洪水を一瞬で蒸発させていく。
「ちょこまかと! 当たらんかったら意味ないんやで!」
勝気な姉御肌・福島正乃が雷刀「裂界」を振りかざし、七匹の雷獣を召喚する広範囲攻撃「雷神降臨・賤ヶ岳七閃」を放つ。渋谷の街が雷光に包まれるが、その光の中心を、新宿の【仁】の守護者・犬江桜親が一直線に貫いた。
「あなたの雷より、私の剣の方が速いみたいね! 『桜嵐・零式』!」
刹那に放たれる千の斬撃が、七匹の雷獣を桜の花びらのように斬り散らした。
個々の戦いで次々と押し返される配下たちの姿を見て、これまで余裕の笑みを浮かべていたリーダー・豊臣華織の口角が、初めて引きつった。
「へぇ…。これが東京の戦乙女を支える『絆』の力、ちゅうわけか。下品で、泥臭くて、計算もできん曖昧なもんや思うてたけど…おもろいやんか」
彼女が金色の扇子をゆっくりと広げると、渋谷の空から金色の花びらが雪のように舞い降り始めた。それは見る者を惑わす、甘美で危険な香りを発している。
「けどな、そんな儚いもんは、うちの黄金で全部塗りつぶしたるわ」
華織の全身から、これまでの配下たちとは比較にならない、圧倒的なオーラが立ち上る。
「見せたるわ、天下人の本当の魅力を。そして、ひれ伏せや!――『金輪転生・魔帝灰燼』!!」
豊臣華織の号令と共に、渋谷の空を埋め尽くした金色の花びらが、一斉に鋭い刃となって、ユウマの共鳴を受けて輝く八人の戦乙女たち全員に襲い掛かった。




