第二十八話:戦乙女と共鳴者
蝦夷共和国との会談を終え、共鳴を果たしミッドナイト基地に戻った一同の間には、安堵と新たな緊張感が混じり合った奇妙な空気が流れていた。
そんな中、ふと何かに気づいたように、犬川星荘がユウマのそばへ歩み寄った。
「ねえ、ユウマ…」
彼女は少し頬を赤らめ、意を決したように口を開く。
「この間、池袋で二人で過ごしたでしょ? あの後、なんだかすごく調子が良いんだ」
玲奈が慌てて制する「ちょ、言い方!……」グルンとユウマに顔を向けてスゴイ三白眼で睨む玲奈「ユウマあんたまさかあの後?!」ちょっと引きながらも返事をするユウマ。
「うん?…え?…その後?あの喫茶店のゴタゴタの後か?お前が乱入して解散しただろ?」
「いいから話聞こうぜ…」冷静にツッコむ健太。
「面白いからほっとけば…?」と彩花。
星荘は、そのいつものメンバーの日常に無視して話を進める。
「あなたと話して、私の過去も、今の気持ちも知ってもらえたら…心だけじゃなくて、体の中から力が湧いてくるような、不思議な感覚があって。あれは、きっとユウマとの絆が強くなったからだって、そう思うんだ…腕試しで土方美鈴と戦ったときに、あの音に聞こえし殺人剣の天然理神流に恐れず向かい合えたのは接戦だったけど自信付いたんだ」
そのはにかみながらの真剣な告白に、ユウマは「へえ、そりゃよかった!」と屈託なく笑う。
しかし、その会話を聞きつけた者がいた。ソファにふんぞり返っていた織田焔だ。
「くわっはっはっは! そうじゃろ、そうじゃろ!」
焔は不敵な笑みを浮かべ、会話に割って入る。「あの小僧との『共鳴』は、ただ力を流し込むだけの無味乾燥なものではないからのう。共鳴者との魂の繋がりが深ければ深いほど、我らの力もまた、天を焦がすほどに燃え上がるというわけじゃ!」
焔の言葉は、一つの真理を指し示していた。「共鳴による力の増幅は、共鳴者との絆の強さにこそ依存する」という事実を。その場の他の戦乙女たちも、焔と星荘の言葉に「言われてみれば…」「確かに、ユウマさんと話した後は戦いやすかったような…」と、それぞれに心当たりがある様子で頷き始めた。
その場の空気を察知し、玲奈が焦ったように叫ぶ。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! ってことは何? ユウマはこれから、力を強くするためだけに、みんなとデートして回るってこと!?」
「デート…」
「絆を深める…」
「ユウマ様と…」
戦乙女たちの間に、期待と戸惑いが入り混じったざわめきが広がる。
当のユウマは、事の重大さをいまいち理解しきれていない様子で頭を掻いた。
「え? いや、そういうことなのか? でも、力を強くするためって言われると、なんか違うような…」
彼は、真剣な眼差しを向ける星荘、期待に満ちた瞳の他の戦乙女たち、そして面白そうにニヤニヤしている焔の顔を順番に見回した。そして、ようやく自分の置かれた状況を理解すると、観念したように、しかし少し照れくさそうに、全員に向かって問いかけた。
「……つまり、だ。俺が、これからみんなともっと仲良くなるために…その…絆を深める『共鳴』をするっていうのは、そういうことで…合ってるのか?」
「くぅ~羨ましいぜ!ユウマ!こんな美女たちと仲良く………イテテテ…なんだよアヤカ」調子に乗る健太の耳を引っ張る彩花と気が気ではない玲奈。
「デートじゃないでしょ!互いの理解を深める交流をするってことが、絆を深めるって言うなら…その、面談とか…遊びじゃないんだから!」もはや必死である…
ユウマ以外は何ともな雰囲気が漂う。
「いや、学校じゃねーんだし面談とか…一回こっちが押しかけてインタビューとかしたけど…まあ、せめて話しやすい雰囲気は必要じゃねーの?……いや、怖いってその顔…何だよ。レイナは一緒にいる時間が他のメンバーより長いだろ…」呑気なユウマに対して玲奈はどんどん怖い顔になっていく。
周囲もこれはヤバイって雰囲気になるが…
「私も…」か細い声が玲奈から洩れる。
「え?」
「私もデートしたいもん!」
「え?」
「『え』じゃねーよ!誰かとデートしたら、私ともデートしろ!」
「んな無茶苦茶な…コーヒー飲むだけでも馬鹿にならないんだぞ」
「そういう所だよ!」
「何が?!」
「バカ!」
「何で?!」
「知らない!」
玲奈は部屋を飛び出してしまう。
不味い雰囲気だけが残る。
流石の言い出しっぺの星荘も「お、追いかけた方が良いのでは…?」とだいぶ及び腰になっている…
そこに焔は「かっはっはっはっは!丁度良い、最大の邪魔者が消えたのじゃ…おい、ユウマしゃれでも冗談でもなくワシと契りを交わさぬか?」とすかさず誘いをかけてくる。
「契りったって…共鳴はしてるよな?…星荘のいうデートでもするのか?」当惑するユウマに焔は近寄って肩を組むと「お主、すっとぼけているが…男女の契りと言えばすることは決まっているであろう…それともおぬし童じゃなかろうか?」
「おぼこ?」ポカンとするユウマ。
「童貞っていみですよ…」彩花がツッコむ。
「ど!ど、どど童貞ちゃうわ…」という鉄板童貞ムーブをかますユウマ。
「どっちでもいいわい…手つかずでも何でもよいわ。ほれ、交わいにホテルにでも行こうぞ」
腕を肩に回したまま尾田焔がベロリと舌を出して誘惑する。
「ちょっと待ったー!」
玲奈はスマホ片手に再び東京ミッドナイト基地に戻って来ていた。
「なんじゃ?さっき出て行ったから戻らぬのかと思っておったが…」不足そうな顔の焔。
「まあ、ユウマの童貞なんかどうでもいいけど、レイナが機能不全に陥るとミッドナイト配信が止まりかねないからね…」スマホを手にした健太が通報した様だ…
「いい加減にしてよね!…共鳴は心の繋がり何でしょ?そんな誰かのモノみたいに奪ったりして絆も何も生まれるわけないじゃん…何考えてんのよ?!」と焔ではなくユウマを責める玲奈。
「いや…俺はそんなつもりじゃ」ほとほと困り果てるユウマ。
「焔!アンタもそんな貧相な体でユウマを誘惑するなんて!大体歳幾つ?!」
「いきなり来た!…なんじゃ!?ワシは…19歳じゃ」
「はいダウト!!星荘!連れ出して!!」
「焔ちゃん?成人してからまた来てね」後ろから羽交い絞めにした焔を連れ出す星荘。
そこはさすがのサークル仲間という所か?
そしてすぐさま矛先がユウマに変わる「何?!あんたああゆう生意気ロリが好きな訳?」
「い、いえ…そういう訳ではございません」最早こうなった玲奈を落ち着かせるのは放置して「はい」しか返さないようにするしかないとユウマは経験則上理解している。
宝玉守護の戦乙女たちは解散した。本来は蝦夷共和国の共鳴同盟に関しての報告と打ち合わせの場であったが、誰がより深くユウマと絆を結ぶのか選手権になっていた。
ただ、各自思う様に「東京の守護だけを目的にしていても、広く視野を広げた際に各地方だけの問題ではなく対世界に関しても対策が必要である」ことは分かってきてそれはそれですべきなのかの課題は各自が考えるキッカケとなってはいた。




