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バトル・メイド・サーヴァントII~大東京八宝玉魔法陣編  作者: 黒船雷光


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第二十七話:蝦夷共和国連合

 ミッドナイト基地のセキュアラインに映し出された蝦夷共和国(エゾレガリア)の参謀とも言える新選組・土方美鈴(ひじかた・みすず)の顔は、能面のように静かだった。彼女の口から紡がれた「主、北条氷華(ほうじょう・ひょうか)が直接交渉を望んでいる」という言葉は、その場にいた全員に衝撃を与えた。


 数日後、安倍星華(あべ・せいか)が張った強力な結界に守られた都内某所の迎賓施設にて、前代未聞の会談が設けられた。テーブルを挟み、ユウマ、星華、服部夜刃(はっとり・やいば)、そして八犬士を代表して犬川星荘(いぬかわ・ほしな)が座る。対するは、蝦夷共和国(エゾレガリア)のリーダー・北条氷華(ほうじょう・ひょうか)と、その傍らに控える土方美鈴(ひじかた・みずず)。空気は氷のように張り詰めていた。


「単刀直入に言いましょう――」

 先に口火を切ったのは氷華だった。彼女の冷徹な声が、静寂を切り裂く。

「我らが東京魔法陣への一切の侵攻を停止する。その代わり、貴様らが捕らえた新選組の者たちを解放してもらいたい」


「……随分と一方的な要求だな」服部夜刃が、影の中から吐き捨てるように言った。

「捕虜の解放を望むなら、それ相応の対価と、二度と我らに牙を剥かないという絶対的な保証が必要だ。貴様らの言葉など、到底信用できん」


 星華も頷く。「貴女たちの行動で、東京がどれほどの危機に晒されたか。その責任も取らず、ただ要求だけを突きつけるというのなら、この交渉は今ここで終わりです」


 交渉は開始早々、決裂寸前だった。氷華もまた、一歩も引く気はないようだった。その凍てついた膠着状態を溶かしたのは、これまで黙って成り行きを見守っていたユウマだった。


「なあ、北条さん」ユウマはテーブルに身を乗り出した。「あんたが本当にやりたいことって、東京をメチャクチャにすることじゃないんだろ? この間の伊達の人たちもそうだったけど、あんたたちも、ただ力が欲しかっただけなんじゃないのか?」


 ユウマの真っ直ぐな問いに、氷華の眉が微かに動いた。彼女はユウマを睨みつけ、やがて、絞り出すように重い口を開いた。

「……我らが故郷、北海道が今、どういう状況に置かれているか、都の者である貴様らに分かるか」

 その声には、これまで隠されていた切実な響きが滲んでいた。


「南からは中華資本が我らの土地を買い漁り、景観も文化も変えようとしている。そして北からは、ロシアの侵攻が日増しに激しくなっているのだ。奴らは領海を侵し、沿岸部を脅かす。我らは、この『静かなる侵略』に対し、何度も中央に警告した。だが、返ってきたのは沈黙だけだ。我らには…故郷を守るための、抵抗する力が欲しかった…!」


 その悲痛な叫びに、星荘は息を呑み、ユウマは強く拳を握りしめた。彼女たちの行動の根源にあったのは、破壊衝動ではなく、故郷を想う悲壮な覚悟だったのだ。

「お前たちは首都の防衛という大義をもって国を治めているつもりなのかも知れないが、目に見えない侵攻は根深くとめどなく行われているのだ。かつて榎本武揚が望んだ北海道独立国こそが我らの最終目標だ。そのためには神器が必要。だが、ここに至ってはその時間もないほど事態は逼迫しているのだ…更なる脅威にたいして、戦力の欠乏は死活問題」


「…事情は分かった」ユウマは全員を見回し、そして氷華に向き直って、前代未聞の提案を口にした。

「なら、こっちも条件を出す。新選組を解放する代わり、あんたたちも、そして解放された新選組の全員も、俺と『共鳴(レゾネート)』してもらう」


共鳴(レゾネート)だと…?」氷華と土方が訝しげな顔をする。

「ああ。俺と魂で繋がってもらうってことだ。そうすりゃ、あんたたちが俺たちを裏切るような真似をしたら、すぐに分かる。行動には制限をかけさせてもらうぜ。けどな」


 ユウマはニヤリと笑った。

「これはただの監視じゃねえ。あんたたちが本当に故郷を守るために戦うってんなら、俺の共鳴はあんたたちの力も増幅させるはずだ。これは、俺たちからの『援護』の約束でもある。どうだ?」


 そのあまりに突飛で、しかし合理的でもある提案に、星華(せいか)夜刃(やいば)は目を見合わせた。敵の行動を制限し、かつ監視下に置ける。それでいて、北の防衛力が強化されるのであれば、国家としても利がある。だが、二人は立場的にユウマと個別の共鳴は行っていない。その効果に関しては懐疑的だ。

 しかし、同席した星荘(ほしな)も、うんうんと頷く。彼女は池袋での告解がユウマとのつながりをさらに強く感じていたからだ。

「今なら私には分かるよ。共鳴はユウマと繋がると同時に人々の想いが力に変換されて流れ込んでくるんだよ。目と目で通じ合う…とか、上手く言えないけど…これまでにない力…絆を感じるよ」


 そんな話を聞きながら氷華は、ユウマの目をじっと見つめていた。彼の言葉に嘘はなく、その瞳には自分たちへの同情と、奇妙な信頼の色が浮かんでいた。プライドと、故郷の未来。天秤にかけた末、彼女は静かに頷いた。


「…面白い。確かにお前たちのふざけた配信とかの力の結集が、必勝の我ら連合の力を上回った事実が、その根源であるというなら……その条件、飲もう。だが、我らを裏切るような真似はするなよ、共鳴者(レゾネーター)


 こうして、東京八宝玉魔法陣と蝦夷共和国(エゾレガリア)の間に、監視と支援という二重の意味を持つ、奇妙な同盟関係が成立した。後に解放された新選組の面々――近藤花蓮(こんどう・かれん)沖田雪菜(おきた・ゆきな)斎藤葵(さいとう・あおい)――は、戸惑いながらも主君の決定に従い、ユウマとの共鳴を受け入れた。


「ほう、これが…共鳴か…ふふふ…悪くない」土方美鈴(ひじかた・みすず)とユウマが手を取り合い、共鳴することで流れ込む力を実感して呟く。「少し試したい…いいか?」

 服部夜刃が施設内に道場がある、少しくらいなら良いだろう。

 一同は施設内を移動して板張りの道場に着く。「さすが政府の施設だな…」少々嫌味っぽく北条氷華ほうじょう・ひょうかが言う。「「壊すなよ?」」星華(せいか)夜刃(やいば)が睨む。

「ははは…そんな軟な作りじゃないんだろ?」ニヤリと笑う美鈴。


星荘(ほしな)、相手してやれ」夜刃(やいば)が指示する。

「はい、大丈夫です」既に武技礼装状態で星嵐槍持っている。

「では、お願い致そう――天然理神流…土方美鈴推して参る」

 和泉守兼定(いずみのかみかねさだ)の鋭い太刀が一閃する。だが、星荘(ほしな)星嵐十字槍(せいらんじゅうじそう)間合い(リーチ)は遥かに広く、手の内自在の槍術は遠近において太刀に後れを取ることはない。


「これ、実況できないの?」ユウマはスマホを構えながら二人の立ち合いを見る。

「ここは一応秘密施設だぞ…大体この施設自体が結界でおおわれている…無茶言うな」と星華(せいか)

「とりあえず、お前の力だけで二人に共鳴してみろ」と夜刃(やいば)がいう。

「それ、意味あるのかな…まあ、やってみますけど」

 ユウマの胸の宝珠が光る。星荘(ほしな)の鼓動が聞こえる。そして追っかけて美鈴の鼓動も聞こえてくる。ユウマ自身の鼓動も重なり、ユウマの心がざわつく。

「おっと、これは…」ユウマは共鳴者(レゾネーター)として実況している時に無意識に視聴者(ウォッチャー)のコメントに載せられて届けられる想いや気持ちを無意識に自分の中で昇華して提供していたが、実況なく自意識の身で集中することで、提供している力の奔流の反動が自分に戻ってきていることを実感する。

 そう、星荘(ほしな)美鈴(みすず)の気持ちのぶつかり合いがフィードバックされていることに気づく。


 打ち合うこと数合(すうごう)…美鈴の剛剣が左右から斬り結び突きも含めて烈火のごとく打ち進めるが、星荘(ほしな)は冷静に十字槍の矛先で受けきる。逆に十字槍の突きは剣術に苦手な下段に集中する。十字槍の厄介な点は横に張り出した十字と言われる部分の返し刃である。足元に膝を狙って突かれた刃を躱しても、引き際の返しの刃先の角度によって膝裏の健を狙われる。太刀で受けても手の内自在な槍術はそのまま間合いを調整して離れてしまう。

「むう…教科書通りの槍捌き…だが、その胆力!侮りがたし!」美鈴は不利に見える状況でも笑っている。

「突けば槍 薙げば薙刀 引けば鎌…十字槍の間合いで太刀に勝ち目はないよ?!」星荘(ほしな)槍先を下に向けた下段で槍の柄の下に体を隠すように構える。

「この土方の剣、舐めるなよ」

 美鈴は腰を落とし、すうと刃を横に倒し体を捻る平青眼構えをとると姿勢低いまま突進する。星荘(ほしな)がその軌跡に合わせて太刀の間合い一歩前に膝砕きの突きを出す。美鈴は平青眼から刃先を合わせて下段を通して地を這う逆さの太刀で切り上げながら十字槍のの突きを受ける。だが、受けきらずにその接点を軸に息を意を使ってひらりと前転し、槍の柄の上に立つ。

「取った!」そのまま柄の上を歩み必殺の一つの太刀を浴びせんと下に向かって切りつける。

「舐めるのはそっちダ!」星荘(ほしな)が自分の槍ごと踏まれて圧倒的不利な状態をそのまま槍を持ち上げて上空にぶん投げた。空中で受け身も取れない美鈴に強烈に一突きを喰らわせる星荘(ほしな)

「それは技では無いだろう…」夜刃(やいば)が呆れて見ている。

 辛うじて鍔元で突きを受けた美鈴は道場の端まで飛ばされてから着地した。


「それまで!」星華(せいか)が立ち合いを止めた。


「はぁ~結構調子上がっていたつもりだったけど…簡単には勝たせてくれないか…また修行だな」

 ため息をつく星荘(ほしな)だが、多少汗ばんでいる様だが余裕はまだある様に見える。

「う~む…やるな…我が必殺の剣技もここまで防がれてしまうとはな…」美鈴(みすず)も多少の息が上がっているようには見えるものの、疲れ切っている感じには見えない。

「体を巡る血流とは異なる力の躍動を感じる。丹田で練る気の力に近いものが普段より闊達に使えているな…」


「俺には二人の武術的な思考はさっぱりわからないけど、二人が楽しそうに鎬を削っているのは分かったよ…」ユウマは二人を通じて刹那の互いのリスペクトを感じていた。


「よくわかった…共鳴者(レゾネーター)…いや、高梨悠真(たかなし・ゆうま)。お前の提案を飲もうではないか……」北条氷華ほうじょう・ひょうかはその手をユウマに差し出す。

 そうして、蝦夷共和国(エゾレガリア)のメンバー全員と共鳴するユウマ。


 この異例の同盟は、国内外の他勢力に大きな波紋を広げることになる。

 ユウマの「話して通じる、分かち合う」という純粋な想いが、複雑に絡み合った戦局の歯車を、また一つ大きく動かしたのだった。

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