第二十六話:転機
「——俺、思ったんだけどさ」
星荘とのデート(という名の絆強化合宿)を終え、ミッドナイト基地に戻るなり、ユウマはいきなり爆弾を投下した。
「伊達とか、新選組の連中とか、俺たちが倒した奴ら、全員仲間にできねえかな?」
「「「はぁ!?」」」
玲奈、健太、彩花の声が綺麗にハモる。
「ユウマがそう言うなら…私は」
星荘だけは、少し頬を赤らめながら、ユウマの言葉を肯定的に受け止めた。
「ちょっと、あんた正気!?」玲奈が猛反対する。「この間まで殺し合いしてた相手よ!? それに、伊達の一件で蝦夷だの上杉だの、面倒なのがいっぱい出てきたんじゃない!」
その剣幕には、身の危険を案じる気持ちと、ユウマが他の女の子(しかも敵)にまで関心を向けることへの嫉妬が、明らかに混じっていた。
「まあまあ、レイナ。ユウマの話を最後まで聞いてみようぜ」
「私も、ユウマくんがそう考えた理由、興味あるかな!」
健太と彩花は、いつものように中立の立場だ。
「だってよ、伊達の連中も、故郷を守りたいって必死だったんだろ? 目的は違っても、何かを守りたいって気持ちは俺たちと同じじゃねえか。だったら、共通の黒幕を倒すために、手を組んだっていいはずだ!」
そのあまりに少年漫画的な発想に、玲奈は頭を抱えた。だが、ユウマは本気だった。
彼はその足で、安倍星華と服部夜刃に相談を持ち掛けた。
「…高梨、あなたの発想は時として面白い結果を生むことは認めますが」
星華は冷静に首を横に振った。
「織田焔を口説き落とせたのは、彼女が孤立し、力を求めていたという特殊な状況があったから。しかし、蝦夷共和国はいまだ組織として健在な敵対勢力。
また、降伏したとはいえ、伊達一派もその実態は戦争捕虜に等しい。彼らと対等な『仲間』になるなど、前回の面会でもありましたが組織間の体面もあり、到底不可能です」
「その通りだ」夜刃も同意する。「敵は一枚岩ではない。下手に接触すれば、こちらの情報が漏れるか、新たな火種を生むだけだ」
それでも、ユウマは食い下がった。「でも、話してみなきゃ分かんねえだろ!」
その熱意に根負けしたのか、星華は「…一度だけですよ」と、伊達星夜との再度の面会の場を設けることを許可した。
しかし、結果は芳しくなかった。
「我らは敗軍の将。星詠司の監視と裁きを受けるのが筋だ。だが、お前たち配信者の戯れに付き合うつもりはない」
伊達星夜は、ユウマの提案をプライドにかけて一蹴した。交渉は、完全に決裂した。
「…やっぱり、無理だったか」
ミッドナイト基地に戻り、ユウマはがっくりと肩を落とす。
「だから言ったじゃない…」
玲奈が呆れたように言いかけた、その瞬間だった。
「ユウマ先輩! ヤバい!」
健太が、基地に設置された星華経由のセキュアラインの端末を指さして叫んだ。モニターに、暗号化された通信の着信要求が表示されている。
「発信元は…嘘だろ…!? 蝦夷共和国の旗艦…氷のガレオン船からです!」
健太が慌てて回線を開くと、モニターに冷徹な美貌が映し出された。鬼の副長、土方美鈴だ。
『——共鳴者、高梨ユウマか』
土方の静かな、しかし有無を言わせぬ声が響く。
『我らが主、北条氷華様より、貴様と直接交渉したいとの申し出だ。話がある』
予期せぬ敵からの、逆交渉の申し入れ。
ユウマの突飛な発想が、誰も予想しなかった形で、巨大な戦局の歯車を、また一つ大きく動かそうとしていた。




