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バトル・メイド・サーヴァントII~大東京八宝玉魔法陣編  作者: 黒船雷光


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第二十三話:心を守る結界

 伊達一派との面会を終え、面会に参加したメンバーは重苦しい空気は一層濃くなっていた。

 ロシアを筆頭に懸念される海外勢力、国内の黒幕と連携する敵勢力。


 あまりに巨大な陰謀を前に、玲奈が根本的な疑問を口にした。

「そもそも、私たちが守ってる東京魔法陣って、一体何なの? 武田や上杉の攻撃は防げてなかったし、ドローンだって普通に飛んでる。これって、意味あるの…?」


 その問いに答えたのは、安倍星華(あべ・せいか)だった。彼女は静かに瞳を閉じ、語り始めた。

「東京魔法陣は、物理的な障壁ではありません。ミサイルや戦車を止める力も、情報を遮断する力もない。ですが、それ以上に重要なものを守護しています」


 星華は目を開き、部屋にいる全員を見渡した。

「それは、心です。官庁街や皇居…この国の中枢に集まる人々の精神、思想、そして日本という国家の魂そのものを、外部の霊的な汚染や干渉から守護する、心理的結界。三種の神器がこの地に在るからこそ、その効果は絶大となる。物理的に国を滅ぼすより、人の心を支配する方が容易く、そして効果的であることを、古来より為政者たちは知っていたのです」


「心を…守る…」ユウマが呟く。


「その結界の核となるのが、八犬士が持つ八宝玉」星華は続ける。「その名が示す通り、八宝玉は里見八犬伝に由来する神器。その力の源は、忠節を誓う清い心の結晶です。守護者は宝玉から強大な力を与えられる代わりに、守護の対象に絶対の忠誠を誓う必要がある」


 星華の視線が、戦乙女たる同席した雷道(ライカ)に向けられる。

「十代から二十代の若い女性が担い手となりやすいのには、理由があります。成長し、変化する多感な時期に、あなたたちが社会で直面する苦難…それは、時に男性が経験するものより、理不尽で、心を強く揺さぶるものが多い。ですが、その苦難こそが魂を鍛え、より純粋で強固な『忠義の心』を結晶化させるのです」


 その言葉は、いまだ男性優位の社会構造が根強く残る現実を、静かに、しかし的確に指摘していた。


「では、何故『メイド服』を?」

 玲奈が、改めて聞くが、雷道(ライカ)が冷静な口調で議論を引き継いだ。

「その意匠にも、実利に基づいた意味があります。このメイド服という様式は、日本が鎖国を解き、国際社会の仲間入りを果たした明治時代、軍隊の詰襟と同様に、いち早く導入された『制服』なのです。信念に誓いを立て、主君に仕え、守護する『使役する女性』のシンボルとして、従来の着物に代わる合理的で機能的な洋装のイメージを、当時の明治政府は鹿鳴館を中心に推奨しました」


 雷道(ライカ)はタブレットを操作し、古い写真を表示させる。

「その後、1990年代にポップカルチャーが台頭し、秋葉原のメイド喫茶文化によってその存在がメジャー化しました。その際に、単なるシンボリックな制服という側面だけでなく、『おしゃれ』と『制服』の二面性を持つものとして世間に広く認知された。その現代的なイメージが、私たち戦乙女の装備にも反映されているのです。もっとも、これは所属する組織や個人の意向も強く反映されますが」


 ユウマは伊達星夜(だて・セイヤ)の大胆な衣装を思い出して鼻の下を伸ばし、玲奈は肘でド突く…

 その上で、ユウマがすかさずツッコミを入れた。

「あ、でも星華(せいか)さんや夜刃(やいば)さんはメイド服じゃないよな?」


「我らは、我らの組織に古くから伝わる伝統的な装束を重視しているだけだ」

 今まで沈黙を守っていた服部夜刃(はっとり・やいば)が、短く、しかしきっぱりと答えた。星詠司(ほしよみつかさ)影刃(かげやいば)には、戦乙女(バトル・メイデン)とはまた違う、独自の歴史とプライドがあるのだ。


「そして、その全てが、高梨ユウマ…あなたの存在に繋がるのです」

 星華は、真っ直ぐにユウマを見据えた。

「魔法陣が『人の心』を守る心理的結界であるからこそ、共鳴者(レゾネーター)として、現代において最も効率的に『人の関心』を集約できる装置を持つ、あなたが選ばれた」


「俺の…配信が?」


「ええ。あなたのSNSライブ配信は、不特定多数の人々の興味、応援、熱狂といった『心の力』を増幅し、魔法陣のエネルギーへと変換する、最高の触媒。それこそが、共鳴者としてのあなたの真なる役割なのです」


 説明を聞き終えたユウマは、一瞬きょとんとした後、ニカッと笑って拳を握りしめた。


「なるほど、そういうことか! つまり、俺が配信しまくって、視聴者さんたちを盛り上げて、みんなの関心を集めれば集めるほど、みんなが強くなるってことだな!?」


「…まあ、要約すればそうなります」

 星華が少し呆れたように答える。


「よっしゃあ!理屈はよく分かんねえけど、それならいくらでもやってやるぜ! 東京ミッドナイト、史上最大のバズりを起こして、どんな黒幕だろうが秘密結社だろうが、まとめて吹っ飛ばしてやろうぜ!」


 ユウマの単純明快で力強い宣言に、安倍星華(あべ・せいか)服部夜刃(はっとり・やいば)は目を見合わせ、雷道(ライカ)はユウマの腕に自分の腕を搦めてニヤリと笑う。それを見た玲奈は反対側のユウマの腕をとる。

その意味をあまり考えずにユウマは「そうだよな!みんなで腕を組んで団結だ!!」と能天気な決を述べ、それこそが彼の共鳴者(レゾネーター)としての特性なのだと皆思うのであった。

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