第二十話:池袋決戦:八犬士、集結
池袋ウエストゲートパークは、地獄の様相を呈していた。武田の炎と上杉の雷が荒れ狂い、五人の戦乙女たちは、二大勢力の猛攻の前に満身創痍だった。
「くっ…!数が多すぎる…!」
星荘は、柿崎華厳と真田幸の猛攻を必死に捌きながら、悲鳴に近い声を上げる。他の戦場でも、聖乃と碧毛は二人の軍師の前に翻弄され、華信は影の暗殺者の追撃に疲弊しきっていた。後方から響く直江琴音の支援の調べが、じわじわと彼女たちの体力を奪っていく。
「ここまで、なのか…」
桜親の膝が、ついに折れかけたその時だった。
「「「待たせたわね!!」」」
空気を切り裂くように、三条の光が戦場に突き刺さった。
一つは、秋葉原の電脳を制する雷光。
「【智】の宝玉の守護者、犬山雷道、見参!あんたたちの戦略、この雷鳴弓で解析させてもらうわ!」
一つは、品川の信頼を繋ぐ凪。
「【信】の宝玉の守護者、犬村凪角!仲間を信じる力が、私たちを勝利に導く!」
そして一つは、目黒の絆を育む癒しの風。
「【悌】の宝玉の守護者、犬田雫文です!みんなの傷、私が癒します!」
東京駅周辺での蝦夷共和国の奇襲を、織田焔の予想外の加勢によって退けた三人の戦乙女たちが、ついに池袋へと駆けつけたのだ。
「みんな…!」
星荘の目に、再び光が宿る。
【仁】【義】【礼】【智】【忠】【信】【孝】【悌】
八つの宝玉が、一つの場所で、今、揃った。
「うおおおお!来た!来たぞ視聴者さん!八犬士、全員集合だ!」
ユウマの絶叫が、配信を通じて東京中に、いや、世界中に響き渡る。彼の胸の紋章が、かつてないほどの輝きを放ち、八人の戦乙女たちと共鳴した。
「八つの宝玉よ、今こそ一つに!」
星荘が叫ぶ。八人のオーラが一つに溶け合い、池袋の空に巨大な八角形の魔法陣を描き出す。
「これこそが、私たちの絆の力!喰らいなさい! 八宝玉・東京魔法陣・結束!!」
八色の光が渦を巻き、巨大な光の奔流となって武田・上杉連合軍を飲み込んだ。それは、個々の必殺技とは比較にならない、東京魔法陣そのものが放つ、浄化の光。
上杉四天王も、武田の猛将たちも、その圧倒的な力の前に次々と地に伏していく。
「馬鹿な…!これが、八犬士の、本当の力…!」
上杉聖流が、初めて驚愕に目を見開いた。
その時、戦場に、もう一つの影が舞い降りる。
「くわっはっはっは!中々見応えのある余興であったわ!」
織田焔が、炎の刀を肩に担ぎ、不敵な笑みを浮かべていた。彼女は戦いに直接加わることはしなかったが、その存在そのものが、上杉・武田連合への強烈な牽制となっていた。
「織田…!貴様まで…!」
武田嵐花が悔しげに叫ぶ。
上杉聖流は、地に伏した部下たちと、未だ戦意を失わない八犬士、そして不気味に佇む織田焔を冷静に見比べ、静かに長刀を収めた。
「…見事よ、八犬士の戦乙女。そして共鳴者。この場は、貴女たちの勝ち。退くわよ、武田嵐花」
「…くっ!覚えていろ!」
嵐花もそれに続き、二大勢力は嵐のように戦場から去っていった。
後に残されたのは、静寂を取り戻した池袋の街と、勝利を分かち合う八人の戦乙女、そして、興奮冷めやらぬ配信者とその仲間たちだった。
「やった…!やったぞ、みんな!」
ユウマはカメラを回しながら、集まった八人の戦乙女たちを一人ずつ称えた。
「最強のメイド軍団だ!あんたたちがいれば、東京は絶対大丈夫だ!」
戦乙女たちは、互いの顔を見合わせ、安堵の笑みを浮かべる。しかし、その表情はすぐに引き締まった。
「しかし、なぜ武田と上杉が手を組んだんだ…?」
星荘の呟きに、全員が頷く。
「蝦夷共和国の動きも、あまりにタイミングが良すぎました」と聖乃が続ける。
「奴らの背後に、何か大きな存在がいるのかもしれないな」
いつの間にか現れた安倍星華が、厳しい表情で告げた。
ユウマは、決意を込めて宣言する。
「よし、決めた! 次回の東京ミッドナイトは、緊急サミットだ! 八犬士と、星華さんと、そして織田焔も呼んで、敵の黒幕を暴き出す作戦会議と行こうぜ!」
東京魔法陣を巡る戦いは、新たな局面を迎えようとしていた。バラバラだった点が線となり、巨大な陰謀の輪郭が、少しずつ姿を現し始めていた。




