第二話:山の手八宝玉魔法陣の秘密とオカルトメンバーの絆
池袋の雑居ビル、「ミッドナイト基地」は熱気に包まれていた。
壁には妖怪ポスターやUFO写真が貼られ、机にはドローン、カメラ、怪しげなオカルトグッズが散乱。
ユウマのスマホ画面には、昨夜の配信コメントが溢れていた。
「#池袋のメイド、ガチすぎ!」
「雷ドラゴン、マジ!?」
「ユウマ、魔法使いになった!?」
視聴者数は一夜で8000人に急上昇し、Xで「#東京ミッドナイト」が東京トレンド5位に輝く。
高梨悠真はソファに寝転がり、スマホを弄りながらニヤニヤ。
「いやー、星荘のメイドバトル、めっちゃバズった! 視聴者さん、最高! 次は新宿の『怪しい光』タレコミ追うぜ!」
佐藤玲奈がコーヒーカップを握り、睨む。
「ユウマ、頭おかしいよ。昨夜、雷ドラゴンに殺されかけたの忘れた? 魔法の契約とか、ガチでヤバいって!」
田中健太がノートPCから顔を上げ、笑う。
「でもさ、レイナ、あの映像ヤバかったよな。星荘の槍の光、ドローンのセンサー半分焼き切ったぜ。ガチの超常現象だろ!」
山本彩花がオカルト本を手に目を輝かせる。
「将門の首塚! 三種の神器! 八犬士のメイド! ユウマ、共鳴者って選ばれた英雄じゃん! Xで『#戦乙女』タグ、絶対バズるよ!」
「タグはいいけど、神器と首塚は配信禁止!」
ユウマは突如そこに現れた巫女、安倍星華の冷たい声を真似る。
「でも、星荘のバトル流せば、視聴者さんがタレコミくれる。東京の真実、俺らが暴くぜ!」
ドアがノックされ、犬川星荘が入ってくる。
アニメサークルのカジュアルな姿—ジーンズに星柄Tシャツ—だが、昨夜のメイド服と星嵐槍の威圧感が脳裏に残る。彼女はソファに座り、ため息をつく。
見違えるようだが、玲奈の大学のサークルで一緒していたオタク仲間だったのは驚いた。
…というか、状況はいまいちの見込めない。メイド服の星荘はちゃんと顔が見えていたと思うが、こうして私服の星荘と印象がかなり異なる。
「それは、メイド服…戦闘衣装には、認識疎外の呪文が編み込まれているからね…というか、ユウマ、配信やめたら? 昨夜の映像、龍神毘沙門天の連中にバレたと思うんだ。【義】の宝玉を狙ってる奴らだけど顔ばれしなくても活動記録として奴らのシンボルが映像には残るから、配信のデータが証拠として残るのを良しとしない…すぐにでも動き出すよ。」
ユウマが身を乗り出す。
「龍神毘沙門天? あの白髪の雷メイド、上杉聖流だっけ…?
星荘、もっと教えてくれ! 戦乙女って何? 結界の歴史は? 俺、共鳴者…になったんだよな?…当事者なんだから全部知りたい!」
玲奈が割り込む。
「星荘、サークルで隠してたよね? なんで急に戦士? 私たち、なんでこんなヤバいことに巻き込まれてんの?」
星荘は紅茶を手に、苦笑。
「ごめん、レイナ。戦乙女のことは秘密だった。
東京魔法陣は、江戸時代から山手線の人の流れで魑魅魍魎、妖怪を封じる結界。
八宝玉が八つの駅にあって、私は池袋の【義】の宝玉を守ってる。現代の八犬士、ってとこかな。」
健太が目を輝かせる。「八犬士! 里見八犬伝のメイド版! 他のメイドは? 新宿とか渋谷にもいる?」
「いるよ」星荘が頷く。
「新宿のさくら、秋葉原のらいか、渋谷のはな…それぞれ【仁】【智】【孝】の宝玉を守ってる。でも、三種の神器や将門の首塚の詳細は、私も全部は知らない。宮内庁の陰陽師や政府の御庭番が管理してる。」
オカルトマニア魂に火が付いた彩花が興味津々で突っ込む。
「神器って、あの伝説の三種の神器…鏡、剣、勾玉? 首塚って、大手町の呪いのやつ? 歴史、ヤバすぎじゃん!」
星荘が真剣に続ける。
「何から話そうか…
東京魔法陣の歴史は、魔神大戦から始まる。
平安時代、平将門の怨霊が首塚で魔神として覚醒。
関東の霊脈を乱し、妖怪を召喚した。
当時の陰陽師は神社仏閣の風水魔法陣で封じたけど、力不足だった。
1221年の承久の乱で怨霊が再び暴れ、関東大震災の遠因になった。」
ユウマが身を乗り出す。「震災!? マジ? 怨霊が地震起こしたの?」
「半分はそう」星荘が言う。
「1923年、暴走した平将門の呪いは再度関東大震災を引き起こしたけど…それより前から宮内庁と政府は、龍脈の魔法陣じゃ限界をすでに感じていて、現代の科学技術を応用して守護結界に着手してきていた。
それは日本人の『和の心』—融和共存の力—を結界に変える新構想だった。
それが山手線八宝玉魔法陣。環状線で人の流れをエネルギーにして、八つの宝玉で結界を強化。
皇居の三種の神器を核に、首塚を再封印した。震災から2年後の1925年に漸く完成した」
彩花がノートにメモ。
「すごいすごい…! じゃあ、山手線って、ただの電車じゃなくて、結界の動脈なの?」
「そう。でも、第二次世界大戦が起きた」星荘が目を伏せる。
「アメリカが東洋の神秘—神器と結界—を恐れて東京を空襲。
皇居の霊的防壁が神器を守った。とはいえ、霊的な結界だけでは限度があることが露呈した。
過ぎた力(科学力)は1000年の歴史の伝承された力を上回ることがある。
そして2000年には地下の命脈・龍脈を地下深く大江戸線が山手線に続き円環で結んで更なる強力な結界を構築している。風水と科学の融合だよね…」
ユウマが口笛。
「東京、ガチで神秘の風水都市じゃん! で、八宝玉ってどうやってメイド選ぶの?
星荘、なんで戦乙女になった?」
星荘が微笑む。
「八宝玉は、世界の危機を察知すると、徳にふさわしい人間を選ぶ。
私は高校の時、池袋で妖怪に襲われた。
【義】の宝玉が光って、私に『星嵐の使役者』の神名を授けた。
それ以来、星嵐槍で戦ってる。ユウマ、お前は共鳴者。
【義】の宝玉が、お前の好奇心と…変な正義感を選んだんだ。」
玲奈が呆れる。「変な正義感って…ユウマらしいけどさ。」
巫女姿で、安倍星華が突然部屋に現れ、空気が凍る。
「高梨ユウマ、話が長すぎる。龍神毘沙門天の上杉聖流は、【義】の宝玉を奪い、首塚の怨霊を解放しようとしてる。他にも、第六天布武、蝦夷共和国…海外の氷帝や紅蓮が神器を狙ってる。お前の配信、敵の目にも入る。覚悟しなさい。」
ユウマが手を振る。
「お、巫女さん、落ち着け! 俺、秘密は守るよ! でも、メイドバトルは流していいよね? 視聴者のタレコミで、結界の異変キャッチできるじゃん!」
巫女装束の星華はその美しい姿のままため息。
「民衆の気は結界の力だ。お前の配信、敵を釣る餌にもなる。だが、神器や首塚の位置を漏らせば、将門の怨霊が東京を呪う。」
■東京ミッドナイトの始まり
玲奈がコーヒーカップを置く。
「ユウマ、こんなヤバい話聞いても配信続ける気? …まあ、幼馴染としては事情は分かっているつもりだけど…星荘もなんか重たい話するし…えっと…」
「安倍星華だ」黒曜石の様な澄んだ黒い瞳がじろりと睨む。
巫女とメイドとかどんだけオタクの願望叶てんだ?とユウマは思う。
「そのセイカさん含めて、ユウマの共鳴者…あーレ…レゾネーター?ってのにふさわしいのか紹介したら?」お節介焼きの玲奈らしいフォロー。
ユウマがソファから跳ね起き、カメラを構える。
「お、いいリクエスト! 視聴者さんにも教えてやるぜ! 東京ミッドナイト、なんで始まったか!」
彼は基地の中央に立ち、配信モードで話し出す。
「俺、高梨悠真、22歳、民俗学専攻だけど休学中!
なんでかって? 俺の親父、民俗学者の高梨誠一。
5年前、東京の怪奇現象追ってた時に謎の失踪した。
『東京の秘密を暴く』って手紙残して、消えたんだ。
俺、親父のノート読んでオカルトにハマった。
大学1年の時、配信で親父の足跡追うために『東京ミッドナイト』作った!」
玲奈は遠い目をして苦笑。
「ユウマの親父さん、変人だったよね……
幼馴染の私、ユウマに『サークル手伝え!』って拉致されたの。
ほんとはアニメとゲームだけでいいのに、編集担当にさせられた。
ユウマの無謀さに付き合って…今じゃメイド戦争?んとに、何なんだろうね…w」
健太が手を挙げる。
「俺、田中健太、21歳、フリーター。ガジェットオタク! Xでユウマの配信見つけて、ドローンとカメラで参加した。エンジニアとしてプログラムもやるぜ…興味無いビジネス系のプロンプトとか打たないけど、色々出来るぜ。
オカルトは半信半だったけど、星荘の戦い見て、ガチだと確信! 俺の機材で、東京の超常を撮るぜ!」
彩花が本を振る。「山本彩花、19歳、大学1年! オカルトマニア! Xでユウマの『新宿の幽霊メイド』配信見て、基地に押しかけた! 将門の首塚、三種の神器、八犬士のメイド…夢のネタだよ!」
星荘が微笑む。「私は、レイナとアニメサークルで知り合った。」
ジェスチャーで収録しないでとお願いする。ユウマは自分のスマホを伏せて、健太にも動いているカメラあるなら止めろと無言で指示。
それを見た星荘は続きを語る。
「ブクロでバトってる時にユウマが入ってきて、マジヤバイって思ったんだ…共鳴者じゃなければ正体明かさずに撤収するつもりだったんだけど…世の中狭いよね…まあ、ユウマのノリ嫌いじゃないけど」
ユウマがニヤリ。「星荘、いいやつ! 俺らのサークル、ただのオタク集団じゃねえ。親父の謎、東京の秘密、全部暴く! 視聴者さんと一緒に、戦乙女のバトル応援するぜ!」
星華が冷たく言う。「高梨、調子に乗るな。敵は国内だけでない。ロシアの氷帝、中国の紅蓮、朝鮮の月影、アメリカの星条…神器を狙う勢力が動く。お前の配信、結界の鍵だ。」
■新宿の夜:敵の影
ユウマは基地で配信準備。「新宿都庁上空の怪しい光」タレコミに、視聴者数が1万人に迫る。コメントが「メイドまた見たい!」「新宿、ヤバそう!」で溢れる。健太がドローンを調整、彩花が新宿の都市伝説を調べ、玲奈が渋々編集。
ユウマがカメラを構え、叫ぶ。「よーし、視聴者さん! ユウマのミッドナイト・トーキョー! 今夜は新宿の怪しい光を追うぜ! 戦乙女? 妖怪? それとも…敵メイド!? 行くぞ!」
モニターにXの投稿。「新宿で氷のオーラ!」「歌舞伎町、寒すぎ!」
星荘が立ち上がる。
「ユウマ、気をつけろ。蝦夷共和国の北条氷華だ。【仁】の宝玉を狙ってる。」
ユウマの胸の星型紋章が脈打つ。「マジ? 星荘、一緒に行こう! 視聴者さんと東京守るぜ!」
星荘が槍を手に笑う。「ユウマ、バカだけど…嫌いじゃない。行くぞ、共鳴者。」
新宿の夜が、戦乙女とオタク配信者の戦場になる。