第十八話:池袋死闘篇:龍虎、相搏つ
「蹂躙せよ――!!」
上杉聖流の冷たい号令が、池袋ウエストゲートパークに響き渡る。
息を吹き返した武田の軍勢と、新たに現れた龍神毘沙門天四天王が、五人の戦乙女に牙を剥いた。
「おいおいマジかよ…甲斐の虎と越後の龍が悪役レスラーみたいにタッグ組んじまったぜ!」ユウマはカメラを構え直し、絶望的な戦力差を視聴者に伝える。
「視聴者さん、こっからは個人戦だ! 一瞬も見逃すなよ!」
戦場が、混沌の中でいくつかのエリアに分かれていく。因縁が、力が、魂が、互いを引き寄せ合うかのように――。
■猛将激突:【義】と【仁】 vs 鬼神と一番槍
池袋西口公園の噴水前。最も苛烈な戦場と化したその場所で、二人の猛将が犬川星荘と犬江桜親の前に立ちはだかった。
一人は、上杉家臣団随一の武勇を誇る「越後の紅蓮槍」、柿崎華厳。その巨躯に不釣り合いな可憐な顔立ちとは裏腹に、大身の槍を軽々と振り回し、大地を揺るがすほどの気迫を放つ。
「我こそは柿崎華厳! 【義】と【仁】の宝玉、この槍の錆にしてくれるわ!」
もう一人は、武田の赤備えを率いる一番槍、真田幸。その十文字槍は、先の戦いのダメージを感じさせないほど鋭い殺気を纏っている。
「先ほどの雪辱、ここで晴らさせてもらう! 覚悟しろ、八犬士!」
「二人まとめて、この【義】の槍が受け止める!」星荘が星嵐槍を構える。
「ほしな、油断しないで! この二人の圧力、尋常じゃないわ!」桜親も桜嵐刀を抜き放ち、星荘の背中を守るように立つ。
槍と槍、刀と十文字槍が激突し、火花が噴水を蒸発させた。
■知略交錯:【忠】と【礼】 vs 二人の軍師
東京芸術劇場の燃え盛るエントランスホール。ここでは、目に見えない策謀の糸が張り巡らされていた。
「その一手、読み切っていますわ」
月光を背負うように立つ「月夜の賢女」、宇佐美咲月。上杉の軍師である彼女の瞳は、まるで戦場の全てを見通すように犬飼聖乃と犬坂碧毛の動きを捉えている。
「あらあら、山本殿。貴女の策も見事なものでしたが、少し大雑把すぎましたかね?」
咲月の隣には、武田の軍師・山本霞幸が扇子を広げ、悔しげな表情で立っている。
「…ええ。ですが、ここからは二人。逃げ場はありませんことよ?」
二人の軍師の指揮のもと、透波鷹やくノ一たちが、変幻自在の陣形で聖乃と碧毛に襲いかかる。
「聖乃さん、敵の動きが全く読めません!」碧毛が蓮華薙で猛攻を捌きながら叫ぶ。
「ええ! 私の鎖の軌道が、先読みされている…! これが上杉の軍師…!」聖乃は星鎖鎌を振るいながら、見えざる敵の知略に戦慄した。
■秘剣閃光:【孝】 vs 影の刃
池袋のビル街、狭い路地裏。そこは、音と影が支配する特殊な戦場となっていた。
「……」
一切の気配を消し、闇に溶け込む「影の翠嵐」、甘粕翠。謙信秘蔵の切り札と呼ばれる彼女は、言葉を発することなく、無数のクナイを犬塚華信へと放つ。
「うおっと、危ない! 静かすぎて逆に怖いですって!」
華信は持ち前の身軽さで攻撃を躱し、手に持った華音手を打ち鳴らす。
「私の【孝】の音からは、逃げられませんよ!」
衝撃波が翠を襲うが、彼女はまるで陽炎のように揺らめき、その姿を消した。壁を、天井を、縦横無尽に駆け巡る翠の影を、華信は聴覚だけを頼りに必死で追う。一瞬の油断が命取りになる、極限のスピード対決が繰り広げられていた。
■そして、響く調べ
個別の戦いが激化する中、戦場全体に琴の音のような清らかなオーラが流れ始めた。
後方、上杉聖流の傍らで静かに瞳を閉じる「響きの柱」、直江琴音。彼女の異能は、味方の士気を高め、傷を癒し、敵の集中力を削ぐ後方支援の極致。
「くっ…! 身体が重い…!」
「なんでこんな時に、あいつらの動きが良くなるんだ!」
八犬士たちは、見えざる琴音の力の前に、じわじわと体力を奪われていく。
「まずい、まずいぞ! 連携が完璧すぎる!」ユウマは複数の戦場をカメラで追いながら叫んだ。「一対一ですら厳しいのに、武田と上杉の猛将タッグ! 二人の軍師のコンビネーション! そこに後方支援までついてる! 戦力差が、違いすぎる!」
コメント欄が「逃げてー!」「これは無理ゲー」「何か手はないのか!?」という悲鳴で埋め尽くされる。
八宝玉の戦乙女たちは、今、かつてないほどの死地に立たされていた。




