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バトル・メイド・サーヴァントII~大東京八宝玉魔法陣編  作者: 黒船雷光


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第百五話:八陣図・仁義の刃

「―――さくら!」

 ユウマの目の前に立つ犬江桜親(いぬえ・さくら)。だが、その瞳に映っているのは、仲間であるはずのユウマの姿ではなかった。


(…諸葛孔明(しょかつ・こうめい)…!)

 さくらの目には、瓦礫の中に立つユウマの姿が、勝ち誇ったように羽扇を揺らす、天才軍師・諸葛孔明の幻影として映っていた。

(罠に嵌め、仲間を同士討ちさせる策が成功したと思って、私の前に悠々と現れるなんて…!先の関羽との戦いで消耗しているとはいえ、この犬江桜親を、舐めるなよ!)


 桜親(さくら)は、最後の力を振り絞り、孔明の幻影へと斬りかかる。だが、孔明は、ひらり、と身を翻して逃げ出した。

「まて!逃がすか…!」


 必死に後を追うさくら。だが、その脳裏に、違和感がよぎる。

(…?あの走り方…なんだか、見たことがあるような…?)

 頭の中に、ぼんやりともやが掛かり、思考がはっきりとしない。くそ…やはり、関羽との戦いで、死力を振り絞り過ぎてしまった…。


 ついに、さくらの足がもつれ、彼女はその場に片膝をついた。息が上がり、もう刀を握っていることさえ、やっとだった。


「……大丈夫か?さくら?!」


 その声に、さくらはハッとした。孔明が、私を心配している?…馬鹿にして!

「ま、待って…その、呼び方…」

 違う。孔明は、私をこんな風には呼ばない。この声は、この呼び方は、もっと、ずっと近しい誰かの…。

 思考が混乱し、さくらの頭を、割れるような痛みが襲った。

「く…苦しい…!」


 一方、ユウマは、明らかに自分を敵視しながらも、限界を超えて消耗しきっているさくらの姿を見て、歯噛みしていた。このまま放置すれば、彼女は精神的にも、肉体的にも、限界を迎えてしまう。


 しかし、うかつに近づけない。たとえ息も絶え絶えでも、彼女の剣劇は、素人の自分がどうこうできるレベルではない。近づけば、条件反射で斬りつけられる。


(くっそ…!体を張るのは、俺の得意分野じゃないんだが…!)

 ユウマは、覚悟を決めた。彼は、近くに転がっていたビルの外壁の破片を、数枚、自らの腹部の服の中へと詰め込むと、さくらに向かって、一直線に飛びかかった。


「!」

 突然の接近に、さくらは、条件反射で桜嵐を振るう。

 ザクリ、と鈍い音がして、彼女の刀が、ユウマの胴へと深く食い込んだ。


「こなくそ…!」

 激痛に顔を歪めながらも、ユウマは力を振り絞り、さくらの両肩を掴むと、その唇を、強引に奪った。

(玲奈、御免…!これは、非常時なんだ…!)


 その瞬間、さくらの頭の中を覆っていた霧が、一気に晴れた。

 そして、目の前の光景に、彼女は息を呑んだ。

 自分に口づけをしたまま、苦悶の表情で、ゆっくりと倒れていく、ユウマ。

 そして、その腹部に突き刺さったままの、自分の、血に濡れた桜嵐。


「え…?」

 さくらの顔から、血の気が引いていく。

「ウソ!?ユウマ!?なんで…!?」


「だ、大丈夫だ…」

 ユウマは、うめき声を漏らしながらも、必死に笑みを作った。

「腹に…瓦礫を、仕込んでた…。フォローしきれてないけど…致命傷じゃ、ない…。いてて…」


「ああ…!私の、私のせいで…!ごめんなさい!ごめんなさい!」

 さくらの瞳から、大粒の涙が溢れ出す。


「泣くな、さくら…。それより、この迷宮を打ち破るぞ」

 ユウマは、痛む腹を押さえながら、さくらの手を強く握った。

「まずは、玲奈と合流しよう。みんなを、助け出すんだ」


ユウマはスマホ画面を見て実況を再開する「見てくれ皆…俺たちは敵の迷宮に閉じ込められてしまった…皆助けてくれ…」

「お前は何を見ているんだ?」「ユウマ後ろ!」「幻術か?」「領域展開」コメント殺到し、ユウマが見ている世界と視聴者が見ているリアル世界の乖離に気づく…やはり幻覚か…

とにかく、玲奈と合流して共鳴者(レゾネーター)としての力を発揮しないと…

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