第百二話:三国戦記の逆襲
宮本飛鳥の一閃が、呂奉仙から方天画戟を弾き飛ばす。だが、その三国志最強の武器が、地面に落ちることはなかった。
「―――その獲物、この大怪盗が、ちょいと拝借!」
どこからともなく現れた石川五愛萌が、宙を舞う方天画戟を華麗にひったくる。その背後には、伊賀九曜衆の面々が、既に影のように展開していた。
「我ら服部一門、助太刀いたす!」
「無用!」
飛鳥は、助太理を不要と一喝する。だが、九曜衆の狙いは、呂奉仙ではなかった。彼らは、ひそやかに周囲を飛び回っていた、ステルス機能を持つ無数の小型ドローンを、次々とクナイで撃ち落としていく。
瓦礫の影から、服部夜刃が姿を現し、手にした制御端末を握り潰した。
「姑息な小細工を施しよって…。敵の司令塔は、別にいるな」
『―――よくぞ見破りましたわね、我が秘策を!』
突如、戦場に、涼やかな、しかし侮蔑に満ちた声が響き渡る。声の主は、諸葛孔明。彼女は、遠隔からこの戦場を完全に支配していたのだ。
『ですが、すでに遅し!この日本の土地を削り取って設置させた、全てのソーラーパネルは!今この瞬間、我が霊力を増幅し、東京を焼き尽くすための動力源となりましたのよ!喰らいなさい、必殺の**『ソーラーレイ』**を!』
日本各地に設置されたソーラーパネルが、一斉に不気味な光を放ち、そのエネルギーが、新宿上空の一点へと収束し始める。
「させるか!」
その、国一つを滅ぼしかねない大魔術に、犬山雷道が弓を構えた。
「―――電子立国・日本の技術力、舐めるな!」
彼女が放ったのは、物理的な矢ではない。強力な電磁パルスを帯びた、霊力の矢。
「『雷鳴弓・電磁崩壊』!」
電磁の矢は、天へと駆け上り、ソーラーシステムの制御そのものを、根源から切り離した。収束しかけていた破滅の光が、音もなく霧散していく。
「…さて」
後顧の憂いを断ち、飛鳥は、再び武器を失った呂奉仙へと向き直る。
「無刀となれど、戦場においては情け無用。―――必殺、『二の太刀』!」
飛鳥の木刀が、今度こそ呂奉仙を捉えんと閃いた、その瞬間。
緑色の閃光が、二人の間に割って入った。
キィィィン!
飛鳥の必殺の一撃を、巨大な青龍偃月刀が、寸でのところで受け止めていた。
「―――させるか!」
そこに立っていたのは、義の武神、関雲長。
「呂奉仙殿には、まだ借りを返してもらわねばならん。その首、今はまだ、我が預かる。―――宮本武蔵とやら、次なるお相手、この私がいたそう!」




