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バトル・メイド・サーヴァントII~大東京八宝玉魔法陣編  作者: 黒船雷光


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第十話・山手東京魔法陣と星詠司と影刃

 上野の決戦を終え、束の間の静けさが訪れたものの、東京魔法陣関係者に安堵の色はなかった。


 伊達星夜(だて・セイヤ)は投降したものの、今回の襲撃では敵側の連携がこれまで以上に巧妙であったことが、東京の守護者たちに新たな危機感を抱かせていたのだ。

 いずれにしても、敵対勢力の彼女たちの背後には、未だ見ぬ、しかし確実に東京の宝玉を狙う影が存在する。


 共鳴者(レゾネーター)である高梨悠真(たかなし・ゆうま)だけは、登録者数とVIEW数でかつてない数字をたたき出し、有頂天になっていた。


 ■星詠司(宮中直轄陰陽道)と影刃(内閣府直轄御庭番)


 その翌日、安倍星華(あべ・せいか)はユウマたち一行を星詠司(ほしよみつかさ)(宮中直轄陰陽師)の拠点である静かな和室に呼び出した。表情は、いつになく厳しかった。


「今回の北の伊達と蝦夷の連携は無視できない」安倍星華(あべ・せいか)は苦虫を嚙み潰したような顔をする。


「でも、結果的には部下を一時的に借りた感で終わったよね?」ユウマは楽観的に語る。


「それでも、異常な事態なのだ…これまでも徳川を中心に江戸幕府で発展し、東京を中心として遷都して日本の国土の中枢として表も裏も治めて来た中で、国家を揺るがす過去の因縁に囚われた勢力はこれまでも多く存在し、小さなちょっかいから大規模な進行迄を繰り返してきている。だが、組織を跨いでの連携は初なのだ…」

 それがどれだけ大ごとなのか?を安倍星華(あべ・せいか)から説明されるが、ユウマをはじめとする東京ミッドナイトのメンバーには響かない。


「これだからZ世代は…」と愚痴る星華だが、そんな代表格のユウマが共鳴者(レゾネーター)として貢献していること含めて新しい時代の変遷を感じざるを得ない事態ではあった。


「いいか、かつての戦国武将など天下統一で日本を支配を試みた野心家がその矜持をもって現代に蘇り国家転覆を狙う…のは歴史の繰り返す輪廻転生問題なのだ。星は空を巡り、銀河は宇宙を巡る。1日1年と暦を繰り返すように歴史も繰り返す。もちろん文明の発展に合わせてその視野は広がり、今や電子機器は世界中で繋がり、日本に留まらず覇権争いは起きている。」


 ユウマはあくびをしながら星華に聞く「すいません…話が長い上に複雑なんですが…話が難しくなってきたので三行に纏めて貰えます?」

「今北産業キタ」健太が笑う。


 いつもは淡々としている星華が目を三角にしながら言葉を絞り出す。

「お前の配信で、裏鬼道の秘密がダダ漏れで、敵にも情報筒抜け大ピンチ…だ」

「おおー」と健太「なんだやればできるじゃん」無責任にユウマは語る。


「今回の伊達星夜(だて・セイヤ)の襲撃で、改めて東京魔法陣の脆弱性が露呈したわ」星華は切り出した。

「奴らは我々の予測を超えた連携を見せた。伊達が投降したとはいえ、あの背後にいる勢力は健在。東京の結界は、未だ狙われ続けている。」



「だったらさ、安倍さん!」ユウマはパッと顔を輝かせた。


「東京魔法陣の再構築と、守護八犬士の紹介を兼ねたツアーとか、どうっすか!?題して、『山手線メイド巡り!守護八犬士に会いにいこう!』ってな!」


「おお、それいいじゃんユウマ先輩!」健太が即座に食いつく。「動画映えもするし、メイドさんたちの魅力も伝わる!ライブ配信は無理でも、後で編集してアップするってんなら、視聴者も喜ぶって!」


 玲奈は呆れた顔で二人の様子を見ていたが、星華は腕を組み、思案顔でユウマを見つめた。

「…ツアー、ね。確かに、結界の強化には、共鳴者(レゾネーター)であるあなたの存在が不可欠よ。それに、人々の信仰や関心が、結界の力に影響を与えるという側面も否定できないわ」


「でしょでしょ!?じゃあ、企画通ります!?」ユウマは前のめりになった。


「待ちなさい」星華は冷静に告げた。「いくら非公式な協力とはいえ、東京の結界に関わる一大イベントよ。政府、特に内閣府の許可が必要になる。私が直接話を通すことになるけれど、一つ問題が……」


 その時、襖が静かに開き、一人の人物が姿を現した。全身を漆黒の装束で包み、口元を布で覆った、まるで影のような存在。ただし、金髪で左右でまとめた髪束は手裏剣のアクセサリで止めている…口は布で覆って見えないが、目元に紅が入っていて意外とおしゃれさんである。

「まさか、このような企画に、我ら『影刃(かげやいば)』が関わることになるとはな」彼女の低い声が響く。


服部夜刃(はっとり・やいば)……流石に早いわね」星華が顔を向ける。

「彼女は伊賀の流れを組む政府直轄の隠密部隊「影刃」のリーダーだ。そういう訳で内閣府の許可は下りたわ。ただし、影刃の監視、という名目で、彼女が同行することになる。」


「由緒正しき伝統ある結界の儀式が、電波に乗った企画ものとはな……」服部夜刃(はっとり・やいば)は微かに首を傾げる。

「この国の歴史に傷をつけるような真似はさせんぞ。」


「いやいや、服部さん!これが意外とバカにできないんですよ!」健太が身を乗り出した。

「上野の決戦でも、ユウマ先輩の配信を通じて送られた視聴者の応援や熱気が、結界の維持に貢献してたって、安倍さんも言ってましたよね!?」


 星華はわずかに沈黙した後、小さく頷いた。

「……ええ。彼らの言う通り、あなたの配信による無意識の『電波支援』が、共鳴者としてのあなたの力を増幅させ、結果的に結界強化に貢献していた、というデータも出ているわ。だからこそ、あなたを今回のツアーに巻き込むことにしたの。」


 服部夜刃(はっとり・やいば)は無言でユウマをじっと見つめた。その視線の奥に、僅かながら納得の色が見て取れる。

「……ならば、監視は怠らん。この国のため、お前たちの好きにさせよう」

 こうして、天皇直轄「星詠司」と政府直轄「影刃」の主催による、異例の「山手線メイド巡り!守護八犬士に会いにいこう!」ツアーは、正式に決定したのである。


「さて、まずは最初の駅よ」安倍星華(あべ・せいか)が告げた。「今回の企画は、共鳴者であるユウマさんと、皆さんが各駅のメイドたちと直接インタビュー形式で知り合い、絆を深めることで、共鳴者としての結界力を高める狙いがあるの。だから、単なる観光じゃないわよ」

 その説明に、ユウマは一瞬顔を曇らせたものの、すぐに気を取り直した。一行は山手線に乗り込み、車窓を流れる景色を眺める。


 ■新宿:【仁】の宝玉の守護者 犬江桜親いぬえ・さくら


 最初に降り立ったのは、ネオンきらめく新宿。


 東京都庁がそびえ立つ近代都市の象徴でありながら、歌舞伎町のようにかつて歌舞伎興行が盛んだった劇場街が歓楽街へと姿を変え、その奥には古くからの「のれん街」のような土地に根付いた文化が混在する、複雑で多面的な街だ。

 新宿アルタ前には、紅桜色の和装メイド服に身を包んだ桜親(さくら)が、流麗な剣術を披露していた。


「あ、桜親(さくら)さくらさんじゃないですか!お久しぶりです!」ユウマが思わず声を上げる。

桜親(さくら)は、ユウマたちに気づくと、ふわりと微笑んだ。「ユウマ、皆さん、来たねぇ~。上野での戦い、お疲れだったね!」


「いやー、桜親(さくら)さんにはいつも助けられてますよ。池袋のオタクイベントの時も、まさかメイド服で現れるとは思いませんでしたけど」健太が笑いながら言う。


 玲奈が呆れたようにツッコミを入れる。「あんた、どこでもメイドに出会う運命なのね。でも、桜親(さくら)さんは頼りになるわよね。あの時も、幻術を斬ってくれたし。」


 安倍星華(あべ・せいか)が、そのやり取りに頷きながら解説する。

「新宿の紅桜は民衆救済の試練を司ります。この地は【仁】の宝玉の拠点。他者への慈愛・思いやり。儒教の「五常」の筆頭で、人間の根本的な徳を持つ。

 犬江桜親(いぬえ・さくら)の刀『桜嵐(おうらん)』は、まるで花弁が舞うように優雅でありながら、その一撃は鉄をも断つ鋭さを持つ。彼女の戦闘スタイルは、幕府お抱えの剣術柳生新陰流の流れを汲む桜新陰流。…新宿の雑踏を潜り抜けるような流れる動きと、多様な戦術が特徴です。」


桜親(さくら)って、普段は歌舞伎町のメイドカフェで働いているんだっけ…意外と庶民派?」ユウマの感想に対して、

「このまえサンシャインのイベントにコスプレでカフェの宣伝!って居たよね?」玲奈のツッコミはちょっとキツ目。

「でも、【仁】の宝玉の意味って初めて知ったけど…慈悲とか優しさなのか…なるほど、まあ、あれだけの剣術を見せられて何だけど、只の元気っ子ってだけじゃないんだな。」ユウマは感心したように頷く。


「改めてよろしくね!」刀を持っていなければただの可愛いコンカフェの店員にしか見えない桜親(さくら)だが、ユウマと握手した際に互いに何か力が沸き上がる感覚が二人を支配する。

「おおっ!」ユウマの共鳴者(レゾネーター)としての感覚が、改めて桜親(さくら)と繋がったと実感する。

「まあ、俺に出来る事なんか大したことないけど、桜親(さくら)の姿、ちゃんと配信してみんなの力を集めて届けるぜ!」

「ふふ、頼りにしてるヨ!」



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