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Happy end ~愛しい人より~

続いてはハッピーエンドです!

ただし、本当のエンディングではありません。

 12月、しとしとと降っている雪は俺が住んでいる街を真っ白に塗りつぶしていた。

俺は、糸野 文いとの ふみ。大学3年生だ。

家近くのコンビニでバイトをしている、彼女のいない平凡な大学生である。


 そんな俺にもやって来たある朝、


「ふわぁぁ……ん?……」


アラームにたたき起こされた。出たくないベットの上で伸びをする俺の目に、妙なものが飛び込んで来た。


‘‘明日の俺へ‘‘


そう表紙に書いてあったノートを、俺は無意識に手に取った。

開いてみると、明らかに俺の字だとわかるような字で、昨日の出来事が書かれていた。



『12月22日、大学終わり、俺はいつものように喫茶店にバイトに行った。そこで、寝ている女性を発見した。店も混んでいたので、用がないならさっさと出て行ってほしいって思って、半ば強引に体を揺らして起こした。「もうちょっと……」と、可愛げに駄々をこね寝ぼけていた彼女だったが、ふと我に返り俺に謝ってきた。本当に焦っていて、恥ずかしそうにしていたのを今でもよく覚えている。

さて、なんだかんだあって、俺たちは明日会う約束をした。食事に行くのだ。

日時は12月23日、18時ジャストに駅前の公園前。

遅れるんじゃねぇぞ?』



ノートにはそうあった。さらにページをめくると、



『P.S.おそらく、このことを明日の俺は覚えていない。だが一応行ってみてくれ。俺は彼女になんだかんだあって‘‘恋をしたんだ‘‘。』


とあった。急いで書いたんだろうか?少し字が崩れている気がする。

確かに、俺はこの彼女(仮)なる人物に全く心当たりがない。それどころか、食事に行くなんて約束をした記憶すらない。


「どうなってんだ……?」


俺は震えた声で呟いた。とにかく、このままでは遅刻するので、俺は大学へ向かった。


・・・


 12月23日17時30分、駅前の公園前。

大学が終わった俺は、今日はバイトは休みなのでそそくさと待ち合わせ場所に向かった。


「早く来すぎたな……」


俺は一人苦笑を浮かべる。流石に30分前から待ってるのは重いか?いやしかし、初対面なわけだし……。うじうじ悩みながら、俺は彼女(仮)が来るのを待った。


 30分後、結論から言うと、彼女(仮)は来なかった。

集合時刻から10分経っても20分経っても来る気配すらなかった。

あのノートは酔った俺の妄想か何かだったのだろうか?そんな考えが頭をよぎる。


「はぁ……なんだよ……」


彼女いない歴=年齢-1年の俺は、少し期待していた自分に気づき嫌気がさした。全く、ずうずうしいことこの上ない。


その時だった。突如として、彼女が現れた。


「ごめんなさい!電車で寝てしまって……」

「え?あ、はい……大丈夫ですよ?」


俺は状況を何とか飲み込み返答した。 この人が……彼女(仮)……。


「あ、すみません!人違いでした……ってなんで私ここに……?」


彼女(仮)の予想外な返答に、一瞬、からかってるのかな?と思ったが、彼女(仮)の表情を見る限りそれはないだろう。


「すみません。私、誰かと待ち合わせたはずなんですけど……誰なのか忘れちゃって、ご迷惑をおかけしました。ごめんなさい」


そう謝って、「あれぇ?おっかしいなぁ……」とぶつぶつ言いながら立ち去ろうとする彼女(仮)を俺はなぜか引き留めようと思った。


「あ、あの!」

「?」


小首をかしげて、「何でしょう?」と彼女(仮)が訪ねて来る。


「もし、よかったら、食事しませんか?」

「今からですか?」

「いや、その、ご予定があるんだったら……無理にとは言いませんので……!」


俺は、かみかみになりながらも必死に呼びかけた。なんとなく、ここで返してはいけない気がした。


「良いですよ」

「そうですよね……分かり、え?」


俺はすっとんきょうな声を上げ、その場に固まった。まさかOKされるとは……。


「いいんですか?」

「はい」

「じゃ、じゃあ行きましょう」


その後、食事の席にて俺たちはマンガの話で大いに盛り上がった。

彼女(仮)改め穂坂 雪(ほさか ゆき)さんは、結構マンガを読むらしい。


「それで、そのシーンが……って、聞いてますか?もう!」


頬を膨らませた彼女に俺は思わず、ぷっ、と噴き出してしまった。


「何か面白い事でも?」

「いえいえそんな!ただ、明るくていい人だなって思っただけで……同年代でそういう人あんまり出会わなかったもので」

「ならいいけど……ごめんなさい……」

「何で謝るんですか?」

「私ばっか喋って、うっとうしい女だって思いましたよね」

「何でですか?」

「え?」


彼女は目を丸くした。


「何でそんなこと言うんですか?違いますよ!俺はそう言うのをうっとうしいとか言いませんし」


その時の彼女の笑顔を俺は一生忘れないだろう。


あれ?俺、なんで今、‘‘どうせ忘れるのに‘‘って思ったんだろう?


 翌日、俺は彼女のことを忘れ、退屈な日常に戻った。もらったはずの連絡先も跡形もなく消えていた。

ふと、ポケットに手をやると、折りたたまれた紙が入っていて…………‘‘昨日はありがとう!君の愛しい人より‘‘と書かれてあった。俺は全てを思い出し、彼女に会いに行った。

そうして、その後どうなったかは……「私たちだけの秘密、でしょ?」「分かってるよ」


Happy end 愛しい人より 

次回は

トゥルーエンドです!

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