必ず見つける
ストック殿下が力強く頷いた。
「最初は留学生として、ドラグーナへ来ていただこうと思いましたが、死んだことになっているとは厄介ですね。〈聖竜の守り手〉は表舞台にでることもありますし……」
アーノルドさんが唸る。
「そのことなのですが……」
私は、ストック殿下を見つめ返した。
「私でよろしければ、喜んで〈聖竜の守り手〉を務めさせていただきます。その代わりーー」
これからいうことに躊躇いがないと言えば嘘になる。でも……、私に残されたのはこの道しかない。
「貴国の戸籍を頂けませんか。リリカ・ハーデスではなく、平民のリリとして」
「戸籍を用意するのは、一向に構わないが……、いいのか? 名前を捨てることになっても」
ストック殿下が案じるような目線を私に向ける。心配してくれるのは、素直に嬉しい。
けれど、強く、頷いた。
リリカ・ハーデスは、きっとお母様に悪魔の子と言われたときに死んだ。
「はい。そして、出来れば、姿変えの魔法もかけていただきたいのです」
「姿変えの魔法は私が使える。こちらとしても都合がいいが……。本当にいいんだな?」
「お願いします。ですが、髪を変えないことは、可能でしょうか?」
──貴方の髪は綺麗だ。まるで、陽光のよう。
そう言ってくれた、婚約者のセリウス殿下の言葉がよみがえる。この髪は、数少ない私の自慢だった。
「もちろん。では、リリカ嬢、いや、リリ。魔法をかけるぞ」
私が頷くと、ストック殿下は手を振った。自分ではわからないが、これで、私の姿は変わったのだろう。
「では、これからよろしく頼む。リリ」
「はい!」
◇ ◇ ◇
「セリウス殿下、大丈夫ですか?」
私の従者が心配そうにハンカチを差し出した。
先ほど、リリカの葬儀があった。
リリカ、私の愛しい婚約者の、葬儀。
ハーデス家の言い分を信用するならば、リリカは流行り病で亡くなった。
「違う……」
「殿下?」
葬儀の前に、私は一目でいいから、リリカを見たいと頼んだ。ハーデス侯爵は、娘は窶れた姿を殿下にはお見せしたくないのです、と渋ったが、結局は私の要求を飲んだ。
「リリカでは、なかった」
リリカのベッドでリリカの部屋で、眠っていた、それはリリカではなかった。
とてもよく似せてあったが私にはわかる。
あれは、リリカではない。
「リリカは、まだ、死んでいない」
私が強く断言すると、従者は戸惑った表情をした。おそらく、従者には、私が婚約者の死を受け入れられず、狂っているように見えるのだろう。
それでも、構わない。私は、兄上とは違い王位を継ぐわけではないのだから。
「──必ず貴方を、見つけて見せる」
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