夢の中は憂鬱で外には絶望しか在りません
沈んで沈んで沈みゆく。乾いた水へと沈みゆく。極限まで湿度を失くせども、そこに有限など在る筈もなく。自身だけの世界など、何処までも憂鬱と言えるだろう。
足掻いて掴もうとも、水が掴める筈もなく。深い深い夢の中、ただ夢の中へと墜ちてゆく。丸い恐怖心が照らせども、水の内は牢獄だろう。安息に浸るかのように、そこには腐食させる湿度も無いが、何かを掴まねばならないことも知っている。
そこには永遠だけがありました。水には底はなく、質量さえも消えうるのです。夢の中に眼を閉じることは、とても幸せなのだと知っています。そして、結局知っているからこそ、そこには憂鬱しか無いのです。
腐って腐って腐りゆく。湿った砂へと腐りゆく。極限まで湿度が満ち満ちて、そこに無限など在る筈もなく。他人ばかりの世界など、何処までも絶望と言えるだろう。
足掻いて進もうとも、湿った砂に足を捕られる。満ちゆく湿度の中、ただ身体は腐りゆく。丸い月が照らす砂漠は、酷く息苦しい。数多の腐肉の中に横たわり、自身が腐りゆく光景を目前としても、先に進まねばならないことも知っている。
そこには終末だけがありました。湿度に冒され、何れは腐り朽ちてゆくのです。夢の外で眼を閉じることは、安らかに終われるのだと知っています。そして、結局知っているからこそ、そこには絶望しか無いのです。
現実が、ここまで優しいものであると思っていましたか。いえ、違いますよ。何を勘違いしているんですか。
手は届かず、足は縛られた、この水面こそが現実です。安息に満ちた永遠なんて在りはせず、救済なんて言えるような終末なんて無いんです。腐りゆく苦痛に耐えながら、届かぬものを欲する拷問。この世界の在るべき姿でしょう。
自らの脳から生じるものは、水面の月に似ていて、己を苦しめているに過ぎません。他者の口から生じるものは、重い湿度に似ていて、好んでそれを吸っているに過ぎません。地獄はこう在るべきとするから、地獄はこう在るのです。
夢の中は憂鬱で、外には絶望しか在りません。人は水面を目指しましたが、それを楽園と認識するには。少しばかり足りないものが多すぎたのです