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星の形の風船

作者: チミー

こんにちは!

チミーです。

この度は,この小説を目に留めて頂き有難う御座います。

このお話は,去年から投稿したいなと,思っていたものです。

是非,ご覧ください。

外では雨がしとしとと降っている。


チラリ,と辺りを見回す。


ー 見えるのは,黒ずめの服を着た大人たちだけ。


はぁ,と少年は今日何度目かの溜息をー 涙の代わりに ー吐く。








少年の母は,元気だった。


冬の日は温かいココアを作ってくれたし,春の日はお花見をする為にお父さんと一緒に3人で公園に行った。

夏の日は蝉取りにいき,スポーツドリンクという美味しい飲み物を教えてくれた。

秋の日は少年が拾ったどんぐりを茹でたり,どんぐりを使って工作を一緒にしたりもした。



楽しかった。


でも,その暮らしは突然,ある日お母さんが倒れることによってぱたりと終わる。


少年はまだ6歳だったし,お父さんは少年が恐怖を感じないようにと,事実をそのままでは伝えなかったから。


実感はなかった。


お母さんはね,疲れて少しの間だけ,別のところに行っているんだ。


父が少年に教えてこんだ言葉。


それは,本来ならば事実になるはずー だった。


でも医者の一生懸命な手術もむしなく少年の母は逝ってしまったのだった。









ようやくお葬式が終わる。


朝から始まったそれはもう1時だ。


少年はお腹が空くのも,泣きたくなるのも我慢して。


お葬式が終わると同時に外へ走り出したのだった。














お母さんが死んでしまった。


その悲しみを,少年は背負わなければならない。


その重大さに少年は耐えられず。


泣きながら,ひたすら走って,走った。


どれくらい走ったのだろうか。


雲に覆われていた空はいつの間にか,暗闇に覆われ見えなくなっている。


少年は空を見上げ,急に疲れを感じて走るのをやめた。


ぽつん,と1人。疲れで地面にしゃがみ込む少年。


彼の頭に,ある声が降ってくる。


「どうしたのか,少年。」


少年は,その声の主を知らない。


否,知るはずがない。


案の定,


「おじさん,だぁれ?」


と,少年は彼に向かって問いかける。


いつの間にか暗い空には星が瞬き始めていた。


「おじさんはね,遊園地の風船売り。」


そう答え,彼は少年に一つ,風船を見せた。


「この風船にはね,沢山の希望が詰まっているんだ。」


おじさんの手には根,遊園地に溢れている希望とか,楽しさとか。全部が染み込んでいるんだ。


少年はその言葉に,立ち上がり,じっと空を見上げた。


「届くかな。」


「きっと,届くよ。」


「死んじゃった人はね,お空で星になるから。」


驚いた顔の少年が,掠れた声を放つ。


「それ…僕のお母さんも,言ってた。」


「知ってる。」


にこり,と微笑んだ彼は「一つだけだよ。」


と,少年に風船を渡す。


「ありがとう。」


と,少年は言い,風船を握りしめた。


「おじさんは,誰なの?」


「秘密。」


きっと,いつか分かる日が来るよ,と彼は優しく微笑んだ。






少年は手を離す。


風船は空に向かって,星に向かって。


きらり,と一つ星が輝いたように少年の目には映った。


















それから,何年経っただろうか。


少年はある道を進んでいた。


何故か,行かなくてはならない気がしたのだ。


閉園したばかりの遊園地を後にして。


そして,彼は言う。


「きっと,届いたよ。」


と。




此処まで読んで頂き,有難う御座いました。

是非,チミーの他の作品も読んでみてくださいね♪

宜しくお願い致します‼︎

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