63 イケメンタル少女が現れます
◆◇Sight:三人称◇◆
アメリカ国防省――ペンタゴン。
職員とコンピューターが無数に並ぶその際奥で、国防省長官が、職員からの報告に耳を傾けていた。
「Secretary(長官)、駄目です。やはりバーサスフレームの再現は困難です。使われている金属が合成できません」
「なぜだ。一部は我々も既に合成していた物だと訊いたぞ」
「はいしかし、その我々には合成できないMysLill合金という物こそがキモでして。これが合成できない事には話にならないようです」
「代用はできないのか?」
「非常に硬く、しかし靭やかで、また熱にも強く、軽い。本当に夢のような金属ですが、その組成が分かりません。もしかすると超重金属(通常すぐ崩壊する)の安定の島(超重金属が安定する元素番号にある元素)にある物を安定させて、僅かに含めているのかもしれないと報告には有ります。」
部下が資料を見ながら説明した。
長官は、報告に唸る。
「超重金属を含んだ合金か・・・・それなのに軽いとは――なるほど・・・・ならばアレはどうだ? オルグスはゴブリンの機体を改造して地球での戦闘に使ったそうではないか。そちら方面でのアプローチはどうなのだ」
「Secretaryそれが・・・・こちらの報告を御覧ください。今朝CIAからの報告が有りました」
1つの画像――それは、オルグスの軍の飛行場の様子だった。
かなりの望遠で撮られているが、ハッキリと施設の様子が確認できた
以前、そこには謎の戦闘機がズラリと並べられていたのだが、今は一機も確認できない。
「ん、なんだこれは・・・・どうなっている、オルグスに何があった」
「どうやら、銀河連合による処分対象となったようです」
「なっ!? ――では、消えたのか? オルグスのバーサスフレームやゴブリン戦闘機などは」
「はい。そのようです」
「な、・・・・なるほど・・・・ゴブリン戦闘機での戦闘も御法度だと言う訳か。やはり複製によるアプローチが安全だな」
「はい。アチラの物品を用いた地球圏での戦闘行為を、銀河連合は決して許さないようです。しかもオルグスの軍人プレイヤーは全員、プレイヤー資格を剥奪されたようです」
「――なに!? それは本当か!? 以前、バーサスフレームを戦争に使おうとした国の時は、バーサスフレームは消えてしまったが、プレイヤー資格剥奪までの重い処分ではなかったぞ・・・?」
「・・・どうやらオルグスが襲ったスウというプレイヤーは、相当に銀河連合に気に入られているらしく」
「どういうことだ、銀河連合はそこまで1プレイヤーに忖度するのか?」
長官もスウの名前は耳にしていたが、彼女は一個人のはずだ。なにか地球で特別な立場についている人間ではない。
例えばこれがアメリカ大統領ならば忖度されても分かるのだが――と長官は考えた。
「なにやら、フェイテルリンクレジェンディアには好感度システムという物が存在する可能性が示唆されており、スウというプレイヤーはその最高位にあたる〝アインスタ〟だと、CIAの諜報員が、あるNPCの噂話で確認しております」
「好感度か、まだそんな隠し要素が存在したのか」
「また見える形でも、スウというプレイヤーは〖銀河より親愛を込めて〗というNPCの好感度が上がる称号を所持しております。見て下さい、こちらはNPP用のVRからスウを見た時の視界です。NPPがVRを外した隙にVRを一瞬拝借して、周囲の景色を撮影した物です」
動画の中ではスウがハイレーンのプレイヤーに開放された地区の露天で、嬉しそうに丼を頬張る姿が捉えられていた。
彼女の頭上には、燦然と表現すべきと感じる、豪華に彩られた白銀の細かい意匠を施した巨大なエンブレムが浮かんでいた。
こんなエンブレムを見れば、誰しもが一発でこの人物を偉大だと思わせるだけの威容があった。
エンブレムの下で、目を><の符合みたいにし机をバシバシと叩いて「涼ランガイド的に星3っちゅ!」とか言っている姿が威容を台無しにしていたが・・・。
しかし、NPP達のスウを見る目はとても温かい。微笑ましい物でも見ているかのようだ。
Secretaryは、(なんだその「涼ランガイド」とは、どこで発行している)というツッコミを張って飲み込んだ。
「彼女は銀河連合市民の間での人気も高く、どうもプロパガンダとしても利用されているようです。ちなみにスウは〝エイリアンと付かない素材を使った〟すべての料理に星3つを付けるらしいです」
「流石我が国の諜報員、そんなどうでもいい情報まで細かく調べ尽くしているか。ただやはり最後の情報はどうでもいいが。――なるほど。彼女に手を出したせいで、オルグスは非常に厳しい処分を受けたという訳か」
「恐らく」
「我々も・・・・気をつけねばならんな・・・スウというプレイヤーへ接触する時は」
「はい」
オルグス同盟連合国――宮殿。
歴史と権威を顕す、白銀と黄金に彩られた豪奢な建物内部、その奥。
やはり豪華な調度品が揃えられた執務室で、オルグス同盟連合国の大統領は部下の報告を受けていた。
この大統領こそ「スウという少女を殺してでも、ゲートを手に入れろ!!」と命令した張本人だ。
「なんだと!? 我が国のバーサスフレームとゴブリン戦闘機が、全て消えただと!?」
「はいメー大統領・・・」
「くそっ、この重要な時期に。これでは祖国の領土を取り戻せんぞ・・・・!」
メー大統領の激昂に、部下は萎縮して何も謂わない。
部下はこれから更なる悲報を大統領に伝えないといけない、その事を考えると、息が詰まるような思いだった。
「それで・・・どのくらい掛かる」
「どのくらいとは・・・何がでしょうか、大統領」
「決まっているだろう! 改造ゴブリン戦闘機――グノーシスの調達だ!」
「そ、それは、ほぼ不可能です・・・っ!」
「は? 不可能? ――なぜだ!!」
メー大統領は怒りのあまり拳を机に叩きつけた。机の上に有った、豪華な筆記用具などが跳ねて転がった。
「そのっ、落ち着いて聞いて下さい、メー大統領。――じ、実は、我が国の軍人のプレイヤーは、全てプレイヤー資格を剥奪されました!」
この言葉に、メー大統領は凍りついた。茫然自失という感じの表情になったまま動かない。
――口を空洞のようにしたまま微動だにしない。
やがて徐々に表情が下がっていき、床に向いていく。
「お前・・・それは、あれか? 戦力の・・・・」
大統領が続きを言えないようなので、部下が代わりに続けた。
「は、はい・・・・ゴブリン戦闘機を失っても、作り上げた超人兵士がいればまだ良かったのですが・・・」
「だよな・・・? この情勢不安の中、兵士が力を失えば――お前」
「はい・・・・テロに対抗でき――」
部下の言葉が終わる前に、彼の言葉の続きは現実となって現れた。 ドォン という音と共に悍ましい地響きが宮殿内を揺らした。
さらに、パラララララ カタタタタという音も聴こえてくる――銃声だ。
部下の表情が一変、軍人の物となる。
彼は腰の拳銃を引き抜いて持ち上げた。
「メー大統領、お逃げを!!」
「くそっ、何故こんな事に!! ――我々はゲートを欲しがっただけだぞ!? 東側を取り返したかっただけなのだぞ!?」
メー大統領は執務机の引き出しから、拳銃を取り出して廊下に走り出る。
「いたぞメー・クヘモだ!」
「殺せ!!」
メー大統領と部下は部屋を出て直ぐ様角を曲がり、安全を確保。
こういう時の為に建物内は――特に執務室近くは廊下が複雑に曲がりくねった構造になっている。
執務室の扉横に控えていた二人の兵士が、迫る二人のテロリストを、直ぐ様射殺しようとする。
しかし兵士たちの放った銃弾が、テロリストたちの前で静止する。
「プレイヤーか!」
弾丸を受け付けないテロリスト達に、護衛にあたっている兵士たちは戦慄した。
自分達も昨日までプレイヤーであったのだ。プレイヤーの恐ろしさは知っている。
テロリストの一人の姿が、護衛の兵士の視界でブレた。
テロリストは、瞬く間に護衛の兵士の前。
「フェイレジェの防具を着けているだろうが」
テロリストが言いながら、アサルトライフルを至近距離で連射。
弾丸の加速が全く下がらない距離での銃撃には、フェイレジェの防具も耐えきれず貫かれて護衛は倒れ伏した。
もう一人の兵士が近くに来たテロリストを撃とうとアサルトライフルを向けたが、兵士の腕は、遠くにいるはずの他のテロリストに掴まれる。
護衛の兵士が見れば、遠くにいるテロリストの腕が伸びて、自分の腕を掴んでいる。
「うわあああ!」
護衛の兵士は暴れるが、テロリストの腕が離れない。
そうこうしている間に近くにいたテロリストから至近距離の攻撃を受けて、こちらも床に倒れた。
護衛の兵士達を片付けたテロリスト達が、角を曲がってメー大統領とその部下に迫る。
部下は大統領の背中に叫ぶ。
「大統領は、先に行って下さい」
「分かった!」
だがこの直後――テロリストの投げた手榴弾に巻き込まれ、メー大統領は命を落とす。
メー大統領は死の間際、ひたすら後悔した。
なぜ自分はあの時「スウという少女を殺してでも、ゲートを手に入れろ!!」と命じたのか。
メー大統領は薄れゆく意識の中、無理やりゲートを奪おうとした事を、後悔し続けた。
彼は最後まで〝スウを殺せばゲートの権利がそもそもなくなる〟という事に気づけなかった。
オルグスという国はかろうじて消えなかったが・・・・この日、地図はまた大きく描き換わった。
◆◇Sight:鈴咲 涼姫◇◆
私の戦闘機レクチャーは続く――というか始まってすらいない・・・・なんで?
ちなみに私たちの隣のエリアでは、アリスが人型操縦訓練コースを選んだ人たちに既にレクチャーをしている。
みんなちゃんと言う事を聞いて、大人しい。
「え、なんで向こうは全員アリスに従ってるのに、こっちは命令違反する人しかいないの?」
❝指導員の格好が、ネタに全振りしてたら当たり前だろwww❞
❝しかも鬼軍曹じゃなくて、マッカーサーだしwww❞
え、私のせい?
「なん・・・だと」
私は腰の後ろで手を組んで、ビシっと振り返る。
「じゃ、ここからは本当に訓練を始めます!」
「「「はっ!!」」」
あ、みんなビシッと直立して、ちゃんとした返事が返ってきた。
「だれだよ、『サー・イエッサーと言え』とか言い出したの」
❝❝❝お前や❞❞❞
しかし、アリスの方で少し不穏な事が起きた。
刀と西洋の剣を腰に差した小柄な少女が、一人の大柄な男性の腕をひねり上げたのだ。
「いてててて!! 何すんだよ!!」
「あなた今、やち――一式 アリスに向かって走ろうとした」
「だ、誰もそんな」
「わたしの目は誤魔化せない」
大柄な男性の腕を捻り上げている小柄な少女を、私は見た記憶があった。
あれは――立花 みずきさんじゃない!?
剣道の県大会の決勝でアリスを戦慄させた、百合ヶ浜南高校剣道部の選手。
というか、あんな大柄な男性を片手で捻り上げてるとか、剣道以外も凄いの?
私も向こうへ行こうと、参加者に声を掛ける。
「みなさんすみません。ちょっと何かあったみたいなので、アリスの方の様子を見てきます」
「暴力沙汰か? 我々も行こう」
「Giusto」
実は私のコースは、ほぼ軍人さんしかいない。
逆にアリスのコースは、全員一般人さんだ。
一般の方はVRで操縦できたり、集団戦闘が楽なロボット操縦のほうが役に立つらしい。
私のコースは基本的に個人戦の腕を磨きたい人か――すでにリアルで格闘能力が高いかという、特殊な人ばかり。それか、よっぽどフェイレジェに慣れたプレイヤーしかいない。
だから、〝なんてったって軍人〟な彼らが付いてきてくれるのは、凄く有り難い。
「お願いします」
私は軍人さん達に頭を下げて、アリスの方へ向かう。
アリスエリアの一般人さんは、筋肉質な軍人さんたちが一斉に近づいてきたことでざわついた。
ちなみにマイルズさんは走るのが苦手なのか、後ろでもう息を切らしている。
「ぷ」
「お前、本当に覚えてろよ・・・・」
怖いので私は急いで走る。
すると私達が到着する少し前、アリスエリアの後ろにいた強面の人が立花さんの方へ近づいていった。
あの人も軍人みたいな体格をしている。というか迷彩服着てるし、・・・・どこかの軍人さんだろうか、おかしいな・・・向こうには軍人さんはいないはずなのに。
「勘弁しろよ、嬢ちゃん。ソイツは俺のダチなんだ、走り出してもいないのにホールドされちゃ敵わねえ、離してくれや」
もし軍人さんだとしたら、随分乱暴な物言いの人だなあ。
基本的に軍人さんは、どの国の人も一般人には礼儀正しい気がするんだけど。
立花さんが拘束している人物を指でさしながら、強面の人に鋭い視線を送る。
「貴方はコレの友人なの? なら出ていって、貴方達にアリスの訓練を受ける資格はない」
「はあ!?」
「その格好は軍人みたいだけど、貴方と友人の目、仕方なく人を殺した目じゃない。人を殺すのが好きな目」
人を殺すという言葉に、一般の方がざわつく。
アリスが立花さんの近くに来て、ウィンドウを出すと、参加者名簿をチェックしだした。
「いえ、軍人じゃない筈です。一般で参加してます」
軍人さんは、各国の偉い人が私の訓練を受けさせるために送り込んだんだから、私のコースにしか居ない筈なんだもん。
強面の人が立花さんに腕を突き出しながら、前に進む。そして、
「おいおい、人を見た目で――」
立花さんの胸ぐらを掴んだ。
瞬間――
――〝強面の人が、宙で一回転した〟。
「!?」
「「「!?」」」
バシーンと、強面の人が取った受け身の音が辺りに鳴り響いた。
嘘――! 立花さん、あんな小さな体で大柄な男性を拘束しながら、軍人みたいな体格の人を投げた・・・しかも手を使わず、握られた襟を軸にして、足払いで人間を宙で一回転させた。
・・・何者なの、立花さんって。
私の後ろの軍人さんたちが、一斉にざわつく。
「アイキドー!?」
「ジャパニーズ・マーシャルアーツ!?」
転がされた強面の人が、すぐさま飛び起きる。
「なにしやがんだテメェ!! 俺等をザワストのメンバーと知ってやってんだろうな!!」
軍人さんたちが、強面の人が叫んだザワストという言葉に反応した。
「ザワスト、民間軍事会社の傭兵か!」
「まずいぞ、ザワスト社には元・犯罪者が多い、凶悪犯も紛れている」
「押さえ込むぞ!!」
だが、ザワスト社の社員がピストルを取り出して、軍人さんたちの足元に銃弾を撃ち込んだ。
そうして舌打ちをする。
「ちっ、お前らが居るとやりにくい事この上ないな――」
私は傭兵だという強面の人のIDを、視界に浮かんだ情報で確認する。――ローヴか。
立花さんのIDはリッカらしい。
私の後ろで、柏木さんが呟く。
〔自分が突撃します。その間に皆さんは――〕
待って待って、駄目! ここでの死だって冗談ですまないんだから!
軍人さんたちの気配に気づいたのか、ローヴが銃口を軍人さん達から、立花さんに移動させた。
「軍人ども、動くなよ? 動けばこのガキの頭が潰れたトマトみたいになるぞ」
突撃しようとしていた柏木さんが、停止する――他の軍人さんも同じだ。
皆さん、流石に立花さんへの危害は、許容できないらしい。
私はローヴを睨みながら、訊ねた。
「ローヴさん、なにが目的なんですか!!」
「スウ、てめえは命理とか言う妙なNPPを連れているらしいな。そいつをこっちに寄越せ」
「命理ちゃん? 命理ちゃんをどうするつもりですか」
「どうだって良いだろうが! 早く連れてこい!」
「彼女を犠牲にする気はありません!」
「犠牲? ただのデータだろうがあんなモン、さっさと連れてこい!」
「・・・」
ここで拒否すると立花さんが危ない――とりあえず命理ちゃんを連れてくるフリをして――
「分かりました。でも彼女は今、ハイレーンの宿にいます」
「なら今すぐ連れてこい、ハイレーンは目の前だろう! おいリッカとやら。俺のダチを離して、ゆっくりとコッチに来な。データノイドの引き渡しが終わるまで、お前を人質にする」
大変な状況なのに、立花さんは平静なままアリスに声を掛けた。
「アリス、ちょっとこの男を持ってて」
「え」
立花さんはアリスに、拘束していた大柄な男を預けると、ローヴにゆっくりと近づ――いていた立花さんが、突然低い姿勢になって、腰の刀を抜き放った。
速度はそれほどない、でも――!!
立花さんは、まるで剣道の試合でみせたような――体が霞に変化するような最小の動きを見せた。
そうして〝ローヴのピストルを持つ両腕の間の空間に、下から刀を差し込んだ〟。
――さらに、切っ先は首筋だ。
やられたローヴは、手元の状況を観て、素っ頓狂な声を上げた。
「は?」
私達も、しばらく何が起こっているのか理解できなかった。
でも理解できた瞬間、一斉に声を挙げた。
「「「うわあっ!」」」
立花さんの刀は、テコのようになっていた。
ローヴの腕を支点に、首筋に当たった切っ先が作用点。
ローヴが僅かに動くか、立花さんが手に持つテコの力点に力を入れれば、頸動脈がスッパリいくだろう。
(あ―――あれじゃあ、もうローヴは動けないんじゃ・・・!)
「動けば死ぬわ」
立花さんが、ローヴに念を押す。
軍人さんたちが、囁く。
「今、ガールの動きが見えた奴、いるか?」
「見えなかった」
「なんだ、あのマーシャルアーツは―――」
その中で、マイルズさんだけが、
「見えにくいな」
と言っていた。つまり彼には見えたんだ。
とにかく「これで決着?」と私は思った。だけど、
「生憎、ここじゃあプレイヤーは死なねえんだよ!!」
ローヴは、刀の支点にされている腕で握っているピストルから〝手を離し〟、もう一方の腕の指は〝引き金〟に――
立花さんが、唇を噛んで刀から手を離す。いくら強盗でも殺したくないんだろう。
ローヴが厭らしい笑いを浮かべた。
「初めての人殺しを卒――」
だが、ローヴの笑顔は消える。
私の鈍色のニューゲームから放たれた弾丸が、ローヴの太ももを撃ち抜いたからだ。
「ギャアアアアアア」
地面を転げ回るローヴ。
一斉に走り出す軍人さんたち。
軍人さんたちも全員、銃を取り出していた。どうやら私と同じ考えだったらしい。
ローヴを拘束しながら柏木さんが、苦笑する。
「この眼で見て実感したよ、スウさんの反射神経は本当に化け物だ。自分たちが、早撃ちで負けるとは」
さらにはマイルズさんも「ふざけた反射神経だ」と、呟いていた。
いやあ、ロイトさんの銃のお陰だと思う。準備から射撃まで、すごく早く出来たし。
ローヴを拘束して立ち上がらせた海兵隊さんが、ため息を吐く。
「――しかし、この男をどうするか。一旦地球に戻ってポリスに――いや、コイツの国籍はどこだ?」
すると、イタリア空軍の人が海兵隊さんの肩を叩く。
「たぶん大丈夫だ。そんな面倒なことはしなくて良い」
イタリア空軍の人がニヤリと笑った時だった。借りている訓練施設にアナウンスが流れた。
前にクリティカル・クエスト完了を伝えてくれた、女性の声だ。
『犯罪を検知しました。合議の結果、2名のプレイヤー資格を剥奪します。これより地球への強制送還を行います。同時にバーサスフレーム並びに、入手したアイテム、ステータス、スキル、称号全て没収となります』
その言葉に、ローヴの友達らしい男の顔が一気に青ざめる。
私もちょっと、血の気が引く。・・・・2名って私も含まれてたらどうしよう。人を撃っちゃったし。
ローヴが慌てる。
「ちょ、ちょっと待ってくれ、そんな事されたらオレたちはもう傭兵をやっていけなくなる!!」
そういえば、今って傭兵とかはプレイヤーだらけだって訊いたことが有る。
『さようなら』
声が終わると、ローヴとその友達らしい男の姿が消えた。




