656 短冊に願いを書こうとします
今日は、2話同時投稿です
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「ヤキソバだと、ちょっと歩かないと駄目ね。広場にいかないといけないわ」
という事らしいのでフーリの案内に従って広場に向かう――途中。
願い事の短冊を結べる場所を発見。
そういえば、今日は竹(いや、笹だろう)に短冊を結んでないな。
私はちょっと勇気を出して提案してみる。
「みんな、願い事書いていかない?」
「ああ、そうですね。七夕はそれがメインでした」
「じゃあみんなで書いていきましょうか」
こうしてみんなで短冊を買って机に向かって、ペンを持つ。
私の願い事は決まってる。
―――でも私の願いは、書く前にみんなに尋ねなきゃ。
「ね、ねえ・・・み、みんな・・・」
「どうしました?」
「ん?」
「なにかしら」
「なんだスズ」
「なんや?」
「どうした、涼姫」
アリス、チグ、フーリ、カレン、みかん、みずき――みんながペンを止めて私を見た。
ほ、ほんの、ちょ、ちょっと緊張するな・・・・だ、大丈夫かな。
いや、大丈夫だよね・・・このみんな、なら。
「こ、この関係にさ、名前・・・付けていいかな?」
「・・・名前?」
「スズっちさんのやることならなんでも構わないけれど、どういう意味かしら?」
「また涼姫が妙なことを言い出した」
アリス、フーリ、みずきが首を傾げる。
「み、みんなでお祭りに来て、屋台巡って、これってさ、この状況って・・・! と、友・・・友達・・・・」
そこでフーリが吹き出した。
「ふはっ」
続けてチグとカレン、みかんも吹き出す。
「あはっ」
「ぶっ」
「はははっ」
するとフーリが私の方へ視線を向けて、首を振る。
・・・・えっ、首を振られた!?
「違うわね、スズっちさん」
え。
(違う? ―――ま、また違った!? ――また、私だけ!? みんなを友達だと思ってたの、私だけ!?)
さっきの笑いは「は?(笑)」みたいな笑いだったの!?
頭の中で何度も響き回る「私達って友達だよね?」と訊いた時に返ってきた、「は?(笑)」の声。
私は地面がどこにあったかわからなくなり、よろけて、目を閉じて耳をふさいだ。
◆◇Sight:三人称◇◆
義母は、涼姫に何度も云った。
「お前はおかしい」
「お前がおかしい」
「お前が駄目な子だから」
「お前が悪い子だから」
「義母さんは叱りたくなんかないんだ」
やがて涼姫は、何もかも自分が悪いと思うようになった。
こうして育った自虐的な子供は、自虐的なりには案外純朴に育っていた。
ストレスから呼吸が下手で、息が苦しい時も「二酸化炭素が増えているんだなぁ」などと考え窓の外を眺め、地球環境について真剣に悩むくらいには純朴に育っていた。
けれど彼女は変わる、変えたのは友達だ。
中学に入り、涼姫にも友達ができた。
他人を見ると無視されるか、叱られるか、馬鹿にされることしか想像できない――自虐思考が彼女を挙動不審にさせ、周りはみな眉をひそめる。
なのに一人だけ、涼姫のおかしな様子を気にしないで付き合ってくれる――気にかけてくれる友達ができた。
すると涼姫の毎日は、一気に目覚めるように輝き始めた。
家にも学校にも、自分の知る場所のどこにも涼姫の居場所はなかったのに、友達の傍だけは彼女の居場所になった。
涼姫は幸せだった、友達がすべてだった。
何もかも耐えられた、友達がいるから、全てが輝いた。
眩しくて眩しくて、目が開けてられないほど世界が眩しくて、それが嬉しくて目を細め笑っていた。
でも友達は、違った。友達だと思っていた女の子に涼姫が「私達って友達だよね?」と尋ねると、
「は?(笑)」
「お前は何を勘違いしているんだ」と、笑ったのだ。
ケタタマシイ笑い声で。
それ以降、涼姫が友達だと思っていた子は、涼姫に近づかなくなった。
(――人間って怖い)
涼姫は心の底から―――そう思った。
それから涼姫にとって―――世界はお化け屋敷になった。
全ての人間が―――お化けに見えた。
―――いつ自分に襲い掛かってくるか分からない、お化けに見えた。
涼姫はお化けを見ないために―――伏し目がちに歩くようになった。
そこから涼姫は一人だった。
一人きりでずっと歩いてきた―――そこは暗く、恐ろしい世界だった。
(友達なんていなかった。自分は、世界を小さな小さな窓から覗いていたんだ―――)
涼姫は真実の世界を見て、心に鍵を掛けた。――固く固く―――鍵を掛けた。




