655 持ってます
みずきは急に誘っちゃったから、持ち合わせも無かったみたいだし、私のせいだし。
あと、立花の技は怖いので、すごすごと諦めることにした。
「まあ、誘ってもらったのは嬉しかったぞ――だが金魚帯は別だ」
「あい」
さて、ヘンタイという事実陳列罪は不起訴として、気を取り直しみんなの浴衣紹介を続行しよう。
フーリの浴衣は青を基調とした物で、白や黒の線で水みたいなイメージの線が描かれている。
波紋にも、流れにも見える感じの「いかにも浴衣!」って感じ。
お嬢様なフーリにピッタリ。
チグは、藍色にオレンジひまわりの絵があしらわれたやつ、そこに紅色の帯――ひまわりに紅色とか眩しすぎる。流石、陽キャの擬人化。
カレンの浴衣は紫の花を主とした柄に、こちらも紅色の帯。お人形みたいな見た目のカレンだけど、大人っぽい紫が、可愛さを逆に際立たせている。
みかんの浴衣は、金木犀柄。
花の縁取りが金色で豪華。
そこに緑色の帯。
「地味目がええねん」と言って持ってきたのが、これだ。
確かに落ちついた感じだけど、地味な模様に金の縁取りが有るんだぜ。
これだから、陽キャって奴ァ。
店の女将さんが口元で軽く手を合わせる。
「いやはや。皆さん美人で、よくお似合い――」
女将さんが、私を見て止まった。
「いやはや、皆さん可愛らしくてよくお似合い――」
「なぜ言い直した!? ――ねえ、なぜ今言い直したんですか!?」
私の心から出た叫びは華麗にスルーされる。
「こちらのお嬢さんなんか金髪さんなのに、」
そこで女主人さんは、アリスの胸を一瞬見て。
「和服がよくお似合いです」
「えっ、そうですかぁ」
アリスは、何の疑いもなく耳の後ろを掻いて照れている。
「知らぬは」
「本人」
「ばかりなり」
フーリ、カレン、みかんと3人連携を決めたけど。・・・止めて、胸のとばっちりは、だいたい私に来るんだから。
私は風向きが変にならないうちに店を出ようとするけど、ふと女主人さんが私の胸を見て。
「はあ・・・・」とため息を吐いた。
「日本人なのに、この体たらく」
だから、さっきからどういう意味ですか!?
するとフーリが突然、仏像が浮かべてそうなアルカイックスマイルになって、手を仏像がしてそうな――人差し指と親指で輪を作る形にした。そうして、女将さんに告げる。
「女将さん。その子、持ってるわよ――年間十億とか、軽く稼ぐわ」
聞いた女将さんの顔付きが変わる。なんか一瞬、女将さんのこめかみの辺りに〝ベタフラッシュ〟みたいなのが見えた気がする。――そして私をみる、それはもう獲物を狙う女豹のような瞳で。
「お客さん、これからなにかあったときのために、フォーマルな着物は一着用意しておいたほうが良いと思うのですよ!!」
「えっ、ちょっ・・・・急にどうしたんですか!?」
フーリが私の肩をポンポンと叩く。
「・・・・和服業界――大変なのよ」
女将さんが持ってくる超豪華な生地。
絶対高いやつ。
「お客さん、こちらの生地は大変良いもので、お客さんに似合います! この生地は派手で、お客さんの顔は地味目ですが、お客さんの身体は和服に映えないですが――こちらの生地なら行けます! なにせ高いので!!」
「ちょっ、顔が地味とか、和服が似合わないとか思ってたんですか!?」
「いえっ、そんな滅相もない!!」
「なんで、それで誤魔化せると思えるんですか!?」
その後、成人式用の晴れ着を一着作ることを約束させられて、私達は店を出た。
ま、まあ成人式の為に晴れ着をプレゼントしてくれるような親も親戚もいないんで、自分で買うかレンタルしかなかったのはそうですけども。
未婚なら着られる機会は、一杯あるかもだし。
そこの貴方・・・何歳までの私の晴れ着姿を想像したか、正直に言いなさい。
「さあ、準備万端――繰り出しますか!」
アリスが言うと、みずきとみかんが拳を振り上げる!
「食べるぞー!」
「おーっ!」
この二人、気が合いそうじゃん。
「スウの奢りでー!」
「奢りでー!」
まあ急に呼んじゃったから、仕方ないけど。
だが、みかん。貴様は何を言っている。
でもそうだね、まずは腹ごしらえ。
昼食から大分たった。そろそろ晩ごはんの時間だし、私もお腹が減っちゃった。
七夕飾りがされている道の左右の商店街にも、思い思いの屋台が置かれている。
さて、そんな中を抜けて、屋台が沢山出店されている広場に来た。
コンビニがホットスナックを置いた屋台を出してたりする。
「うーん、普段はよく食べるし美味しいんだけど、口が違うなあ――お祭りは、こう、もっと雑でジャンキーな物を食べたいという感じ。――ソフトドリンクも売ってるし、あれだけ買っていこうか」
「ですね」
「ヤキソバが食べたいぞー!」
リッカの言葉にフーリが、地図を見るちなみに紙のやつ。
屋台の焼きそばって美味しいらしいね。初体験。
ちなみにこの後、別の物を食べる。私が屋台のヤキソバを食べるのは、ずっと先になる。




