653 七夕に行きます
今日は七夕、去年と同じく笹ならぬ竹が校門前に飾られて、小学生が短冊に願いを込めている。
「涼姫」
「どったん、アリス」
現在、私はアリスの机の側にいる。その近くの窓の枠に寄りかかっている。そこから短冊を竹に結びつける小学生を見ていた。
するとアリスに肩を叩かれた。
私は、ちょっと慌てる。
「え、別に小学生を変な目で見てないよ!?」
「何言ってるんですか」
ちなみにアリスの席は、現在フーリが占拠してなにかの資料を難しい顔で眺めたり、時々ニヤニヤしたりしている。
あっ、今日の私は萌え裾でキメている。
萌え裾とは、萌え袖の裾版。
カーディガンの裾を、スカートの裾とほぼ同じ高さにする会心の着こなしである。
「安心して下さい履いてますよ(スカート)」
なんかワシ、女子高生みたいじゃろ?
えっ、なんで急にそんな格好をしてるのか? ・・・・ア、アニメの女の子がやってたから・・・。
いいだろぉ!! カワイイは正義って、アリスが言ってたし! 正義は必ず勝つんだよ! やーいやーい「敗北者ジャケェ」ども!
ところで「敗北者ジャケ」って、何の鮭?
まあ、とりあえず問題は、私の身長が170近くあって、似合わないことである。1つも可愛くないことである。
顔に縦線入った高身長の天パが、萌え裾やってんだぜ。片腹痛いわ。
アリスが、西の方を指さしながら言う。
うちの学校は真南に海があるから、方角がわかりやすい。
「七夕祭り行きませんか? 平塚の」
「あー・・・大きなのが有るんだっけ?」
「はい、結構有名なお祭りです」
「じゃあ行こっか」
「浴衣を着て行きましょう」
「えっ・・・・私、浴衣とか持ってないよ」
「買えばいいでしょう。お金は有るんですから」
「だ、だけどさ・・・アリスの隣歩くんでしょ? アリスが浴衣とか着たら、破壊力全開になっちゃうぢゃん・・・私そんな人の隣を同じ様な格好で歩くのイヤだよ。私破壊されちゃうじゃん。ハカイダー」
この人、金髪の癖に、袴をあんなに見事に着こなすし。
「そんな・・・女の子同士、二人で浴衣を着て歩きたいのに。金髪のわたしだけ浴衣着て、黒髪の涼姫が普段着だと、浮かれた外国人とか指さされそうですし」
ハカイダーがちょっと悲しそう、私は思わず「う」っとなる。
後ろ指とか気になる気持ちは分かるけど――そこでハカイダーも普段着、とかにならないのね。
「で、でもさ、・・・浴衣ってそんな直ぐに手に入る物なの??」
アリスがスマホで「パタタ」っと調べ始めた。
七夕祭りが行われる道の付近に、着物屋さんが沢山ありますね。どこかで借りるか買うかしましょう。
「アリスの余計な行動力が辛い」
「あら、平塚の七夕祭りに行くの?」
「そうしましょうって言ってました」
「丁度良かったわ」
フーリが見ていた資料から顔を挙げて尋ねてきたので、アリスが返した。
あの資料、多分会社の報告書なんだろうなあ・・・・学校でまでずっと経営考えてるんだから、本当にフーリは凄い。
「丁度いいってなんですか?」
「ふふっ、それはあとのお楽しみ、」
アリスの疑問に、フーリが資料を見ながらニヤニヤして尋ねてくる。
「私も行っていいかしら?」
「もちろんですよ、カレンとみかんも誘っていきましょう。あとみずきを仲間外れにしたら絶対むくれるんで、みずきも」
「良かったわ、スズっちさんとアリっちさんと一緒に行けないと、面倒な人たちと行かないといけなかったから」
「面倒な人たち? 行かないといけない?」
財閥関連の人かな?
フーリが、何処かへ電話を駆け出す。
「そう、スウさんと行くんで、キャンセルで。一応は顔は出すから、安心して」
私は意外な展開に、脳が破壊される。
「みんなでお祭り・・・みんなで・・・まるで女子高生!」
今日は萌え裾に、みんなでお祭り。もしかして私、女子高生ルート入った!?
妄想でトリップする私に、アリスとフーリは苦笑い。
フーリが物憂げな顔になる。
「私の母の出身が、平塚なのよ――そういえばさっきスズっちさんは『浴衣を持っていない』って言っていたけれど、それだと着るのも初めて?」
「あ、うん。完全に初見」
「なら、浴衣を着る際の注意事項を教えておくわね」
「――ちゅ、注意事項!? ―――そ、そんなのあるんだ・・・! お願いします!!」
初見殺しは、知ってないと回避できない!
「あのね、浴衣って〝浴み衣〟って書くでしょ?」
「うんうん」
「これ、まさに読んで字の如く、浴衣って元は入浴時に着る衣だったのよ」
「えっ、そうなの?」
衝撃の事実だ。昔の人は、ああ言うのを着てお風呂に入ってたんだ? 露天風呂とかで着てたのかなあ。
「そうなの。だからルールがあって、浴衣を着る時は下着をつけてはいけない。お風呂に入るのに、下着を着けるのは可笑しいでしょう? なにより下着の線が出るとカッコ悪い」
「そ、そうなんだ? ――でも、カッコ悪いのは、確かに」
恥ずかしいけど。みんなそうしてるなら、頑張らないと駄目かな・・・。
するとアリスが、ちょっと眉間にシワを寄せた。
「――涼姫・・・騙されてはいけませんよ。わたしも昔、・・・こういうのに騙されかけたんです。――あのジジイ・・・見た目が外国人だから、わからないと思って・・・」
えっ、嘘なのっ!?
「――フーリ!?」
私がアリスに向けていた顔を勢いよく巡らせて、フーリに向き直ると、
「ちっ」
ヤツは舌打ちをした。
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はい、やらかしました。80層の前に入れる予定だったイベントを思いっきりぶっ飛ばしてました。
話が前後してすみません! もう修正は効きませんッッッ!!




