647 出撃します
という訳でスタークーガーと北辰に、5つのミサイル搭載完了。
「積み終わったみたいですよ」
アリスが緊張の面持ちになったんだけど、
「まだかな、私のだけは左右の翼に3つずつ、胴体下部に1つでミサイルは7つ。もうちょい掛かる」
「えっ!? ――なんでスウさんの機体だけ、ミサイルが7つなんですか!?」
「私のだけは、胴体と翼が一体成型で強度があるんだよ。少々重くしても、翼が折れたりしない」
「――あっ! なるほど・・・スタークーガーと北辰は、可変翼だから翼と胴体の一体成型は無理なんですね」
「うん。あと、可変すると、ミサイルの向きが変わっちゃうから。可変しない部分の下のみに付けるか、翼の可変に合わせて動くかの選択をしないといけない。――前者はあの2機のモデル、トムキャット。後者はトーネードだね。『可変翼機は、ハードポイント重くなりがち問題』。――あの2機は、トムキャット方式だね」
すると柏木さん。
「すまない。超音速で飛ぶ前進翼を、フライ・バイ・ワイヤ無しでコントロールできる人間がいなくてね・・・・」
するとアリスが肩を竦める。
「いえ、この人が可怪しいんですよ」
「なぜか私が殴られた。やめて下さい、変人扱い」
私が言うと、柏木さんが踵を打ち合わせて敬礼。
「スゥ・イエッスゥ!!」
「その返事は止めろと言ったはずだ、訓練兵ッ!!」
私はドロップキック機動を、実施した。もちろんスキルを使った。
柏木さん、雪の地面に吹っ飛んだ。
「でも、可変翼ってどうせ高速のデルタ状態でミサイルを撃つんでしょうから、そっちに合わせちゃったら良いんじゃないですか?」
「飛行機同士のドッグファイトは低速の方が強いからね。飛行機に対してミサイルを撃つなら、低速域も重要なんだ――ただもちろん、速度を捨て過ぎたら駄目だけど。でも低速域でミサイルを撃つ可能性は、捨てるわけにはいかない」
「なるほどです・・・・」
「――F14が出てくる有名な映画でも、ドッグファイト中に、案外翼を開いた状態が見えるよ」
まあ、テーパー状態からいきなり次のコマでデルタになっt――とか考えるのは止めたげて!
私が思い出から不味い事実に気づいていると、アリスが私に尋ねてくる。
「マ、マジですかぁ。――ずっとデルタ状態ってのが、そもそも間違ってたんですねぇ・・・・て、えっ、じゃあデルタ翼しかない戦闘機は?」
「そこも、可変翼の強みだよ――だからFL運営が、なぜダブルデルタ翼のホワイトマンを訓練機に選んだのか、私は中学生の時からずっと首を傾げとるよ」
いやまぁ、FLのダブルデルタ翼は低速域でもリフティングボディの完成度や、乱流翼、あと大型フラップで、揚力が高いんだけども。
――でも高速域だと、リフティングボディはFLの全機体にあるからともかく、乱流翼はホワイトマンにしかなくて、これ速度の邪魔なんだよね。
・・・・まあ、これがホワイトマンが訓練機を脱出できない理由なのかな?
しかし人型形態で離着陸が簡単だからって、スパルタすぎん? しかも「人型形態の離着陸が楽だよ」って初心者クエストで教えてくんないし。まあ、すぐに常識になったけど。
果たして筋肉装填は終わり、いよいよ私達は戦闘機に乗り込んだ。
自衛隊員さんが、誘導員をしてくれる。
「ご武運を!」
「ああ、任せろ」
まず隊長機のマイルズが、手を振って飛び上がった。
次に副隊長のマリさん。
「いってきまーす!」
最後、ヒラ隊員の私。
「じゃあ、行くよ、綺雪ちゃん」
「はい!!」
私が飛び立とうとすると、誘導になぜかヴィックが現れた。
あれ? なんで大佐が来るの・・・? 大佐が誘導? とか思っていたら、ヴィックが力強く踊りだす。
あ! これ、マーシャラーダンスだ!
(えっ!? メチャクチャ偉い立場である大佐が、マーシャラーダンス踊るの!? あり得ない光景だよ!?)
大佐が踊るって、支部の社長が、パフォーマンスしているような光景だよ!? しかも、ヴィック・・・・物凄い全力!?
マーシャラーダンスっていうのは、パイロットを送り出す時に、誘導員が踊ったりするヤツで、ジェットエンジンの騒音の中、パイロットの緊張を和らげたりするために踊ったりするんだ。
ヴィックの直立だけど、力強いステップのダンス――見ていると、なんだか勇気が湧いてくる。
そうか、あの直立は敬礼を表してるのか。足を動かす時も、敬礼する時みたいに踏みしめたり、踵を合わせたりしてる。
腕は、複雑に激しく動かしてる。出撃案内をダンス化したみた感じだ。
BGMまである(キャノピーはただの強化プラスチックみたいなものなんで音が聞こえる――けどジェットエンジンの音で聞き取りづらくはある)。――このBGM、有名な戦闘機映画のヤツだ。チュキ。
何人かの隊員さんが、生演奏してくれてる。
さらにヴィックだけでなく、他のUSSF隊員さんも、自衛隊員さんも踊りだす。ヴィックと同じダンスで一糸乱れぬ群舞。遂にはクレイジーギークス、プリティ・ギルティさんたち、ヒカリさんたち、ラッキースケベーズも加わった。
アリスも、リッカも、同じ動きをしてる。リイムが、鳥の体で一生懸命みんなと同じ動きをするのが愛らしい。
これ、みんなで打ち合わせして練習してくれてたんだ? ちょっと――いや、かなり感動。
綺雪ちゃんも、感動したような声を出す。
「盛大な送り出しですね! ―――みんなスウさんに期待してるんですね!!」
「綺雪ちゃんにもねっ!」
「あっ――え、えへへっ」
あっ、アリスがマイクを握って歌詞を歌い始めた。
さすが歌手もやってるプロ。イギリス人だから英語も完璧だし、女性が歌うこの曲もいいなぁ。
ダンスが終わり、みんなが一斉に、私にサムズアップ。
そして急に敬礼・・・・静寂。
ヴィックも踵を合わせて敬礼してくれて、GOサイン――ありがとう!
勝ってきます!!
私は〖テレパシー〗で、
(勝利を、皆さんに―――!!)
私が叫ぶと、ヴィックが、最後に、
(Godspeed)
と静かに、祈るように言った・・・。




