640 ペロペロします
私はゴッドハンドに感心しているけど、フレデリックさんの興奮は収まらない。
「ニッケルは希少だし、チタンは加工が困難を極めるのに形を決められるのか――こんなに簡単に! ・・・いやまて、このサバイバルではコバルト鉱床など見つかっておらず、コバルトも銅から僅かしか抽出できない・・・・それを・・・!!」
ども・・・こんグリッジねーしょん。スウです。なんかもう、自分がズル過ぎる存在だと認識しました。
フレデリックさんの手も大概だけど。
❝フレデリックさん大興奮www❞
❝ありえないよなw 地球ではチタンとかそんなポコポコつかえないのにw❞
「それで君、ゲルマニウムは?」
「不死身のMoBから」
私が説明すると、フレデリックさん一瞬止まった、その後ドン引き。
「そ・・・そうか・・・MoBの体から採ったのか・・・・」
「余ってるんで使いますか? ・・・ちなみに多分、ここ80層のボスにはレシプロ機じゃ勝てません」
「レシプロ機では勝てない? ・・・・そんなに強いのか――あ、ああ・・・・使わせてもらいたい。我々もジェット戦闘機を作ろう――だが我々も流石に専門家ではないからな、君の協力を仰ぎたい」
「私も専門家ではないですが。協力はさせて頂きたいです」
「早速だが――」
という訳で、USSFも自衛隊もジェット機の作成に入った。
「やっぱアフターバーナーの水素タンクは、ちょっと大きめになっちゃうね」
「いい加減、圧縮するにも限度があるぞ。あといくらわたしでも、体力に限界があるぞ」
水素を作ってくれたみずきが、少し肩で息をしながら言った。
「今日はワカサギの天ぷらにするね」
「やった! 塩用意してくるー!」
みずきが走っていった。こんだけ水素を作ってまだ走れるのか。
みずきなら、私が邪智暴虐な王の人質にされても、安心できるな。
野盗とか、瞬く間に成敗するだろうし・・・荒れ狂う川も〖水操作〗できるし。
にしてもこの辺り、ちょっとイオン臭いな、鼻を刺すような金属臭がする。
気をつけたけど、スキルで水素と酸素を分けた時に発生したオゾンが、結構逃げちゃったみたい。
私、〖毒無効〗で良かった。まぁ少々のオゾンならあんまり害も無いだろうけど。
私が鼻をつまんでいると、マリさんがやってきた。
「水素アフターバーナーはロマンだけどねぇ。――あっ、これあげる」
「あっ、マリさん、ここ今オゾンが・・・・」
「ボクも〖毒無効〗なら有るよ。くれたじゃないか」
「あっ、そだっけ・・・?」
マリさんに手渡された――茶色い透明な・・・?
「なんでしょう、これ」
「ペロペロキャンディ」
「やった!」
ベッコウ飴に竹の箸をくっつけただけのシンプルなものだけど。早速ペロペロ。あまーい!
「他のみんなの分はありますか?」
「もちろんあるよ。あとで渡してくる」
「よかったです!」
私が喜ぶと、マリさんがタンクを見ながら首を傾げた。
「でも、なんで水素だとタンクが大きくなるんだい? どこまでも圧縮すればいいんじゃないのかい?」
「液体になると、それ以上ほとんど圧縮できないんですよ」
現代科学で滅茶苦茶に圧力掛ければ、超臨界・流体とかにできるけど。
「あー、油圧とかで聞いたことがあるね」
「それです。そうして、圧縮してもまだ、ケロシンの方が体積ごとのエネルギー効率が断然いい」
「みずきくんに圧縮してもらって」
「そんな圧力掛けたら、タンクが爆散しますよ」
「そっかぁ」
「あと、水素って、タンクを侵食するんですよね」
「そうなのかい?」
「分子が小さすぎて、鋼の中に入り込んで、金属を脆くしてしまうんですよ」
「そうなんだ?」
「今回は短期間使えればいいので、そこまで問題は無いですが――一応、純鉄とクロム鋼を層構造にしています。外側は、力がかかるほど強くなるマンガン鋼です」
クリエイトパーチャーで作った。
マリさんが納得するように頷く。
「まあ、短時間パワーが欲しい時に水素を使う感じにすればいいね。ターンなんかによる減速は、通常燃料アフターバーナーで何とかする感じかな?」
「はい」
「ボクの乗る機体にも、同じアフターバーナーを宜しくね」
「フレデリックさんたちに言っておきます」
というわけで、フレデリックさんたちのいるテントの方向へ行くと、
「8ビットでは浮動小数点は難しいか――」
「ですね」
「やはり固定小数点で行こう」
マイルズと綺怜くんの声がしたので、私はマリさんに貰ったペロペロキャンディーを舐めながら振り返る。
二人は厚紙に打たれた穴を見ていた。
「パンチカードかな?」
初期のコンピューターに使われた、データ記憶装置。
穴が直接見えるから、目でプログラムを確認できる。
モニターが無いからデータを直接見てるんだろう。
モニターは急いでUSSFが、真空管モニターを作ってる。円錐形のフラスコみたいなのに、電子ビーム装置を付けたりしただけの単純なものみたい。
もちろん白黒。電子ビームを当てて、白い長い線になった場所が1。点になった場所が0。
私はペロペロしながら、パンチカードを見つめる。
角度はスウ度じゃないみたい。地球の度で計算してる。
んっと、パンチカードは確か穴が空いている場所が1かな? で、空いてない場所が0。――なら、
「そこ、90度じゃなくて、80度じゃない?」




