637 勝ち目がでます
私の目にも、機体に掛かる傘のような霧が見える。――すごい振動だ・・・でも、きっと大丈夫・・・クリエイトパーチャーのチート性能で翼も胴体も一体化で成形したし、カーボン繊維も使ったし、チタン合金も使った。しっかりとハニカム構造で、軽さと剛性を確保してある。
空力もきちんと考えてある。音速程度で崩壊しないとおもう!
ただ、カーブを描きながら飛んだら不味いんで、真っ直ぐ飛ぼう。
(あっ、真っすぐ飛んだら見えなくなった!)
(早すぎだろう!! ――双眼鏡はどこだ、どこに入れた)
しばらく飛ぶと、傘のような霧が消え、振動も消えた。
静かな世界――音を追い越した世界・・・。
「いけた・・・音を超えた」
❝うおー・・・パネェ!!❞
❝ヤバイヤバイヤバイ、あの環境で超音速戦闘機はヤバイ❞
❝・・・・俺ら、80層は生き残るので精一杯なんだが❞
パワー的には問題無いのは分かってた。怖いのはタービンだった。
帰ったら溶けてないか調べないと。
「テストは成功だね」
私は一気に速度を落としていく。
あんまり急に下げたら熱対策したタービンでも溶けちゃうんで、徐々に。
ある程度速度が下がったら、エアブレーキも使って速度を落とす。
そうして時速400キロ位にして〖マッピング〗。青点を見つけてマイルズとマリさんと合流した。
(お帰りだ。・・・・出ていたぞ、超音速――こっちからも目視で確認した。だいぶ速度を落としてくれたみたいだが、まだ早いな・・・・レシプロ機では、お前について行けん)
マリさんが困ったように笑う。
(こっちの最大速度位でてるからねぇ。――スウちゃん、200キロ位に速度下げれない?)
するとマイルズが首を振る。
(マリ軍曹、超音速機でそこまで速度を落とすと、墜落が怖い――まあ前進翼だから無理ではないが、辛いだろう)
(あ、そっか、ごめん。ボク広報官だから。地球の戦闘機には乗れないんだよ)
広報官(オリンピック・スナイパー部門、銀メダリスト)。
私は心のなかで苦笑い。
(スウ、とりあえずクレイジーギークスと合流したい)
言ったマイルズが、紙コップみたいなのに喋りかけている。
(無線機作ったんだね)
(まあな。USSFは軍隊と言っても、どちらかと言えば頭脳派だからな、無線機くらいは造作もない。――そんな俺達でもまだレシプロだ。タービンはどうやって熱対策した?)
マリさんが、なんか草を生やす。
(あの紙コップを見て、すぐさま無線機って分かるんだ? 草)
(ま、まあ・・・)
ちょっと前にプリティ・ギルティちゃんに説明したし。
私はマリさんに生返事をしてから、マイルズに答える。
(コバルトとニッケルとチタンで合金を作って、内部に冷媒を流し、ゲルマニウムを塗った感じ)
(ほぼ完璧な熱対策をしてるじゃないか。――ボク達USSFは、熱対策はプロだが材料に困っている――お前は、どう調達した)
(ほとんど全部、第一遷移元素なんで)
(――・・・確かに。お前、本当にチートだな。ゲルマニウムはどうやって手に入れた?)
(MoBのを)
マイルズが一瞬止まる。
そうしてマイルズの思考が混線してくる。
(なんだ、MoB? MoBとゲルマニウム? どういう――まて、まさか、コイツ!!)
そうしてちゃんとテレパシーを送ってきた。
(ま、まさか、お前! MoBの体から抽出か!?)
(う、うん。無限に復活する奴がいてね。そこから)
(クレイジー過ぎるぞ、お前!)
するとマリさんが、震え声。
(まって、無限に復活するって・・・・。この環境でどうやって処理したの・・・?)
(海溝に捨てました)
(・・・君、やっぱ狂陰だわ)
そ、そんなに狂ってるかな・・・?
(スウ、そちらの拠点近くにクリエイトパーチャーはあるか?)
(うん、新しいの見っけた)
(やはりか。大佐――)
マイルズが、無線機を置く。
(――よし、許可が出た。お前達の拠点に案内してくれ)
(うん!)
というわけで帰ってきた。
ラッキースケベーズの滑走路に着陸。
「ただいまー!」
「お帰りなさい。空翔テイル初フライトはどうでしたか!」
空翔テイルって、ジェット戦闘機のこと?
「名前、空翔テイルなんだ?」
「みんなで決めてみました! 爽やかな感じで良くないですか?」
陰キャの癖に爽やか好きの私。
「うん、好きな感じ。素敵な名前をありがとう」
私が名前つけると大体、事故るからね。
アリスにお礼を言っていると、リッカが近づいてくる2機に気づいた。
「おっ、あれはまさか――と言うか、奴等しかありえないな。USSFと自衛隊か?」
「うんうん。マイルズとマリさん」
「おーっ、有り難い助太刀だな」
私はリッカの言葉に頷く。
「ビジィみたいな能力を持つヤツの弱点に、多人数ってのが有るからね、凄く助かる」
ビジィに乗ったセーラ様が食らってたし。




