635 飛び立つ準備をはじめます
「あとは酸素ボンベとバイザーかな。前に戦った時も思ったんだけど雪が結構、眩しいんだよね」
バイザーは適当にアクリルを作って、煤で黒くするとして。
酸素ボンベは〖超怪力〗とか使えばできないことはないけど、コンプレッサーを作って楽をしたいから、
プチ火力発電所を作ろう。
というわけで発電施設を建設。
「またジェット?」
私が腕を組んで、縦に伸ばしたジェットエンジンみたいなものを眺めていると、隣にプリティ・ギルティちゃんが生えた。
このパターンは!!
激しめに後ろを振り返ると、リッカ、香ナイトさん、鳳ヘプバーンさんがかまくらを作っていた。アリスもいる。――アリスがいれば安心か。
あとリイムもかまくらをペタペタしてる。リイムってば、いちばんかまくらを作って来たせいか、いつのまにかかまくらのプロになった。
かまくらの側には、中に持ち込むためなのか、鍋も用意してる。魚介鍋かぁ・・・。私もご相伴に預かりたいな。
アリスがいれば変なこともしないでしょう等と安心していると、なぜかリッカの右手に磁石。皮は巻いてあるけど、磁石いらんやろ・・・。磁石好きなんか?
私はプリティ・ギルティちゃんの質問に答える。
「これはジェットエンジンじゃないかな」
「中身も、そっくりだけど」
プリティ・ギルティちゃんがハシゴを登って、中を覗いている。
「これは火力発電施設だよ」
「えっ、火力発電!? ジェットエンジンじゃないの!?」
「火力発電って飛行機のエンジンにそっくりなヤツもあるんだ。――エンジンと火力発電の違いはオイルや石炭、核の熱で温めた水蒸気でタービンを回すところ」
「それって、蒸気機関?」
「そうそう」
「てことは、地球の発電も蒸気機関で電気作ってたの!?」
「そだよ」
「衝撃の事実」
「品質の高いオイルが手に入ったから、アレを燃料にして発電しようかと」
「なるほど・・・・で、こっちのは? ちっちゃめだけど、これもジェットエンジンにそっくりだね」
横倒しになったジェットエンジンみたいなのを、プリティ・ギルティちゃんが指を差した。
「こっちは空気圧縮用のコンプレッサー。ジェットエンジンって、言ってみたら超強力なコンプレッサーだから」
「そ、そっか。ジェットエンジンも、空気を圧縮して温度を上げてるんだっけ」
「うん。なのでジェットエンジンは空気圧縮の達人。――私的にはスクリューコンプレッサーとかさらなる達人――というか最強はディーゼルハンマーが空気の圧縮の達人だと思うけど、スクリューコンプレッサーは精密すぎてジュウゾウさんに負担かかりすぎるし、ディーゼルハンマーだと空気を溜めるタンクの方が爆散しちゃうから、断念」
「ディーゼルハンマーは見たけど、質量の暴力じゃん・・・・あんなので酸素ボンベ作ろうとすな。でも、エンジンって色々な物に利用されてるんだねぇ」
「そんだけ効率が良い仕組みしてるんだ」
「エンジンって凄いねぇ」
私は火力発電機に燃料を注いで、発電開始。
しばらくしたら、だんだん周りが熱くなってくる。――そしたら後ろから悲鳴が聞こえた。
プリティ・ギルティちゃん、リッカ、アリスが悲鳴を挙げている。
「熱っつ!」
「なんだここ、滅茶苦茶暑くなって行くぞ!」
「あーーー! かまくらが溶けだしましたー!」
あ・・・・そりゃそうか、そうなるわ。
「コケーーー(ママやめてー!)」
「いや、ごめん、火力発電施設だから、簡単に移動できないし、今すぐ止める仕組みもない」
あとここ、滑走路の予定地だからエンジン起動のためにここに設置する必要がある。
「そんなーーー!」
「私たちの力作がー!」
リッカが口を尖らせる。
「なんでかまくらの側に、火力発電施設なんか作ったんだよ!」
「いや、君らが火力発電施設の側でかまくらを作り始めたんや」
「スウがここにいるから、ここでかまくら作り始めたのに!」
「なんでだよ、私のこと好きなんか」
「美味しい鍋を自慢してやろうと」
「そんなことを考えていたのか、貴様」
プリティ・ギルティちゃんも涙目。
「スっちー酷いよー」
「断固として言わせてもらうけど、私は悪くない」
結果、温かいのでかまくらは要らないという事になって、普通に机を置いて鍋パーリィになりました。
アリスが地面の雪解け水を、トンボ(地面を均すやつ)で遠くに捨てながら言う。
「日本のかまくらの風情を感じたかったのに、地面がぐしょぐしょです」
リッカが火力発電の熱で、魚を焼きながら言う。
「ここだけ、すっかり雪が消えたぞ。まあそのうち熱で水も乾くだろう」
プリティ・ギルティちゃんが、火力発電の熱で手のひらを温めながら首を傾げる。
「この熱で温泉を沸かせないかなぁ」
「勝手にしたらいいけど、中でオイルが爆発するみたいに燃えまくってるから気をつけてね・・・」
というわけで、火力発電でコンプレッサーを回して酸素ボンベをいっぱい作った。
「なんで酸素ボンベが必要なんですか?」
アリスが酸素ボンベをペタペタ触りながら、首を傾げた。
「空の上は空気が薄いから、飛行機の中も気圧が下がるんだよ。その上Gが掛かって血液が足に集まる」
「そ、それは酸素ボンベ無しだと気絶しちゃいますね。気圧が十分なバーサスフレームでも、気絶しそうになるんですから」
「そうなんだよね」
で、ちょっと時間が掛かったけど、ジェット機が完成したわけで。――ちなみに双発、つまりエンジン2基積みにした。とにかく加速力がほしいから。
さて、早速テストフライト。
まずは速度を出さないで飛べるか。
ラッキースケベーズに整備してもらった道路(石油から取った、アスファルトと砂利とか色々混ぜたりしたのを固めた)から飛び立つ。
ちなみにこの道路の整備用に、私がディーゼルランマー――ディーゼルエンジンで動く地面を叩く機械(一本足みたいなヤツ)。あれを作ってあげた。
起動したら止まらなくてワロた。
燃料が無くなるまで、止まらないでやんの。
跳ね回るディーゼルランマーに蹂躙されるラッキースケベーズを、私、リッカ、アリス、プリティ・ギルティちゃんと一緒に「いとをかし」と眺めてたら、ラッキースケベーズが悲鳴を上げたので〖念動力〗で止めてあげて、改良して空気を遮断する機構を組み込んだ。そうして滑走路ができた。




