626 設計します
「発動、リスナーペディア! ――リスナーの皆さん、ジェラルミンの材料分かりますか?」
❝ワロw❞
❝最終手段ってか、他の配信者はやりまくってるのに、ここまでやらなかったスウが異常なんよw❞
❝検索した。アルミ、マンガン、マグネシウム、銅だって❞
「ありがとうございます! ――マンガンと銅は第一遷移金属だけど、アルミとマグネシウムが私の魔術じゃ作れない。・・・・アルミは既に作ってあるけど、マグネシウムは・・・・海水をクリエイトパーチャーで精製して手に入れるかな」
アリスが「そうですよ、なんで今までリスナーに尋ねないでこの人やってこれたんですか・・・」なんて呆れてる。
リッカはプリティ・ギルティさんと、なんか「いみわからーん」と、社交ダンスし始めた。
私は、設計を詰めていく。
「――残るは細かいことかな、着陸を楽にする為に、ブレーキ用のパラシュートも欲しいかも。アレスティングフックも簡単だから付けちゃえ、70層の時みたいな使い方するかもだし。――機関銃はエンジンの回転で、弾倉のドラムを回転させるシンクロ型を胴体の左右に2門。それから翼に埋め込む連射力の高いのを左右に4門。上下で合計8門にしよう。全部で10門だね」
「早口やばいな。何一つ分からん、ちんぷんかんぷんだ」
「ホントに早口だねー・・・」
リッカはともかく、プリティ・ギルティさんにまで、早口言われた。
❝揚力に不安があるし、翼を大きくしたら? グライダーみたいに❞
「いえ、翼を大きくしすぎると、横転がしにくくなります。翼が揚力を持ちすぎると、沈めるのに苦労するんですよね。あと、速度も落ちます。だからってエルロンを大きくしすぎると、油圧で動かすのが大変ですし」
❝あー揚力が増えると――そうか、横転しにくくなるのか❞
❝震電みたいに、プロペラを後ろにつけようず。速いし上昇性能も良いし、空いた前方のスペースに滅茶苦茶でかい大砲積もうよ❞
「そのタイプは、離陸が面倒になるんで困ります」
❝離陸が面倒? なんで?❞
❝離陸時、機首が上がったら、後ろのプロペラが地面をこするんだよ❞
❝あっ、なるほ・・・❞
「特別なことはしないで、基本に忠実に行きたいと思います」
❝飛行機の基本的な設計なんて、普通分からんわw❞
――こうして、次の日。
「出来た! 複葉戦闘機!!」
❝なんでやねん❞
❝俺ら、まだ原始人みたいな暮らしをしてるんだが・・・!❞
「クリエイトパーチャーのお陰です」
❝まあ、アレも大概チートだしなぁ❞
「俺もバギーを作ってみたが」
オックスさんが、4輪のバイクみたいなのを指さした。
リッカが乗り回している。
「だがゴムがなぁ、あまり手に入らなくて――手に入った分は殆ど飛行機に回しちまったし」
「オックス、これ尻が痛い、痔になる」
雪の地面を疾走するために、ノコギリみたいなギザギザが付いたタイヤになってる。
「サスペンションのバネで誤魔化してみたが、ダメだったか」
「ダメだったな。まあ短時間乗るだけだから、問題は無いけど」
私とアリス以外は、バギーに乗るみたい。ゴムはごめんなさい。着陸用の車輪にいっぱい使っちゃいました。
あのバギーは二人乗りで、操縦と機関銃の射手は分けるらしい。
前の人は運転。後ろの人は、立って機関銃でボスを狙い撃つんだとか。
例えばさくらくんが運転で、オックスさんが機銃係みたいな感じ。
プリティ・ギルティさん達や、ヒカルさん達や、Ωアムアさん達もバギーで参加する。
あとは、ヒカルさん達が縫ってくれたパイロットスーツ(地球のタイプ)も用意して装着。ベルトで締め上げ。
パラシュート、ヘルメット、ゴーグル。
〖飛行〗があるけど、MoBがこっちのスキルを消してくるかもだし。パラシュートも一応。
「じゃあ、テストフライト」
❝危なくない? 海が凍ってるし❞
「〖飛行〗があるんで大丈夫ですよ」
❝そうだった❞
という訳でテストフライトをしたけど、大した問題は無かった。
「プロペラのパワーが強すぎて、反トルクが予想以上にキツかった事くらいですね――横転を抑えるために、やっぱりちょっと羽を大きくします。特に垂直尾翼」
反トルクは、胴体がプロペラの回転方向と逆に回転しようとする力の事。
❝俺が正しかった!❞
❝大きくするのは、ほぼ垂直尾翼だよw❞
「これは、反トルクが掛かってない右側に横転するのが、ちょっと苦手な機体になっちゃったなぁ」
ただでさえ揚力の高い複葉機、しかも大きな翼にしたら横転しにくいのに、さらに反トルクで左側に横転しようとするんだから。右に横転するのは、ちょっとスローになるなあ。
とりあえず、戦闘機としては完成。
さくらくんと綺雪ちゃん用にもう2機作りたかったけど、アルミとゴムが足りなくて断念。
私は、倉庫から備長炭を取ってくる。
「あとは通信機かな」
音声チャットは、FPSでもチートクラスの武器。
「通信機を作るの!?」
私がクリエイトパーチャーに向かうと、プリティ・ギルティちゃんが驚愕した。
「通信機があれば、戦いが一気に楽になります」
「自分が何者かを思い出して! JK!」
「つ、通信機は別に難しくないんですよ! 誰でも知ってる超カンタンな通信機がありますよね。それを真似れば良いだけです」
「えっ、超カンタンな通信機・・・・? そんなの有ったっけ・・・?」
「ありますあります! ――」
プリティ・ギルティちゃんは、思い当たらないみたいなので、私は返す。
「――糸電話ですよ!」
「あっ!」
プリティ・ギルティちゃんが、衝撃を受けたような声を出した。
「声の振動を紙で受けて、糸に伝え、糸が紙を振動させ再生する。凄くシンプルなしくみです。これを電気で行う――ね? 簡単でしょ?」
「電波部分はともかく、糸電話と考えれば、確かに・・・・」
「音質とか考えなければ、ですけどね。――例えばマイクは紙の振動を使っても良いんですけど――炭を粉にして電気を流す方法が楽です」
私が備長炭を打ち合わせると、澄んだ音が辺りに響いた。
「炭・・・・?」
「そうです、炭は接触している強さで電気抵抗が変わるから、それを利用します。そして、スピーカーはコイルと磁石を使って、紙を振動させればいい」
「なるほど、糸電話は確かに紙がスピーカーだ!」
「そうです! あとはアンテナで電波のやり取りをするだけ。マイクから得た電気を、電波として飛ばし、捉えた電波がまた電気に戻ります。それをコイルに流して、磁石で紙を震わせるんです。そしたら通信機の出来上がり!」
まあ電波増幅器として、真空管が必要なんだけど。
真空管が少なめでも、スピーカーの底を薄く硬めの素材にして、ラッパ状にすれば音も大きくなる。
ボス戦のフィールドで情報をやり取りするだけで、何キロも遠くに飛ばすわけでもないし。
「はー、通信機って案外簡単な仕組みなんだねぇ」
「うんうん、遠くに飛ばすんじゃなかったら、案外簡単」
するとリッカが首を傾げて、私に言う。
「てか、ウチらには〖テレパシー〗があるだろ」
「え・・・・」




