625 始動します
灯油もクリエイトパーチャーで精製。
ただ石油から灯油とか、時間が掛かるので・・・・大量に精製するなら、精製施設をクリエイトパーチャーで作ってそっちでやったほうがいいかも。
「みんな、離れててね。爆散したら危ないから」
みんな、私が先に用意しておいた、鉄の壁(魔術で作った)の向こうに退避する。
私はヘルメット。即死しなければ〖再生〗できるので――破片とか当たったら痛いけど。
そうして〖超怪力〗状態でエンジンを手動で回転させれば、燃焼機関に燃料が注入され、空気が圧縮され一発目の爆発が起きる・・・。すると、
Drrrrrrrrrrr...
と、辺りに振動を響かせながらエンジンが始動。真ん中のドラムが高速回転しだした。
「「「おおお!」」」
沸き起こる歓声。
❝一発成功かよ・・・・パネェよ!❞
「あとは回転部分の真ん中にプロペラをくっつければ、推進力が得られますね! ――それから」
私は、空気取り込み口の弁をコントロールするレバーを押す。弁を開いてエンジンが取り込む空気量を増やした。
すると、回転速度が上がった。
弁を閉めていくと、回転速度が緩やかになった。
「エンジンの加減速も、成功と」
するとプリティ・ギルティちゃんが唸った。
「マジで飛行機のエンジン作っちゃった・・・・ほんとヤバイ奴だね、スっちーって」
するとアリス。
「今更ですけど、やっぱりあの人、どっか異常ですよね」
どういう意味ですか・・・。アリスに異常って言われたら、スウは泣くよ?
私は、みんなの会話の流れが不穏なので、話題を変える。
「エンジンさえできれば、飛行機は90%完成したような物なので、後は簡単だよね」
❝『そうはならんやろ』❞
❝『なっとるやろがい』❞
❝スウは、飛行機をフルスクラッチで切り出すからなぁ。クリエイトパーチャー有りだと苦労しなさそう❞
「じゃあクリエイトパーチャーに胴体と、翼の設計図を入力しようかな――翼はブーメランの揚力の仕組みと同じだね」
「ですね!」
綺雪ちゃんが嬉しそう。
「プロペラの枚数は3枚、剛性を高めるため機体のハニカム構造もわすれない。プロペラもちゃんと揚力を考える。その方が前進力が高くなる。――右回りエンジンだから、右に僅かに傾けておく。もちろん複葉機で、翼平面は翼端失速が起きにくい楕円翼。上の翼が長め。翼の表面に関しては上面がカーブを描いて揚力を生むように。動翼は主翼にエルロン、フラップ、スポイラー。垂直尾翼にラダー。水平尾翼にエレベーター。あと、エアブレーキ。これらを油圧式で動かして」
ルーローちゃんが首を傾げた。
「なんで油圧式なんですか?」
「液体って自由な形になるから、カーブしてる筒でも押し込めば簡単に力を伝えられる。だからグネグネまがった力の伝達経路でも、面倒な機構無しに力を伝えられるんだ」
冷蔵庫のピストンを動かした、アレと同じ。
「あー、眼から鱗です」
「わたしは、水を圧縮できるぞ」
リッカが手のひらに水を生み出して、スキルで水を圧縮してみせた。
「それはリッカが可怪しいの。――あと油圧は力を増幅してくれるし――それからその圧縮した水、ここで解放しないでよ? クリエイトパーチャーが壊れかねないから」
リッカは遠くで、バッシャーンとやってた。
ルーローちゃんの首がさらに傾く。もう90度近い。
「増幅? なんでですか?」
私はルーローちゃんに、油圧を説明した。
「魔法みたいですね、バイ◯ルトみたいな?」
「魔法みたいだけど、ちゃんとした物理現象だよ――力の代わりに距離が失われる――滑車やテコみたいなものだね」
「そういえば滑車やテコも、距離を力に変換するんでしたっけ」
あと、加速器とかも距離を力に変えてる。
それから、銀河連合の次元折りたたみ航行とか、アルクビエレ・ドライブとかも。
「うんうん。――動翼は回転で制御するから回転の軸に近い部分を動かせば、動かす量は僅かになる。だからレバーを大きく動かせば、小さな力で、大きな動翼を動かすことが出来る」
「よく出来てるんですね!」
ちなみに初期は人力で動翼を動かしてたんだとか・・・どんだけ舵が重かったのか、想像もつかない。
私は説明を終えて、飛行機の材質を考える。
「飛行機の素材は剛性が高く、冷却性能も高いジェラルミンをメインに。――強度の高いステンレスを、エンジンやプロペラ、骨組みや翼の補強、動翼に使おうかな。あと油圧パイプにもステンレス。――えっと、ステンレスの材料は鉄、クロム、ニッケルだっけ。全部第一遷移金属だから魔術で簡単に手に入るね。――ジェラルミンの材料は――なんだっけ。誰か分かる?」
「分かりません」
「分かるわけなかろう」
アリスもリッカも駄目だった――リッカはなんで堂々としてるの。
他のみんなも駄目だった。
〖サイコメトリー〗を使ったけど、私の記憶にもない。
「仕方ない、最終手段だ」
「最終手段?」
リッカが首を傾げる。
私は、必殺技を放つみたいに腕を振る。
「発動、リスナーペディア! ――リスナーの皆さん、ジェラルミンの材料分かりますか?」




