624 ふぁいあーします2
私は5つのファイアピストンと同じ様な効果を持つ――気筒を星型に配置したものを、雪の上に描く。
配信ドローンに文章を打っていたアリスが、疑問符を浮かべた。
「これは?」
「飛行機のエンジン――星型エンジンだよ」
「エンジンってこんな形では?」
アリスがゴテゴテとした箱を、雪に描いた。
「それは車によく使われるV型エンジンだね。そのエンジンでもいいんだけど、制御が難しいんだよね――あと冷やすのにも水冷になっちゃう。それから、重い」
「何故ですか?」
「まず、1セットに配置できる気筒数が少ない。V型は2つだけど、星型なら5とか7とか9とか配置できる」
「そんなに・・・・なるほど・・・」
「さらにV型は下部がデッドウェイトになってるけど、星型はデッドウェイトがない。――それからV型は空気を圧縮するタイミングが制御しにくいけど、星型は容易だから信頼性がある。空の上でエンジントラブルとか、冗談じゃないし」
「どうして星型は、制御しやすいんですか?」
「制御が、凄くシンプルなんだ」
私は雪に描いた5つの気筒の中央に円を描いて、気筒から線を伸ばし中央の円の上部に、全てを集結させた。
「この気筒から伸びているのが、ピストンを動かすシャフト。そして真ん中の円は回転する。これは水車でフイゴを動かしたクランクが5つ付いてるのと同じね。すると」
アリスが私の描いた図をじっと眺める。
「えっと――円が回転、そしてシャフトの接続されている位置が中央からズレてるから、円の若干外側でピストンを動かして・・・――あっ!」
「お気づきになられましたか」
「お気づきになりました! 円が回転するとピストンが順番に圧縮されます!」
「そう、しかもこの真ん中の円を回転させるのは、ピストン内で空気が圧縮され起きた爆発した勢いなんだ。つまり爆発を起こすことで円を動かし、再び他の気筒で空気を圧縮して、石油で爆発を起こす。これを繰り返す」
「凄い! 星型エンジンって本当に効率よく出来てるんですね!」
「これ、初めて知った時――私、すごく綺麗って思ったんだよね!」
「ですね、凄く綺麗です!」
リッカが腕を組む。
「実にエレガントだな」
どこの学者だよ。
❝星型エンジンの仕組みまで説明できるのかよ、この女子高生。――しかも女子て、高校生て❞
オックスさんが腕を組みながら顎に手を当てて、深く頷いた。
「俺は車のエンジンの仕組みは知っていたが、星型エンジンの仕組みは初めて聞いた。なるほど、星型エンジンってのは、V型をさらに気筒を増やした感じなんだな。しかし気筒の数が5、7、9と、なぜ常に奇数なんだ?」
「えっと、それはですね。星形エンジンは、前後にエンジンを並べて気筒数を増やしていくんですが、奇数ならこのシャフトを集結させている場所を前後で180度逆にするだけで、空気の圧縮タイミングを制御できるんです」
「ああ・・・確かに。なるほど、・・・それなら整備も簡単だ――本当に信頼性が高いエンジンなんだな」
「はい。さらに、生まれるパワーに対して、エンジンの重量が軽いんです。またシャフトを短く出来るので剛性が強くなり、プロペラの回転も早くなるので、ここでもパワーが出ます。――更に連続的に空気の圧縮を行うので、振動も少なくなります。振動が少なければ、飛行機は失速しにくくなります――そしてエンジンのセットをあまり前後に重ねなくて良いので冷却しやすく、水冷にする必要が少なく、液漏れの心配も少なく被弾に強いです」
「利点多すぎだろ・・・」
オックスさんが若干、唖然とした。
飛行機のエンジンはプロペラの回転の風を取り込む事で冷やすから、今回作ろうとしている機体なら、星型エンジンを使えば十分冷える。
ちなみにエンジンの大部分は高シリカのジュラルミン。
軽いから回転も早いし、簡単に冷える。
ただ・・・・、本気で速度勝負するなら、V型の方が良い。
大戦でも途中、星形エンジンが多く開発されたけど、最終的にはV字エンジンに先祖返りしていった。
冷却問題さえクリアすれば、V型エンジンはプロペラから生まれるパワーを冷却で奪わないし、空力も正面の面積が広い星型エンジンだと速度が出ない。
だから本気で速度やパワーを出すなら、V型にすべき。
ただ、周囲が海の日本では、信頼性の高い星型エンジンが好まれたんだよね。陸と違って海で不時着って、イコール死に近いからね。
❝久々の早口。――しかしよくもまぁ、あんなにペラペラとエンジンの解説できるな。なんなのあのJKワロw❞
するとリッカが、腕を組んで言う。
「なるほど、実にエレガントだな。――なんもわからんけどな」
「わからないのに、エレガントとか言ってたの!?」
思わずツッコミを入れて、クリエイトパーチャーの画面にエンジンの設計を打ち込んで・・・・召喚!
1日でエンジンが出来上がった。




