613 探索を開始します
するとアレックスさんが近寄ってきた。アレックスさんは相変わらず私をTACネームで呼んでくる。
「クール、このコートは日本に売ってたのか?」
「です」
「俺は嫌いじゃないが、ジャパニーズよ、どういう了見だ。なぜアメリカ国旗カラーのコートを売っている」
アメリカ国旗な配色のド派でなコートに困惑してた。
なんかそういうの結構売ってるんですよ、ジャパニーズ。
エレノアさんがコートを纏ってくるりと回る。
「Msスウ、素敵なコートを有難うございます!」
「いえいえ。せっかくなんで、一番時間を掛けて選んでみました」
マイルズが憮然とする。
「お前スウこれ、エレノアの一着だけかなりのブランド物だろ」
「フヒヒ、サーセン」
母の日のプレゼント代わりです。
という感じで物資を配り終えて、雪原でクリエイト・パーチャーを探しての探索開始。
主に〖飛行〗をもっているUSSFの一部の人とクレイジーギークスの任務になりました。
二人一組のツーマンセル。
私のバディはリイム。
自衛隊員さんは、後続のプレイヤー達が増えてきているので、拠点の拡張に回ることになりました。
私は一面の銀世界を、羅針盤を持って飛ぶ。凍らないように液体はアルコールです。簡単に割れないように、厚めのホウケイ酸ガラスで技術班さんが作ってくれました。
リッカと綺怜くんとリあンさんが、ホウケイに反応して小学生みたいになってました――・・・・あの人間どもは。
――アリスはリッカと飛んでいった。
今回はリイムの目が、非常に活躍する予定。
干物の食料を作ろうと、マリさんがカマクラの中を探ってた。
あの人、公報官だから銃の腕は凄いけど、実は体力があまりないらしい。
釣ったホッケが凍っていたので、「これがほんとのアイスホッケ」とかほざいているマリさんを尻目に、リイムと出発。
――でも、三時間くらい飛んでも山くらいしか見つからなかったので、恒星が頂点にきたところで、岩陰に毛皮の敷物をしいてリイムとお弁当にした。
出発前、私は銅でお弁当箱を作ろうとしたんだけど、「寒い環境なので、金属のお弁当箱は危険ですよ」と自衛隊員さんに言われ、納得。
すると自衛隊員の給仕の方がでっかい葉っぱ――バナナの葉っぱ? で、ナンのサンドイッチを包んでくれました。
というわけで昼食は、ナンのサンドイッチ。――見た目はサンドイッチというかタコスみたい。
私がリイムが食べやすいようにサンドイッチを持ち上げると、彼はそれを啄む。
「コケー!(ママっ、これ美味しいね!)」
「うんうん、おいしいね~」
リイムは、フルーツサンドイッチがお気に入りみたい。
私はやっぱりお肉かなあ。保存用のジャーキーと謎の葉野菜を挟んで自衛隊特製だというソースを掛けたものが、これまた美味しい。
なんかソースがサルサソースに似てるし、タコスと言い張っても許されそう。
私はダンジョンをクリアして、成長せし運動神経で、サルサのリズムを腕で刻んでみた。
「コケ?(ママ、急に駄々っ子になってどうしたの?)」
相変わらず、駄々っ子ダンスだったようである。
「干物のサンドイッチもあるのかぁ」
ホッケのサンドイッチが出てきた。まぁ、ジャーキーのサンドイッチという感じで不味くはなかった。こんな銀世界だと、食料貴重だもんねぇ。
という感じでお腹を満たし、探索再開。さらに一時間ほど飛んだ所で、リイムが何かを見つけた。
「ママ、あそこになんか黒い水たまりがある」
「黒い水たまり?」
リイムの視力は私の何倍もあるので、私にはまだ視えない。
リイムに先行してもらい、案内に従って飛ぶと、確かに岩肌に黒い水たまりがあって泡立っているのが視えた。
あれって――まさか。
私達が降り立つと、充満するガソリンスタンドで嗅ぐような匂い。
「石油だ!」
私はすぐさま地図に場所を描き込んで、拠点に戻る。
途中、目印になる鉄柱を幾つも作って、ぶっ刺しながら。
鉄柱は高所から落下させれば、簡単に地面に刺さった。
しかし石油があるということは、この惑星で、かなりの生命活動があったってことなのか。
うーん、アイリスの有情? 地球再現?
拠点に着いて説明すると、ヴィックが目を見開いた。
「――せ、石油が見つかった!?」
「はい!」
「なんてこった、スウくんがとうとうオイルマネーまで手にしてしまうのか」
「―――あれ・・・・? そういう話になるんですか? ここからじゃ地球への運搬とか大変そうですけども」
柏木一佐が頷く。
「関税も凄いしな――しかし日本に輸出すれば、国庫も潤うなぁ。防衛費が増えると助かるんだが」
「なんか話が、私の想像の埒外に飛んでますが、これで飛行機や戦車を動かす時の燃料は確保できましたね」
「なるほど、確かにそうだ」
柏木一佐がポンと、手を打った。こっちが最優先じゃないの? とおもったけど・・・・やっぱ、そっち優先なんだ? 柏木さんは日本の守護者なんだなぁ。
私は石油を精製するタンクの絵を描く。
飛行機の燃料は、安全な軽油と灯油の中間くらいの油を使うのが一般的。正確にはケロシン。
ただ、昔のエンジンにはガソリンを使ってた。
「確か原油って、熱すると沸点で分離してガス、軽油、ナフサ、ガソリン、重油、アスファルトとかに分かれるんでしたっけ? ――で、段層ごとに、傘みたいなので下から受けて、温度ごとにタンクに貯めていく――蒸留、液化、蒸留、液化を繰り返していく」
「ですね」
技術班の人が頷くと、ヴィックが呆れた。
「スウ君は、本当に何でもよく知ってるなあ」
いえ、『何でもは、知らない』です。




