581 荒れ狂う海に飛び出します
というわけで、すわ一大事! いざ鎌倉! と駆けつけた甲板では、凄まじい嵐。
私たちは〖飛行〗があるから少々海に転落しても問題ないけど、他の皆さんはやばそう。
激しい雨で前がみえないし、山みたいになった波が押し寄せる。
あっ、リイムが吹っ飛んだ! 彼は飛べるけど、一回海に落ちたら不味い!!
私は〖念動力〗でリイムを捕まえる。
「コ、コケ・・・。コケ・・・?(マ、ママありがとう・・・。リイム海に落ちたら死んじゃう・・・?)」
(可能性があるから、船室にいて)
「コ、コケ。コケ(う、うん。ママは?)」
(ママは、嵐の原因らしい、あの2匹をぶっ飛ばしてくる!)
「コケェ・・・コケコ(流石ママ・・・本気になったら怖い)」
風のジンと、雷のジンとでも言えば良いのだろうか。
風をまとった水色肌の巨人と、雷をまとったオレンジ色の肌の巨人が空に浮いていた。
『フハハハ!! 戸惑え、怯えろ、ひれ伏せ人間ども!』
『我ら自然を操る神の如き存在の前に、貴様らは濁流に溺れる木の葉の如し!』
『逃げ惑うネズミに等しい!』
ごめん、誰一人戸惑ってないし、怯えてない。
こちとら、米軍と自衛隊だぞ。
『データ送信、コードネームHUJINが起こしている台風の大気圧947ヘクトパスカル!! 風速は最大40メートルを超えると予想!! また、コードネームRAIJINが放つ雷撃は2種、ノーモーションの天空からからの落雷――自然の物に近く、イオンの変化を観測。もう一つ、指先から放つ電撃は対象を指をさす必要あり!!』
ノーモーションの雷攻撃があるのか。
私は側にあった、ガラスの瓶を拾い上げる。ピクルス瓶だ。
――コルクの蓋か・・・よし、これなら行ける・・・!
側に浮いていた割り箸も拾っておく。
私は甲板に出ている人々を、銅のドームで覆う。
「うおっ」
「なんだ、これは!!」
自衛隊の方々が焦ってる。
「避雷針ドームです!! その中にいれば雷は安全です――風がキツイので下面を非常に重く作っています!!」
「だ、だが、これではこちらが攻撃できない! 風速40メートル超えといえば、この木製フリゲート艦が耐えられるギリギリだ! 早く嵐を止ませないと、船が転覆しかねない! 攻撃できるように、穴を開けてくれ!!」
「駄目です!! 雷が落ちたら、穴からアーク放電が放たれます!! 感電死します!!」
「そ、そうなのか・・・・じゃあ・・・どうすれば」
「私が雷神を片付けてきます。ちょっとまってください! できうるなら艦内に避難してて下さい!!」
「なに!? 君一人で行くつもりか!? ――やめたまえ!! 危険すぎる!!」
「リイム!!」
私は船の奥に戻ろうとするリイムの尻尾を、〖念動力〗で握って引き寄せる。
「コケーーー!!(いたーーーい!)」
私は銅の器を作って、瓶の中のピクルスを入れる。――瓶を使いたいけど、ピクルスを捨てるのは勿体ないから。
「コケ・・・コケェ(ママなにするのぉ・・・痛いよぉ)」
「ごめんね、ごめんね」
コルクと瓶と割り箸を〖洗う〗で奇麗に、さらにパイロキネシスで乾燥。二本の割り箸をコルクにぶっ刺して、自分の服の裾を破いて、ほぐして糸を3本入手。
糸1本を、片方の割り箸(瓶の中に入る側)に結び、
「ごめん、リイムちょっと羽頂戴!!」
私はリイムの羽を1枚、引き抜く。
「コケーーー!!(いたーーーい!)」
リイム涙目。
「コケコ・・・コケェ・・・!(ママ本当になにするのぉ・・・痛いよぉ・・・!)」
「本当にごめん、後でお菓子焼いてあげるから!!」
「コエッ!(わーい)」
私はさらに、上部に穴の空いた薄い薄い銅板を2枚作ると、2本の糸に結んで、羽につるした。
あとは、もう一本の棒に、大きな重りのついた太めの長い銅線の端を巻いた――これは、海に沈めてアースにする。
そうして瓶の中を甲板で大洪水になっている海水で満たし、コルクの蓋を締めた。
瓶の中では、羽と銅板が海水のなかで――と言っても上方に集まってるけど。浮いている。
「リイム、この中の海水を〖アポート〗して!!」
海水を全部〖アポート〗してもらえば真空になる。真空にしなくても使えるけど、真空なら感度は一気に上る!
「コケッ(お菓子なにかなぁ。〖アポート〗)」
よしできた。コルクで蓋した瓶。コルクに2本棒をさして、片方に瓶の中で棒にぶら下がった羽と、羽にぶら下がった薄い銅板2枚。
薄い銅板2枚は重なっていて、イオンの変化があったら検知して開く。
「箔検電器!!」
私は検知器を濡らさないように、〖念動力〗の膜で覆って。
「〖触手〗〖透視〗」
一応全身を黒体である〖触手〗で覆い、〖透視〗で外を見る。
検知器も見える。
「〖飛行〗!!」
私は、波のたうつ、大海原の上空へ飛び出した。




