579 かぼちゃは炊くと甘くなります
出発した次の日、お食事の時間。この船、食堂もあるし、自室でも食べられる。だけど、海大好きっ子の私は甲板で食べることにした。
個人用の折りたたみ机(自作)を甲板の端っこに置いて、ハムサンドイッチを食むる。
さっきまで私とご飯を一緒に食べていたアリスとみずきは、楓ちゃんと一緒に食後の運動に木刀(彼女たちの自作)を振っている。
私、食べるの遅いのよ。
「リイム、はい」
「コケッ」
リイムの分も食べさせてあげてる。食べやすいようにリイムの分はホットドッグ(パンの真ん中に穴を開けてケチャップとマスタードを入れたあと、ソーセージ投入)。
――ちなみにこの船ソーセージがメイン食っぽい。イノシシいっぱいいたし、ソーセージはとっても良い保存食だもんなぁ。
私が汗を輝かす美少女達(ちゃんとお風呂もあるよ。普通の船旅なら水は貴重なんだけど、ほら、ウチには頼めば水が出てくる子がいるしさ――自衛隊の方にも〖水作成〗持ちさんがいるらしい。海上自衛隊の方なんだとか)。
ちなみにリあンさんに「〖温泉〗しちゃだめだぞ?」って言われた。船に穴あくのかな?
あれ? じゃあ〖温泉〗って生き物にやったら、対象がこそげるのかな? ――そんな事なかった。というか土の地面にしか使えなかった。
そんな訳で、爽やかに汗を流す美少女達を眺めていると、USSFの人の多い机の方から英語が聴こえて来た――同じ席に、自衛隊員も数人いるようだ。
「(以下、英語)フェレディの奴が時計がないなら、『月で時間を計算してやる! 膨大な計算だって私の頭脳なら!』って意気込んでみたらさ、そうさ! この惑星、月がなかったんだよ! そしたらアイツ、『月がないなんて、運の尽きだー!』って嘆いてるからさ、俺はヤツの肩を叩いて、『いいことじゃねぇか!』って笑ったんだ。フレディは返したよ。『どこが!!』って。だから俺は言ってやったんだ――」
緊張の間。
「――『月がないなら、今月の締め切りもない!』ってな!」
「「「HAHAHA!」」」
なんか、アメリカンジョークが始まってる。
「フレディーは『そりゃそうだ!』って言って、俺と笑っていた。――そしたら、それを聴いていたヴィクター大佐だ。彼はヒデェ奴だ。なんて言ったと思う? ――」
ここでまた、緊張の間。
「『じゃあ、今月分の給料も、払わなくていいな』だってよ!」
「Oh my god」
「Jesus」
近くで、ヴィックが菩薩みたいな顔になってるんですがそれは。
菩るヴィックが、ATフィールドの掛かった、私のパーソナルスペース(半径10メートル『つーか、これが限界』)に、簡単に入ってくる。アルカイックな表情のまま。
「いやぁスウ君、ありがとう。時計に関しては、本当に困り果てていたんだ。まさか3億も支出して人を雇うとは」
「いえいえ」
「あの時計、完璧だね。丸一日経ってもどの時計もシンクロしている――まるでクォーツ時計だ」
「ジュウゾウさんに言っておきます」
「それだ・・・! 君から、あの素晴らしいクロノスメーターを作ったChronoMasterを紹介してくれないか?」
「あー。了解です――紹介したら、私はすぐに立ち去りますが」
「ははは・・・・君らしい」
というわけで、食事の後にヴィックの部屋にジュウゾウさんに連れて行き――ちなみにこの艦の艦長は柏木さん。
艦長は、ヴィックが固辞したらしい。
「戦闘を行う船の艦長は、パイロット経験が有る方が良い」とのこと。
なるほど。
――そしてヴィックは続けたらしい。
「ただ、提督はやらせて頂くけどね」
その狡猾さ、間違いない『紛れもなくヤツ』だ。
というわけで、ヴィックの提督室。ドアをノック。ちゃんと重厚。
「どうぞ」
言われて、入れば、すぐさま大きな星条旗。丸い窓の上に掲げられている。
アメリカの軍人さんはこうでなくっちゃね。
ヴィック、ジュウゾウさんを見て歓喜。
「おおっ、貴方がChronoMasterジュウゾウか!」
「くろの――なんじゃ?」
ジュウゾウさんが首を傾げたので、
「〝時を極めし者〟って意味だと思います」
「ふむ・・・・如何にも! クロノマスター・ジュウゾウじゃ!」
「会いたかった!」
2人がガッチリ握手。ヴィックがハンドシェイクしながら尋ねる。
「ヒゲゼンマイでアレほど精巧な時計を作れる秘密はなんなのか、訊いても?」
「もちろん」
「じゃあ寛いでくれ、とびきりのを開けよう!」
とびきりの? ――お酒のことかな?
この環境で、そんないいお酒を作ったんだ? 葡萄とか見つけられなかったけど。まあ、糖があればお酒は作れるから、芋でも、キビでも、果物でも、ねこじゃらしでも作れるか。あっ、かぼちゃでも! ――かぼちゃは糖分が多いから発酵させてお酒ができる。
古き善きアニメのタイトルと同じお酒、かぼちゃワイン(アメリカ)も存在するんだよ! これにてタイトル回収。




