575 裏事情を聞きます
USSFと航空宇宙自衛隊は、現在共同キャンプを展開しているらしい。つよい。
銃一辺倒かと思ってたマリさんもコンパウンドボウを持っているんで、私は少し驚く。確かにコンパウンドボウは下手な弾丸より貫通力があったりするし、銃より有利な場面はあるけど、マリさんが弓かぁ。
「マリさん、銃だけじゃなくて、弓も行けるんですか?」
「行けるよぉ」
言いながらマリさんが空を見た。そうしてコンパウンドボウを引き絞ると、上へ向けて発射。
しばらくすると「ドシャ」っと空からカモメが落ちてきた。
「はい、夕食」
マリさんが私にカモメをくれる。
カモメって、食べたこと無いなあ。
とりあえず私は怯えた笑いで受け取って、近くのヤシの木に鉄の針金で縛って、血抜き。
マイルズが「むっ!?」っと唸った。
「ペンを振って鉄の針金を出したか。・・・・そういえばスウは土魔術が使えたんだったな――それなら随分チートしただろう」
そんなマイルズの言葉に、近くでニワトリの風見鶏を作っていたオックスさんが大笑い。リイムにつつかれている。あれはリイムが「ぷりぷり」すること言ったな?(笑)
「ほら、リイムだぞ」とか。
「そりゃもう、チートなんてレベルじゃ無かったぞ、初日から鉄器時代なんだから」
マイルズが風車を見て、「クックック」と、忍び笑い。
「ボクは火属性だからな、あまりチートはできなかった――鉄を簡単に溶かせたくらいだ。――しかし、」
マイルズが、巨大な3機の風車を見上げた。
「発電か。単位決めだけかと思っていたらな。――発電までしてるのはボク達のような軍隊だけかと思っていた。――スウのチートぶりが目に浮かぶようだ」
マイルズの忍び笑いにマリさんが頷く。
「シードラゴンの時もだよ。ぼく等、飛行船で海峡を渡ったんだけれど、後続の為に『シードランゴンはぼく等本職がなんとかしないといけない!』ってテントに集まってスキルも無しで、戦術的にどうやって攻略するかと作戦会議をすることになったんだ。で、緊張感あるテントに入ったら、クレイジーギークスが倒しちゃったって報告が来るんだもん(笑) ――ヴィクター大佐と柏木一佐が、机の前で一緒にズッコケてたよ」
「あれは傑作だった。張り詰めた空気の中、書類を移動しようとした二人が大股で盛大にすてーんと転んで、テントは爆笑だったからな」
桟橋で聞いた飛行船で海峡を渡ったグループって自衛隊とUSSFだったのか・・・。まぁそうだよね。
USSFは基本的に、情報戦を担当する頭脳集団らしいし。マイルズみたいに戦闘を行うメンバーは珍しいらしい。
ちなみに、後でどうやって飛行船を浮かせたんだろうと思って聞いたら、水を電気分解して、水素を作って飛んだんだとか。
ただ、海峡を5周して5回目の着陸の時に、静電気で炎上したらしい。でもそこは自衛隊とUSSF、五点着地とかで全員生存。恐ろしい。
さらにちなみに「分解用の電気はどうしたの?」って聞いてみた。
東の大陸で、もう発電とか電池とか流石って思って聞いたんだよね。電池なら銅からマンガン抽出は大変だし、マンガンクラスターですら相当深く潜らないとだめなのに、水圧も80気圧とかなりそう。――元海の塩湖にあったのかな?
私「電気分解に使った電気はどうしたんですか? 発電所作ったんですか――それとも塩水電池とかですか? 塩水電池じゃ、パワーが足りないかな・・・・それともマンガン電池とかですか?」
マリさん「筋肉電池」
マリさんが「レンジャー」って叫びながら自転車を漕ぐような仕草をした。
私は「レンジャー」と叫びながら何時間も自転車型発電機を漕ぐマッチョメンたちを想像して、私はこれを聞いた時、白目を剥くことになる。
閑話休題。
マリさんが柏木大佐の真似をする。
マリさんby柏木大佐は、頭を抑えて苦笑い。
「『さ、流石スウさん達だ(苦笑)。サバイバルなら我々こそと思っていたが、まさかココでも彼らの名前を聴くことなるとは、しかも先を越されるとは思わなかった』」
なんて言って、マリさんがお腹を抱えて笑った。
「で、航海に必要な情報をどんどん決めていってるって言うじゃん。なんか地軸の角度とか惑星の円周まで割り出しちゃったんだって?」
「ま、まあ」
するとマイルズが肩を竦めた。
「その辺りはボク等USSFの十八番だったのにな、ウチの技術屋のフレディが悔しがっていたぞ『私が決めたかった!』って――ウチは地球にあわせて360度で区切っていてな」
「えっ、どうやったの!? 無理なんじゃ・・・」
「数学的にはな。だが、六分割、五分割、三分割、二分割で、」
「あっ、あーーーっ! ――そっか! 分度器の弧の長さに合わせた紐を分割すればいいんだ! 六角形、五角形、平行線、これで90等分! 後は普通に分割すればいいのか!」
「よく気づいたな。お前は、数学的に作図不可能だと訊いてそう思い込んでいたんだろうが、そういう場合は一旦その世界から取り出して、別の世界で操作してやれば良い」
「な・・・なるほど・・・」
「ポアンカレ予想もそうだな。同じ発想で解かれた」
「えっ、そうなの!?」
「トポロジーだけでは分類できない。そこで幾何学の世界へ移す――さらに解析学の世界で調べ、最後にトポロジーの世界に戻す。今のお前の気付きは、本質的に同型の発想だ。よく、あの短時間で思いついたな」
「・・・おお」
「――ちなみにポアンカレ予想の解法を見た数学者は愕然としたらしいぞ、『解かれた! なのに自分の分野じゃないから、意味がわからない!』とな、」
マイルズが、くっくっと忍び笑いをした。
「とまぁ360度分度器を作れたはいいが、ボク達は船造りや蒸気機関に手間取ってな。そうこうしている間にお前が、簡単な方法でサクっと標準時などを作って配信で広めてしまったものだから、ウチのやり方は破棄になった」
マイルズが思い出し笑いをした。
「いや、私はそんなつもりじゃ・・・自分だけが使うつもりで・・・・」
私がおろおろしてると、マリさんが近くの岩に掛けてあるオックスさんの槍を指さす。
「そこに掛けてる槍の先とか鋼だし。鋼の武器とか持ってるのは、私達だけだと思ってたよ」
マリさんは言って、腰に刺した皮の鞘に入ったナイフを叩いた。
やっぱ鋼なんだ?
流石に軍隊の人達だし『当たり前だよね・・・』とか思っていると、マイルズが尋ねてくる。
「鋼は合金だ、出せないだろう? 鉄を溶かしたのか?」
「うん。ある程度」
マイルズに尋ねられて、私は頷いた。
しかし私の後ろで、物珍しそうに私達の拠点を眺めていたエレノアさんが、ふと静かな調子で二人に言う。
「いや、中尉、曹長、Msスウをよく見て下さい――それどころじゃないですよ・・・・」
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