571 いざないます
というわけで一旦、地球へ戻る。
で、戻って待ち合わせの羽田空港に来たんだけど。
「警視庁警備部の鷹野と申します」
えーーー!?
貫禄のある感じの男性が、チラっと警察手帳を内ポケットから一瞬見せて仕舞う。
「成形炸薬弾を作られたとか。――というか機関銃を作る技術もお持ちだとか、80層のボスは戦車や、戦闘機で相手するんでしたっけ?」
「ま、まあそうですけど」
「製造方法はご存知で?」
「えっと、いえす・・・・」
「鈴咲さん、ボディチェックしても?」
「は、はひ」
体中をパンパンと叩かれる。
「大丈夫そうですね――〈時空倉庫の鍵〉というのは?」
「い、今は身につけてますが、80層には持ち込めないですよ」
「中身を見せてもらっても?」
「いえす」
乙女の秘密を覗き込む鷹野さん。
「こっちはFL製の武器ですね。あとは冷蔵庫に駄菓子に――まあ、こっちはいいとして――で、こっちはプラモデル・・・?」
「ええ・・・まぁ」
「なるほど。このプラスチックからTNTを作ったりは?」
「そんな奇っ怪な方法は知らんです」
「最後に――」
鷹野さんがなんか機械を取り出す。金属探知機となんだろう?。
「金属反応は、大丈夫そうだ――爆発物は微量に探知されてるが・・・ああ、残留か」
「向こうで散々作ってますんで」
「――ですね。存じております。鈴咲さんこの一件は既に上に処理されているので、これ以上は問題にはならないでしょう。貴女は日本国からも、同盟国などからも随分信頼されている――むしろ技術者として雇いたい程らしい。アンタの活躍、期待しながら、これからも配信を見させて頂きます」
「ども」
とりあえず鷹野さんは帰ってった。
ふー。とにかく今は時計職人さんだ!
◆◇◆◇◆
というわけで10分ほど待っていると、件の人がやってきた。
「えっと、貴方が、時計職人さんですか?」
「まあ、そうなんじゃが・・・・こんな老体でも大丈夫か?」
「むしろ腕が信用できそうで、ありがたいです!」
見た瞬間の第一印象、ドワーフだった。
彼なら間違いないと、一瞬で分かった。
ちなみに紹介してくれた人は、線の細い男性だった。印象はエルフ? 実はドワーフさんのお孫さんらしい。
よし時間が無い。ドワーフさんを、急いで強化させて頂こう。
「ではまずは、VRで、現実の12倍速の世界で初心者クエスト対策を憶えて貰います!」
私の言葉にドワーフさん、目をぱちくり。
「えっ、12倍速・・・・え?」
「老人虐待じゃー!!」
「行けます! まだ行けます!! 警告ブザーも鳴っていません!!」
「し、死ぬ・・・誰か、この修羅をなんとかしてくれ!!」「VRスイッチ・オン!」「やめ――」
こうしてドワーフさんは初心者クエストを12時間でクリア。私に次いで第二位の成果らしいけど、そんなことはどうでもいい。
「ストライダーIDは何にしましたか?」
「ホギャギャギャ。トトキ・ジュウゾウじゃ」
「あれ? もしかして、苗字が十時さんなんですか?」
確か、十時さんって、九州の立花の御殿様の家臣じゃなかったっけ?
にしても苗字に時が入ってるなんて、まさに時計に愛されてる。
こうして、宇宙の果ての惑星にご案内。
そして新しい時間を説明する。
「まてまてまて、一日32時間!? 1時間は何分じゃ!! 1分は何秒じゃ!! ギア比がわからんぞ!!」
「1時間は64分、1分は64秒、1秒は、光がこの惑星を8周する時間です! ギア比は16、64、64!」
ちなみに緯度が簡単に求まるようになったので、距離と角度から惑星の円周も分かった。
この惑星の直径は、ほぼほぼ40000キロぴったりだった。端数は誤差程度。
それまで目を釣り上がらせていたジュウゾウさんが、ふと目を輝かせる。
「16、64、64――美しいギア比じゃ・・・・。――じゃのうて! ・・・・うーん。しかし、本当に美しいのぅ」
あ、なんかジュウゾウさんが、ちょっと感動してる。
「しかし、まずは基準の時計を作らんといかんのう。振り子の一周を1秒に合わせた物を作る必要がある――重力も違うんじゃろう?」
「ですね。――でも計算は終えています。だいたい27センチの長さの振り子の往復で、1秒になります」
ちなみに振り子のリズムに、重さはほぼ関係ない。関係あるのは長さだけ。
「まじか・・・」
ジュウゾウさんが俯いて、なにかブツブツ言い出す。
そうして、つぶやきも消え――しばしの静寂。次に挙げられた顔は、まさに匠だった――まるで、歴戦の戦士だった。
「いいじゃろう! この十時 十造! 60年の研鑽にかけて、嬢ちゃんの言う時計を作ってみせよう!! ――ところで道具はどうするんじゃ? 細かいパーツを扱うには細かい道具が必要じゃぞ」
「いえ、小ささより、正確さにこだわって頂きたいです」
「なるほど・・・」
「道具は私が作ります」
私が言ったところで、プリティ・ギルティさんの声が聞こえた。
「あっ、スウちゃーん集めといたよ~」
「あっ、プリティ・ギルティさん!」
「元・共同体メンバーにも声をかけて、集めたけど、こんな石が欲しいの?」
「おおっ、完璧です!!」
プリティ・ギルティさんが白い石を持ってきてくれた。
一部が青いのや、赤いのも混じってる。
「これなんなの?」
「コランダムです」
「コランダム?」
「あと、コッチの青いのが、サファイア」
「え!?」
「こっちの赤いのが、ルビー」
「はいい!?」
「これを、グラインダーの先っぽにします」
「おーっ、嬢ちゃん話が早いのう!」
「ちょっとまって、ルビーとサファイア!? 頂戴よ!!」
そういえばプリティ・ギルティさんは、宝石大好きっ子だった。
「ま、まあ・・・・じゃあこの大きめの青いのを」
「いや青いの赤いの全部頂戴よ!?」
「それは困るかもです・・・・プリティ・ギルティさんが、拾ったやつなら・・・」
「くっ、私は白いのばっかよ・・・・」
「じゃあこの大きめの青いのだけで我慢してください。――基本白い、ただのコランダムから使っていきますので、ルビーとサファイアの分は拾った方に返すか、使った分はお金に変換してから、料金を支払わせて頂きます」
ちなみにアリスがガッツリ大きめのルビーを拾ってたけど、私の支払いは、断られた。
「スウさんの役に立ったならいいんですよ」だって、本当にいいのかなぁ。数百万はするサイズだったんだけど。
というかその時、サファイアのペンダントを作ってて私に渡してきた。拾ったんだって。
あの子、自分が拾ってる石が何か分かってて、私にでっかいルビーをグラインダー用に寄越したんだなぁ。時計作るって言った後にコランダム集めだし、グラインダーを作るってわかってただろうし・・・。
「むー・・・まあ・・・それが正しいかぁ。いいなぁルビーと、サファイア」
「んー、ほとんどのルビーとサファイアが白い部分が多いので、大したサイズの宝石は採れないと思いますけれど」
「そっかぁ」




