570 北緯を測ります
とりあえずこれで、0度と新基準の256度(地球の180度)ができた。
そしたら、線が円と交差している場所の片方からコンパスを伸ばして、弧を描く。さらに逆側の線が円に交差している場所からコンパスを伸ばして弧を描く。
弧がクロスした場所とコンパスの穴を通して、糸を張って、また弾く。
これで64度と、128度ができた。
「なんだか端数が多いですが、現代人の私たちには見慣れた数字ばかりなんで、この分割方法も悪くないですね」
「だね。むしろ脳が奇麗だと言ってるのが、笑える」
「そうかー? 10刻みがいいぞー」
「リッカはアナログですねぇ」
「なんだとー」
こうして分割を繰り返していくと――512度分度器ができた。
「ややこしいから新をつけよう、かな――512新度とか」
「スウ度でいいんじゃないですか?」
「良くない」
❝スウ度だ、スウ度だ!❞
❝北緯スウ度、東経スウ度!❞
「とても名誉なことじゃないですか」
「・・・・もう、どうにでもして」
まあ、名誉なのかなぁ? ――私だけが使うつもりの単位だったんだけど。
で、これは保存用。
もう一個作って、3分の1にする。これが六分儀の本体なんだ。
六分儀っていうのは、分度器に角度を調べやすいように色々装着した物っていうのが、正体。
天体の角度を調べる道具だからね。
分度器以外は、あくまで付属品。
付属品その1、まずは棒。これを分度器をくっつける。この棒が、分度器の上で動いて角度を指し示す。
で、この棒には天辺に鏡が付いていて、これで目標の天体を真ん中に捉えれば、角度がわかるってわけ。
ただし、今のままでは鏡は天体を映すため、天体の方向を向いているので、観測者の人間の目に映らない。
そこでもう一枚鏡を用意して、あわせ鏡にして、観測者はもう一の枚の鏡で天体を見る。
このとき、観測者は分度器を水平にかまえていないと、正しい角度がわからないから、六分儀に付いている望遠鏡――今回は大きくなりすぎた――から、水平線を真ん中に捉える。――水平線は常に変わらぬ、水平。(今回は、鏡の横のガラス部分は省略した)
そうして棒を動かし、目標の天体が水平線と同じたかさに来たら、それがその天体の角度だ。
さて、今は望遠鏡が大きくなりすぎたんで、台座に乗せて、2人で使う必要がある――私はそうでもないけど。
私は台座に置かれた六分儀の望遠鏡の真ん中に水平線を捉えながら、〖念動力〗で棒を動かして北極星を探す。
「あった――昼間でも余裕で見えるね。これを、棒を動かして、水平線に揃えて・・・・と」
揃ったら、分度器の目盛りを見れば・・・おおよそ7度
「・・・・512の7度だから」
❝7スウ度か❞
「まあ、そうですね。――よし、360度でいえばおおよそ5度だね」
現在の位置は北緯7スウ度(達観)。地球で言えばおおよそ5度だ。
次は望遠鏡をどこまで小型化していいか調べよう。
幸い、分割して組み合わせ直せるように作ってあるし。
「さて、〖触手〗」
「どうしたんですか急に?」
「でたなクトゥルフのスキル」
❝なんじゃなんじゃ?❞
❝どしたどした❞
「この〖触手〗は黒体なんだよ」
「らしいですね」
私は6本の〖触手〗で、筒を作る。そうして残り2つでレンズを掴んで固定した。
「黒体ってことは、熱エネルギーを吸収するんだよそうして光もまた熱エネルギー――ベンタブラックよりも完璧に光を吸収する」
「あっ!」
「見える・・・見えるわ、ほら」
アリスとリッカにも見せてみる。
アリスがショボーンとなる。
「この望遠鏡の意味」
「まあ・・・〖触手〗望遠鏡は、ほぼ私専用なんで。そっちは六分儀用」
「なるほど・・・」
リッカが尋ねてくる。
「ティタティーは? ――黒体の望遠鏡作れそうだけど」
「アイビーさんによると、今セーラ様の命令で大冒険中らしい。謎の特機が作った組織、『殻冥軍』の居城を目指して、仲間の機神持ち達と冒険中だってさ」
「なにそれ、面白そう」
「さあ、いよいよ時計なんだけど・・・・こればっかりはなぁ、手先の問題だからなぁ・・・」
「スウちゃん!」
「あっ、プリティー・ギルティーさん!」
うわー、私の着たいゴスロリだぁ。あんな胆力が欲しい。
「お困りですかな?」
「お困りです~。お手上げです~」
「ふっふっふ。スウちゃんさ、昔言ったよね?」
「えっ」
「視聴者さんと協力して100層を目指すって」
「あ・・・はい」
命理ちゃんとであった頃だ。懐かしい・・・・すごく前に感じる。
「じゃあ聴いてみたら? 視聴者に、――『時計を工作できる自信の有る方、いませんか?』って」
私は、目からウロコが落下した気がした。
「あーっ!! その手がありました!! 早速、配信を始めます!!」
「ふっふっふ~。お姉さんは伊達じゃないのだよ。いやまぁ共同体のメンバーに時計職人とかいないか探したんだけど、いなくてさ。――唸ってたら『ああっ、スウちゃんならリスナーメチャクチャ多いじゃん! 聞けばいいじゃん!』って」
「なるほどです! ありがとうございます!!」
❝知り合いにいるなぁ、時計職人――プレイヤーじゃないけど❞
「プレイヤーになって貰えませんか!!」
❝モデレイター(時計職人):いやーーー、今からプレイヤーになって、初心者クエストクリアして・・・ってなると❞
「私が、爆速で初心者クエストクリアさせます!」
❝モデレイター(時計職人):ひぃっ、モデレイターにされた! 時計職人は俺じゃねぇし!❞
❝ガチだ、スウたんが、本気で鬼になり始めてる❞
「じゃあ、地球に向かいますんで!」
❝モデレイター(時計職人):まてまてまて、まだあの人がOKするかどうか!❞
「三億円」
❝モデレイター(時計職人):えっ❞
「今回の時計製作、成功報酬です」
たしかジョン・ハリソンさんのクロノメーターを作った時の賞金が、この位だった筈。
❝モデレイター(時計職人):マジか・・・❞
「さらに1個1億で買い取ります」
❝モデレイター(時計職人):マ、マジかぁ・・・ちょっと連絡してみる❞
❝おいおいおい・・・とんでもないこといい出したぞ❞
❝俺行こうかな、時計とか作ったこと無いけど❞
❝やめれwww❞
❝モデレイター(時計職人):OKだって・・・・是非にって❞
しゃっ!
「じゃあ地球に急いで戻らないと」
私は転送陣に戻ろうとして、「ハタ」と思い出し、プリティ・ギルティさんを振り返る。
「あっ、プリティ・ギルティさん、探しておいて欲しいものがあるんです! クレイジーギークスのみんなに伝えておいてくれませんか?」
「えっ、なになに・・・・」




