569 決めます
乾いた布を、用意した竹筒の内側に、やはり膠で貼り付けていく。
で、内部加工の為にバラバラだった竹筒を組み合わせ、僅かな隙間を漆黒炭素を混ぜ込んだ漆黒ゴムで塞いで、レンズをはめ込んで漆黒ゴムで接着したら!
「できた! 望遠鏡!!」
バズーカみたいな長さの望遠鏡。
迷光(余計な光)を繊維の間に閉じ込めて、繊維の中に封じ込める――最早光の牢獄。極上級の迷光除去装置になった。
かなりのコントラストで空が見えるはず。
私は、望遠鏡で空を見る。ちなみにこれはもう、絶対太陽に向けちゃいけない。瞬く間に失明する。私は〖再生〗あるけど、ない人は本当に向けちゃいけないよ。
「おー流石バルジの中、・・・すごい数の星が昼間でも見える・・・・」
「マジですか」
「昼で、そんなに星が見えるのか?」
アリス、ビックリ。
リッカ、疑心。
「見てみる?」
私は、まずアリスに望遠鏡を渡す。
「見ていいのは北の空だけだよ。南に向くと太陽を見ちゃうかもだから」
「はい――あっ、あれが確か北極星では?」
「そうそう、見えるよね!」
「すごいです! 昼でも北極星が見えました!!」
リッカが、腰をひねって、歯を見せて笑顔でボディビルのポーズをする
「ナイスバルジ、バルジが切れてる」
❝マジかよ・・・・昼間に北極星みつけちゃったのかよ・・・・❞
「これで太陽赤緯は必要なくなったね。調べるけど。――というか調べたけど」
どうもこの星の傾きは約25度。地球とほとんど変わらない。
角度がそこそこあるので、四季折々がある惑星みたいだ。
かなり厳選されてテラフォーミングされたんだと思う。
「うおーーー本当に星が見える!!」
リッカも満足の出来でした。
「時計もだけど、もう一つの問題があるんだよね」
「時計以外に、まだ問題が有るんですか?」
私はアリスの「スウさんっ! お風呂、一緒にはーいりましょっ!」という言葉を、華麗にスルーして裸の代わりに、悩みを公開してみた。軽い調子で言えば、引っかかるとでも思うたか。
「目盛りのない物差しと、コンパスだけじゃ、360刻みの分度器が作れないんだよ」
「えっ、そうなんですか?」
アリスが、お風呂セットを机に置いてびっくり。
「目盛りを細かく分割していくこと自体は簡単なんだ――でも、360を分割するのに、3や5の奇数倍が出てくるせいで、1が作れない」
「あー・・・」
「どうしたものか・・・この惑星専用の分度器を作るか・・・・でも沢山の数で割り切れる都合のいい数って360以外あんまりないからなぁ」
「分割で奇麗に割り切りたいなら、256度とか、512度とかになるんでしょうか・・・・?」
「そうなると、時間も24じゃ256も512も割り切れないから、24以外にしないといけないけど、1日を32時間とかにする感じになるかな」
「1時間刻みで動いたら、せわしない一日になりそうですねぇ」
「惑星のサイズも公転時間も、自転時間も違う惑星で、地球の天文を用いた分割を使うのがそもそも無茶かなって思えてきた。――実際地球でも、もし一切の物差しや分度器の目盛りが消えたら・・・分度器を復活させるのは結構難しいんだよねぇ――近似値はあるんだけども。特にこんな、サバイバル状態じゃ、分度器の復活は、かなりしんどい」
「・・・・そうなんですか」
「でも512分割は、衛星地図のグリッド分けを単純に分割していけばいいから、悪い考えでもないかもしれない――時計の文字盤作りも簡単だし」
「なるほどです」
「よし・・・・この惑星の一日は、今日から32時間だ!」
アリスが拍手した。
というわけで分度器を作ろう。
「まずは真っ直ぐな線」
「どうやって作るんですか?」
「職人技で削るのか?」
リッカが発生した。
右にアリス、左にリッカで、私を挟むように作業台の椅子に座っている。
「方法は幾つかあるけど、水面や糸を垂らす方法かな。重力はほぼ均一に掛かってるからね――まあ、水面は僅かに丸みを帯びてたり、若干の重力の差があるかもしれない。糸は糸でテンションの差があるかもだけど」
というわけで私は、ほそーい糸(プレゼンツbyプリティ・ギルティさん)を垂らして、それを見ながら真っ直ぐな定規を魔術で出した。
「ほんとだ、真っ直ぐな物差しができました」
「おー、目盛りは?」
「目盛りはしんどいので無し。じゃあこの物差しとコンパス針と糸と漆黒インクでコンパスを分割していくよ」
まず私は、プリティ・ギルティさんがくれた流木を、コンパスで円を描いて切って、削る。
削るのは自転車グラインダーだ。アリスとリッカに順番に漕いでもらって、私が削る。
で、円形になったら、コンパスの開けた穴に定規を当てて直線を――。
「まてよ・・・?」
「どうしたんですか?」
「いや、幾ら真っ直ぐな定規でも手で描いたら限界があるなって」
「どうするんだ?」
私はさっきのプレゼンツbyプリティ・ギルティさんの糸をインクに浸して、分度器の上で、コンパスの穴の上を通るようにピンと張って、指で引っ張って弾いた。
「あっ!」
「凄い真っ直ぐな線が引けた!」
アリスとリッカが、歓声を挙げた。
「これ、いいかも!」




