48 初めて生産機能を使います
❝つまり、オフ会!?❞
❝狂陰のスウが、オフ会で教えてくれんの!?❞
❝絶ッッッ対参加するわ!!❞
❝最強プレイヤーとして名高い狂陰のスウの戦闘訓練とか、現・プレイヤーの俺も受けたいって!❞
❝教員のスウ爆誕?❞
❝スウって人、そんなに強いの?❞
❝ばっきゃろう! ヤツこそ最強ぞ❞
❝女の子なのに最強なの?❞
❝Miss Sū!! please, please let my men into that boot camp―――!!(ミス、スウ!! どうか、どうかお願いだ、私の部下をそのブートキャンプに参加させてくれ―――!!)❞
❝ジェームズ大佐いるじゃんw❞
❝アメリカ海兵隊さん、抜け駆けはいけないと言ったのは貴方ではないですか! スウさん、自衛隊からも貴方の新兵訓練への参加を打診します! どうかお許し願いたい!!❞
❝柏木 総一郎一佐まで出てきたワロw❞
「う゛ぇ゛!?」
私は思わず、へんな鳴き声を出してしまった。予想してなかった人たちが乗り気になってる。
いや、そういう趣旨でレクチャーするって言ったのでは無くて! ――いや、軍人さんに強くなって貰ったらもっと良いのかな・・・? ――違う、それ以前に私には、
「待って下さい、私に軍人さんを訓練するなんて――――!」
絶対無理。
そんなのウジ虫に蝶に変態しろってくらい、無理。
❝こちらオランダ空軍大佐です、どうか我々も訓練に参加させて欲しい!!❞
❝ドイツ連邦空軍大佐――❞
(なんでこの配信を観てる軍人さんは、ことごとく大佐なのか)
❝いえーい柏木空佐、観てる~?❞
❝観てますよ~❞
❝なに一式さんのお友達って、ちょっと訓練しますよって言っただけで世界の軍人さんがこぞって集まるほど強いの? 女の子なのに?❞
❝強いで❞
❝ちょっとカッコイイかも・・・❞
アリスも自分の胸を叩いた。――ちなみに欧米人にしては薄め。ここに関しては、私は勝利している。
「私は本当に軍人さんのお役には立たないでしょうが、一般の方ならロボット戦闘のレクチャーをしましょうか、多分普通のプレイヤーさんにはこっちの方が役に立ちます」
❝ちょっ――、一式さんに会えるだけで物凄い価値ですよ!?❞
❝あたし、絶対行きます!!❞
❝訓練料は幾らですか?❞
今回はみんなの安全も考えての話、誰でも参加して貰いたい。
だから、私は無料で構わない。
「もちろん私は無料ですよ」
ただアリスはそうはいかないと思う。
「わたしも今回は無料で―――と言いたい所ですけど――そこは事務所と相談ですね。まあ、チャリティー的な何かで押してみます。ウチの社長はいい人なんで、許可出るとは思いますが」
❝素晴らしい、我の海兵隊から五じゅ――❞
「軍人さんは、一人100万円です!!」
私はとんでもない人数を送り込まれる前に、思わず適当に大きな値段を言った。――のに。
❝了解した❞
❝問題なし❞
❝その値段で良いんだね。Missスウ❞
「え―――ひゃ、ひゃくまんえんですよ?」
❝ははは、Missは自分の価値が分かっていないようだ❞
❝安いくらいだよ❞
え、あれ!?
「ま、待ってください! いっぱい人を送り込まれても困るので、軍人さんは各軍から5人までにして下さい!!」
❝ジェームズ・スミス、こちら全て問題なし。オーバー❞
❝18:04。柏木 総一郎、了解した❞
❝お茶目だなこの人たち❞
各国の軍人さんが、当然の様にOKを返してくる。
「みなさん、私は昔の格言を今思い出しています」
❝口は災いの元❞
私が鬼軍曹側になるって、マジで言ってんの?
まあ、今はお金が欲しいからいいかあ。
「とりあえず、気を取り直すので待って下さい」
❝気を取り直すって宣言する人、初めて見たわw❞
私は、アリスをジッと見つめる。
(じー)
すると、アリスが照れたように頬を染めて「な、なんですかスウさん・・・」と尋ねてきた。
「推しを見て、気分の入れ替えを」
「い、いつも見てるじゃないですか!!」
「―――ふぅ。気持ちよくなって不安を上書きしました」
❝友達で気持ちよくなるなwww❞
私、アリスと仲良くなれたとは思うけど・・・まだ怖くて「友達になって下さい」って言ってないし、当然返事も聞いてないから―――友達じゃないんだよね。
早く友だちになりたいな、勇気が欲しい。
「じゃあ、どうしましょうか。命理ちゃんにみなさんも会ってみますか?」
❝会いたい❞
❝是非!❞
「今日は、とりあえず通信だけになりますが」
視聴者も会いたいようなので、予定通り命理ちゃんに通信をする。
開くウィンドウ。
命理ちゃんの可愛らしい顔――ではなく、なんか鼻眼鏡をつけた顔が現れた。
「命理ちゃん・・・なにしてるの・・・」
『皆さんを楽しませようと思って、着けてみたわ』
「そ、そっか・・・とりあえず自己紹介を・・・」
『命理です。1000年ぶりにシャバに出てきました』
「みなさん・・・・とりあえず、彼女が命理ちゃんです。挨拶が凄くアレだけど・・・」
❝可愛い雰囲気はあるよな・・・❞
❝多分、ものすごい美人さんだと思うけど❞
❝千年間を冗談にできるとか、すごいな・・・・❞
『みなさん、今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします』
❝今後とも? 今まで何もしてないんだけど❞
❝ご指導ご鞭撻が必要なのかなあ・・・❞
「なんか違うね、その挨拶」
『一生懸命考えてみた』
「え、えらいえらい」
そろそろ通信切った方が良いかも。
「じゃ、じゃあ初顔合わせはここまで・・・・と言うことで・・・・」
『わかったわ』
❝はーい❞
❝変わった子だなあ❞
『スウまたね。大好き』
「お、おう」
❝なるほど、そっちか❞
❝一気に可愛く見えてきた❞
通信が閉じられる。
「さて、じゃあ今日の配信だけど」
❝30層のボス攻略はしないの?❞
❝アホか、ボスはレイド戦だぞ。数百人、数千人で挑むもの。で、30層は一年半前と2年前に挑んでボコボコにやられたんだよ❞
❝まじか・・・❞
❝何回も挑んで、プレイヤーが撃墜されまくって大変なことになったんだよなあ・・・❞
❝それは・・・軽々しく攻略できないな。すまん❞
なんかコメント欄が暗くなったので、私はとりあえず。
「えっと、というわけで30層ボスレイドが募集されるまでは普通の配信をするつもりです。私もフェイレジェの事まるで分かっていないので。――アリス、今日はなんか教えてくれるんだよね?」
「はい、レプリケイターを使ってみませんか」
「レプリケイター?」
「凄い3Dプリンターみたいなものです」
「プラモデルとか作るの?」
「いえ。いろんな材料を入れて、それを設計図通りに出力してくれるんですよ」
私は頭をひねる。
「――つまり何でも作れるってこと?」
「だいたいそうですね」
「なんか凄そう――、という配信になるらしいです」
❝おk❞
❝超科学見てみたい❞
❝『科学のちからってスゲー!』❞
❝製造は、『もう全部ソイツ一つでいいんじゃないかな』❞
アリスがコメントに首を振る。
「製造を一手に任せられるという事もなくて、この機械は大量生産に向いてないらしいです。この機械は沢山の種類の物が作れますが、一種類の物を沢山作るのは向いていなくて。職人芸的なことも出来ません」
「なるほど。クオリティがそこそこの物を少量しか作れない代わりに、色々作れるって感じなのかあ」
「じゃあハイレーンに降りて公共になってるレプリケイターを借りにいきましょう」
「りょ」
こうしてハイレーンに降りて私達は、レプリケイターの有る広場に来た。
巨大なマシーンが沢山並んでいる。
「これがレプリケイターです。ちなみに作りたいものに近い素材を入れたほうが良いです。分子に分解して再構成もできますけど」
「ぱない」
「分子に分解して再構成は結構コストかかるんです。けどまあ、まだ現実的です。原子に分解して再構成は、コストが掛かりすぎて現実的ではありません。さらに量子に分解してとなったら大変な事になります。例えばダイヤの指輪を作る時、空気からも作れますが、とんでもなくコストが掛かります。炭を持ってきてたほうがまだいいです。さらに炭を持ってきて作るより、加工前のダイヤの原石を持ってくる方が良いです。加工済みのダイヤなら更に良いですね」
「炭を持ってきてダイヤを作るには、どのくらいコストが掛かるの?」
「1カラットで、銀河クレジット1000ポイントくらいですね。日本円にして1万円程度です」
「え、1カラットのダイヤって100万円とかするんじゃ――この機械で作ったダイヤを地球に持ち込んで売れば、大儲けできるんじゃ!」
「地球でダイヤの1カラットが100万円するのは、天然物のダイヤですね。工業用ダイヤ1カラットは地球でも、10円から100円程度のコストで作れますよ。レプリケーターで作れるのは、いわば工業用ダイヤですからね」
「ナンテコッタイ」
「そういうことです。――さてココに、わたしがとある惑星で取ってきた天然物のダイヤがあります」
「まじで!」
アリスが胴体サイズの塊を机に置く。
「1000カラット」
「想像を、軽く凌駕した」
「ダイヤモンドで出来た惑星があるんですよ。そこで採掘してきました」
「ダイヤモンドの価値、大丈夫なんだろうか・・・」
「最近、地球のダイヤモンドに付加価値が設けられたみたいですね」
「ピッケルを振ってきたの?」
「いいえ、採掘マシーンです」
「とことん便利」
「便利ですが、あの惑星は高温・高重力すぎて、パイロットスーツを着ていても生身で地上に立てないですよ。しかも1000カラットと言っても、使える部分は少ないんですが。――これをまずレプリケーターにいれて。同じく採掘してきた銀と、チタンと鉄と炭を少々。わたしが3Dソフトで作った設計図を投入――スイッチオン」
レプリケーターが作動すると、暫くお腹に響くような ゴウン ゴウン という音が鳴っていたかと思うと、横にあったロッカーみたいなものが開いた。
「出来ました、ダイヤのブローチです」
アリスが、ブローチを3つ机に置く。
拳ほどの大きさのダイヤの付いた、大。
大福ほどの大きさのダイヤの付いた、中。
ダイヤがあしらわれている事が、よく見ないと理解らない、小。
「スウさん、どれが良いですか?」
「え」
「好きなのを貰って下さい」
「悪いよ・・・」
この間キーホルダー貰ったばっかりだし。
「・・・・スウさんの為に採掘してきたのに・・・」
アリスが泣きそうな顔になる。
「わ、わかった! じゃあ小を!」
「遠慮しなくて良いんですよ?」
「いや拳大とか、大福みたいなサイズのダイヤとか着けてたら目立ちすぎるじゃん。というか重い」
「そうですか」
「デザイン的に、小さいのが一番良いし」
「気に入ってもらえましたか?」
「うん。流石アリス、センスが良い。スーパーウーマン」
「ですね。スウパーウーマンです」
なんかイントネーションが変じゃなかった? 今。
「でもなんでブローチ?」
「ほら、ペンダントが銃弾から身を護ったとか在るじゃないですか。そのために六炭化チタンをベースにしました。このブローチはどこでも貼り付くので、パイロットスーツに貼り付けておいて欲しいです」
「なるほど、ありがと。お守りかあ」
「わたしが貼り付けてあげますね。そのスーツに似合うようにデザインしたので」
「うん、じゃあお願い」
アリスがブローチ小を手にして、私に貼り付けようとする。
しかし彼女は私の体に触れた瞬間、頬を引きつらせた。
「これ、大きすぎません!?」
「え、ちょうどいいサイズのブローチだよ?」
「違いますよ! このおっぺーですよ!」
アリスが私の胸を揉みしだく。
私はビックリして、
「ひ、ひいいいいい!」
ガチ悲鳴を挙げてしまった。すると、アリスがぱっと手を離した。
「そ・・・そんなに怖がるとは――すみません」
「な、なんで他人の胸を揉むの・・・!?」
「えっと・・・女同士だと、このくらいのじゃれ合いは普通にするじゃないですか、いつもの調子でした」
「そ・・・・そうなの?」
「――はい――あ、もしかしてスウさんってしたこと無かったですか?」
「ごめん。私、ボッチだからその辺が分かってなかったんだね・・・・」
「いえ、わたしの方が失礼でしたから」
「じゃあ」
私は胸を張る。
「ど、どうぞ」
「は?」
「揉んで下さい」
「え・・・・」
アリスが、またも頬を引きつらせる。
その表情に、私はちょっと焦る。
「あ、そういう場面じゃない?」
「いえ、揉みます」
アリスの真剣な表情が、私を見つめてきた。
な、なんか怖いんだけど。
アリスはそっと私の両胸に触れて、ゆっくりと揉み始めた。
両胸!? しかもなんか手付きが優しい感じで・・・。
「ちょ・・・アリス、さっきと揉み方が違わない!?」
「違わないです」
「・・・んっ―――・・・。――ア、アリス!? なんか、丁寧すぎるよ・・・!!」
撫でるような揉み方やめて!?
「やめ、ア、アリスやめて・・・それ、乳首だから!」
❝けしからん、もっとやれ❞
❝ふう❞
❝叡智な光景で、賢者が生まれとる❞
「じゃれ合いで乳首くらい抓みますよ?」
「そ、そうなんだ・・・?」
❝おい一式さんwww❞
❝抓まないわよワロwww❞
私が胸を自由にされながらコメントを視ると、アリスの行動はやっぱり可怪しいという物が。
「アリス、コメントがやっぱおかしいって言ってるよ!」
危険を感じた私が、アリスから距離を取る。
するとアリスはしばし私の胸を、名残惜しそうに見つめていた。
私は胸を隠してアリスに首をふる。
「も、もう終わり!」
「そうですね。堪能しました――わたしには無い柔らかさで天にも昇る心地だったので、危うく天に召される所でした」
「それは駄目だわ・・・もう揉ませない」
「また揉ませてくださいね」
「・・・駄目だって」
「では勝手に揉みます。話は戻りますけど、スウさんもレプリケイターで何か作ってみませんか?」
「前半の言葉は聞き捨てならないけど、後半はその言葉を待ってたよ」
「興味を持ってもらえて嬉しいです。お店で買える材料で作れるものを作っても良いですが――自分たちで素材を取りに行きませんか」
「自分で材料を取りに行くのが、断然良い!」
「では、何を作りましょう」
「バーサスフレームの武器とか作れる?」
「バーサスフレームの武器は、大きいですし・・・・内部が複雑な物だと、素材集めに時間かかりますよ。――じゃあ、そうだ、バーサスフレーム用のペイント銃とかどうでしょうか」
「それは武器なの?」
「ペイント弾を当てられた対象は、VR画面にタグが表示されるんです。このタグは仲間で共有されるんで、集団戦で便利なんですよ」
「なるほど、火力集中は集団戦の基本だもんね」
「はい。2000人もいるクランに所属していたんで、こういった戦略の便利さを知っています」
「じゃ、じゃあ、ペイント銃を作ろ!」
「レールガンでペイント弾を発射する形式でいいですか?」
「なんか凄いの来た――でも、それで」
「レールガンはメンテにクレジットや勲功ポイントが凄く掛かるんですが、ペイント弾はそんなに使うものでもないので大丈夫だと思います」
「なるほど!」
「えっと材料は――」
アリスがウィンドウを開いて、レールガンの材料を検索する。
「――こ、これは・・・・材料が多いですね。しかもレアメタルが色々必要です。レールガンではなく火薬式なら材料は、ほぼ鉄ですが。レールガンなら弾速が火薬式の倍ですから当てやすいんですよね。ペイント弾は貴重なので外したくないですし」
「じゃあ、ある程度はお店で材料を買う?」
「そうですね。主な材料はホウ化チタンですか。普通は電気を通さない物質ですがイオン化して電気を通すみたいですね。バーサスフレームの装甲にも使われてる材料ですね」
「・・・アリスたちはペイント銃をどうやって作ったの?」
「ペイント銃は、勲功ポイントで買いました」
「ですよね」
「でも、スウさんは買うんじゃなくて、作ってみたいですよね?」
「もちろん!」
「では沢山使う鉄とチタンそれからホウ素、あとペイント弾のインクの原料となる木の実ペンタルを取りに行きましょう」
「ゆこうゆこう」
「そういうことになりました」
『鉄とチタンは、地球側に1000光年ほど行った元・恒星にあります。木の実はそこから400光年程離れた惑星に有りますね。どっちもMoBの居ない領域になります』
「MoBが居ない領域とかあるんだ?」
『はい。射手座A*からの距離換算で、ハイレーンより外側にはMoBは居ないそうです。5つの主惑星で抑え込んでいるんだとか』
「じゃあ、安全なんだね」
『資源採掘には、外側が向いていますね』




