530 空さんが笑います
・・・ここのリスナーは、邪智だけは働くから。
「いいや、スウが居たから武器も手に入ったんだ、土台で役に立ってるじゃねぇか――ただ問題が一つある。ドラゴンの吐く炎だ」
「炎も吐くんですか!?」
「それもかなりの高温で、木なんか瞬く間に燃やすんだと。まるで火炎放射器らしい――リイムは羽毛に覆われているし、リッカも危ない」
「火炎放射器ですか・・・鉄やチタンの盾や鎧なら一時的には防げると思いますが、熱されたら大やけどになりますよね」
チタンも、第一遷移金属です。私は生み出せます。
「そうだな・・・・だからといって耐熱粘土を貼り付けたりしたら、重くて飛べないだろう」
「うーん・・・・火炎放射器ですか。・・・・何か簡単な対策が有ったような・・・」
「アイデアがあるのか?」
「ちょっと待ってください――」
私はしばらく思い出そうとする。――だめだ、〖サイコメトリー〗を使おう。
「あ! パイナップル!」
「パ、パイナップル!?」
「パイナップルの皮って、凄い耐火性能があるんですよ!」
「ま、まじかよ・・・」
「パイナップルはちょうど見つけてますし、パイナップルの皮なら軽いからちょうど良いと思います。実験して行けそうだったら鎧と盾を作ってみませんか?」
「パイナップルか・・・・そうだな実験をしてみよう」
「お、なんか沢山パイナップル採ってきたねぇ」
星ノ空さんが積み上げられたパイナップルを見上げて感心するように言った。
「これ、全部食べるの?」
「食べますが、ちょっと実験したくて」
「実験?」
「スウ、準備できたぞ」
「はい」
私はパイナップルの皮を削ぎ落として串に刺し、オックスさんが火を起こした鍛造用の炉に持って行く。
かなり大きな火が上がっている。
空さんがビックリする。
「え、パイナップルの皮を焼いて食べるの!?」
「いえ、パイナップルの皮の耐火性能を試してるんです」
「耐火ぁ!?」
私は串を持ってパイナップルの皮のザラザラした面を火に近づけるけど、裏側の果肉にはまるで変化がない。炎はかなりの温度が出ているはずなんだけど、触ってみても熱くもなかった。
「余裕みたいですね」
「だな・・・まさか、パイナップルにこんな秘密があったとはな・・・」
「これで盾と鎧を作りましょう」
そんな私の言葉を聞いた星ノ空さんが、
「―――ぶっ」
吹き出した。
「ぶひゃひゃひゃひゃひゃ――パ、パイナポーの盾と鎧。ぶひゃひゃひゃひゃひゃ」
「あんまり笑わないでください! リッカに見つかったら『使わない』とか駄々こねられますから!」
「そんなの使わないぞ!」
――ほら、見つかった!
リッカが顔を真赤にして、こっちにご立腹の目線。
私は慌ててリッカを説得しようとする。
「い、いや、スキルを使えない海峡にヤバイ竜がいて倒さないと駄目なんだけど、スキル無しの実戦ではリッカが一番強いし、凄い炎吐いてくるんだよ」
「ヤダ! そんなカッコ悪い盾と鎧を装備するくらいなら、海峡渡れなくて良い! スウみたいにガニ股で泳ぐみたいなもんじゃん!」
何だと、このチビ。
❝スウ、ガニ股で泳いだんだ?w❞
❝見たかったwww❞
「とにかく、パイナップルの鎧とかはそこまでダサくないから、見た目は竜の鱗の盾と鎧みたいな感じでカッコイイよ!」
リッカが疑いの目で私を見てくる。私は実物を見せてプレゼンしようと決める。
「とにかく一回作ってみるから、見てみて!」
「ダサかったら使わないからな!」
「任せて!」
というわけでとにかく盾を作ってみることにした。
下地は何にしよう。チタンかな。軽いし、硬いし。
あと、鎧は関節部分をダイラタンシーにしてみようか。お芋を粉にすれば、片栗粉を作れるはず。
それか、粘土のどれかをダイラタンシーにしても良さそう。耐熱もできそうだし。
袋を作るなら皮が欲しい、また大きな獣を狩る必要があるなあ。ワニと恐竜の皮は硬すぎて、関節には向かないし。
まあ、今はとにかく盾だ。リッカもリイムも同時に守れる大きな物にしよう。
(ちなみに、ダイラタンシーは却下された。リッカ曰く「素早く動くと固くなって動けん」らしい。やっぱ実際にやってみないと分からないことって有るね! そこ、考えればわかること、とか謂わない!)
私は、薄いタワーシールドの前面に剣山みたいなのが生えているのをイメージする。
そしてチタンを生成。
「よし出来た」
パイナップルを切って、皮を剣山に刺していく。
ちょっと針がはみでてるけど、盾ならこの針で殴っても良さそうだし――鎧はそうは行かないから(リッカやリイムが怪我しちゃう)皮を刺した後、針を叩いて曲げておこう。
皮を奪われた大量のパイナップルを見る。――今日から何日かは、パイナップルパーティーになりそうだなあ。
何個かジュースにして竹の水筒に入れておこう。
私が作業している横で、オックスさんもイカダを作っている。
サクサク出来ていく、竹のイカダ。
流石の手際。
オックスさんはヨットも得意らしく、帆を張っていた。




