497 飛ぼう
❝セ、セカンド・ゾーン!?❞
❝モデレイター(リッカ):まて、止めろスウ!!❞
私は、避けきれない弾幕に、右側の翼にぶつける。
右の翼が弾幕に当たった。
右の翼がもげた。
「腕の一本くらいなら・・・あげる」
❝おい、右側の翼がなくなったけど!? スウ、大丈夫か!?❞
❝片翼で飛んでる・・・嘘だろおい・・・❞
『ちがう、確かに被弾だが、スウはわざと右側を選んで破壊したんだろうな』
❝マイルズの言葉を誰か訳して❞
❝マイルズさんがいいたいのは、反トルクの事だともう。スウはあの弾幕の中を抜けるために翼をわざと破壊したんだ、それも右をわざわざ選んで❞
❝――そうか、あのプロペラ戦闘機はプロペラが右回転だから、左に機体が回転しようとする反作用が起きてる。だからスウは右側の翼だけをもいだんだ。機体サイズを小さくするために。――左側をもいだら、機体が回転して大変なことになるけど、右ならまだ大丈夫❞
❝頭おかしい❞
❝解釈一致。しかも満場一致❞
❝ビーナスの弾幕がどんどん濃くなっていく・・・❞
❝ビーナスのHPゲージ見ろ、ビーナスも必死なんだ! いよいよ追い詰められてる!❞
❝でも、スウもあんな状態じゃ長くは戦えないだろう❞
一気に倒そう。
上空がほしい。
「一斉掃射」
私は〈時空倉庫の鍵・大〉の武器も使って攻撃しながら、ビーナスの上空に行って、〈単分子波動翼〉を発動。
「パージ」
❝ちょ、落下する〈単分子波動翼〉をぶつけたのはいいけど、翼を全部なくしたぞ!? リフティングボディじゃないよな!?❞
❝どう見ても普通のレシプロ戦闘機!❞
❝落下してる! 左右舵――昇降舵と、方向舵だけで弾幕を避けてる!❞
❝てか左右舵と、昇降舵しかないのに横転までしてるぞあの子!❞
❝た、確かに左右舵でも横転できるけども❞
『怪物じゃないか』
❝マイルズまで驚いてるし。軍人驚かせるってもう・・・❞
❝スウが、決めに行った!❞
❝てかもう本当に弾幕の隙間がない、飛行機の胴体も通れないぞ❞
プロペラも折れた。
❝だめだ、マイルズが攻撃してるけど相手のHPが削りきれない。もう衝突する! 方向舵じゃ弱いか、昇降舵で回避しないと――って、回避しない!? なんで❞
❝って、回避運動とらないの!?❞
❝スウが、飛行機から飛び降りた!?❞
❝ちょ、飛行機をヴィーナスにぶつけた!❞
❝スウはどうするんだ❞
飛行機は通れなくとも、人はまだ通れる。
「〖飛行〗」
❝なるほどスキル!❞
❝駄目だ、飛行機をぶつけたくらいじゃ威力が弱い!❞
❝ビーナスのHPがミリだ!❞
「まだ」
❝まだなんか、隠し玉が有るの!?❞
「隠し玉はもうない」
❝・・・・じゃあ❞
私は落下しながら思いつく限りのスキルを使って、ビーナスに渾身のパンチを叩き込んだ。
ビーナスが一気に飴色になって、ヒビが入る、ヒビから光が漏れて――、
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倒した。
『今回はコアは無しか』
マイルズが呟いた。
❝やりやがった、発狂デスロすら超える強さを見せてきたビーナスに勝っちまいやがった❞
勝ったから、ゾーンを解除・・・・あれ?
え・・・なに・・・なんで。
ゾーンが切れない!?
❝どうした、スウ❞
・・・・視界が戻らない!
青いまま、ゾーンが解けない!!
「ゾ、ゾーンが解けないんです!」
❝モデレイター(リッカ):なっ!❞
❝モデレイター(アリス):ス、スウさん、大丈夫ですか!?❞
リッカとアリスが配信を見ていたのか、心配そうなコメントをする。
「わ、分かんない! なんでゾーンが切れないの!?」
『スウさん!』
突然開くVRの通信ウィンドウ。
アリスの青ざめた顔があった。
すると、アリスの顔を見た途端。
視界に色が戻ってきた。
「あ・・・・解けた・・・良かった」
『よ、良かったです』
「うん、ビックリした」
『ゾーンが解けない事なんて、あるんですね』
「ちょっと怖かったよ」
❝モデレイター(リッカ):スウ❞
「えっ、・・・なに、リッカ」
❝モデレイター(リッカ):セカンド・ゾーンはもうやるな❞
「え・・・でも、アリスがいたら戻れるし。多分これからさらに強力な敵が現れるだろうし」
❝モデレイター(リッカ):お願いだから・・・もう止めてくれ。・・・・そうだ! サード・ゾーンなんて物を見つけても絶対にやるなよ・・・!!❞
「・・・う」
❝モデレイター(リッカ):・・・お願いだから❞
「わ、分かったよ。心配かけてごめん、リッカ」




