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迫ってくる触手。
くっ、この猛烈な弾幕の中で!!
「マイルズ、一旦距離を置いて、弾幕の薄い場所へ!!」
『ああ!』
私達は弾幕の薄い場所に逃げて、射撃。
「嘘・・・」
触手で、こちらの機銃が弾かれる!
なんか払うような動きで、触手が弾丸を弾いている。
「マイルズ、スモーク!」
『コピー!』
機体の背後から出る煙。航空ショーで使われるアレ。
空に描かれる、煙のリボン。
私とマイルズは、螺旋を描きながら煙幕を展開。
そして反転、スモークの中に入って、中から射撃。
「視聴者さん、私達の弾は当たってますか!?」
❝ああ、触手に弾かれてない!❞
❝ビーナス、目視で弾丸を弾いてたのか!❞
スモークの中には触手が飛んでこないから、ビーナスが目視してるのは、まず間違いない。
ふと思い出す、アリスの言葉。
「『切り結ぶ 太刀の下こそ地獄なれ 踏み込み見れば跡は極楽』――よし、なら・・・近づこうマイルズ! 私がスモークを振りまくから」
『ボクが中から射撃か――よし』
私は弾幕を躱しつつ、バレルロール――というかもうコークスクリューみたいにしながらビーナスに接近。
マイルズは私が空に描いたスモークのなかからビーナスへ射撃。
❝まって、近づくための抜け道がない。上の方にあるけど、あんな上だと失速しないか!?❞
私は、マイルズに作戦を伝える。
『マ、マジで言ってるのか、このプッツン女』
❝スウとマイルズなにを言ってるのか分かった奴いる?❞
❝わかんね❞
『いいだろう、任せた』
マイルズがスロットルを前回にして私の前に来る。
私はマイルズの後方へ着く。
私はマイルズに相対速度を合わせながら、機体の前輪を出した。
❝スウなんか前輪だしたけど、なにする気なんだ?❞
❝ちょっ、マイルズにどんどん近づいていくぞ、しかも二人共どんどん加速してる!❞
❝なにして❞
❝ぶつかるっ!❞
私が近づいてくると、マイルズが機首を上げ始める。
そうして前輪と、マイルズの機体が接触。
私はマイルズの機体の上を、前輪で駆ける。
❝マイルズの機体の上を、スウが走った!?❞
私は機首を一気に上げたマイルズを、ジャンプ台の要領で
❝マイルズがスウを跳ね上げた!!❞
一気に加速、弾幕と触手を抜けた。
マイルズは急反転、遠ざかりながら弾幕を薄くして躱した。
❝ウッソだろ、あんな滅茶苦茶な方法で弾幕を抜けた❞
❝だけど、まだまだ弾幕の海だぞ、どうするんだ❞
❝どこが極楽だよ!?❞
「いえ、極楽です!」
私は機体の車輪をすべて出す。
そうしてビーナスの触手に乗る。
❝ちょ、おまっ――スウがヴィーナスの触手の上を走ってる!? 触手の上を走りながら、バルカンを撃ってるぞ!❞
❝波乗りみてぇ!!❞
❝いや、あんなの綱渡りだろ!!❞
❝安置じゃないけど、ヴィーナスの触手が盾になって弾幕が大分薄い! さらに、触手が追ってくるのを躱したりもしてる!❞
『スウが、触手をひきつけている間に攻撃させてもらう!』
マイルズが猛烈な攻撃を開始。
だけど、
❝ヤベェ、スウに弾幕が当たる!❞
私は機体を右に横転させる。
❝だめだ、触手が右から来た❞
これを待っていた。
私は私の機体を薙ぎ払おうとする触手に翼の先端を当てて、機体の側転を加速させる。
弾幕をすり抜け、触手を受け流す。
❝翼を触手に当てて戦闘機が、側転させたぞ!?❞
❝追いついてきた触手の上を、翼で側転しながら飛び移るように移動してる・・・❞
❝飛行機がNINJA機動してる❞
❝って、その先の前方が弾幕の壁じゃないか!❞
どうする・・・。こう!?
❝コブラ?❞
❝いや、機首上げじゃなくてなにあれ、あんな機動あったっけ?❞
❝エンジン停止させて、揚力をうしなって普通に落下しただけだ、あれ・・・❞
❝ええ・・・❞
「よし、震電モード」
私は機体を落下させながら、プロペラを逆回転させた。
❝変形みたいに言ってんじゃねぇ❞
機体を後ろ向きに飛ばして、落下させながら加速させる。
やがて、機体を覆う空気の傘。
よし、音速を超えた!
側転落下で反転、そのまま急上昇。
弾幕を躱していく。
「加速の乗った〈単分子波動翼〉を喰らえっ!!」
加速を込めた〈単分子波動翼〉でビーナスを斬りつける。
斬りつけながら、さらに上昇。
弾幕の薄い場所まで上昇したら、下を確認。
また震電モードで落下しながら、速度を溜めて、そのままビーナスを斬りつける。
側転落下で通常モードへ。
再び上昇。
❝まてまて、ぶつかる! 弾幕にぶつか――❞
❝着陸用のパラシュートで減速した!❞
❝これはよくあるやつ!❞
今度は下降。
❝まて、また弾幕にぶつかる!❞
❝え、止まった!?❞
❝アレスティングフックを、触手に引っ掛けたんだ!!❞
❝なんて滅茶苦茶しやがる!❞
『化け物かお前は・・・』
マイルズに改めて言われた。
❝でも、あんなに止まったら離陸出来ないんじゃ・・・・❞
❝落下しながら加速するか? ・・・って真下も弾幕の海じゃねぇか❞
私はパラシュートを触手に引っ掛けたまま、プロペラを全開で回す。
すると浮き上がる私の機体。
❝え、浮いた!?❞
❝そうか、レシプロ機は滑走路無しでも離陸できる❞
❝翼にプロペラで風を送って揚力を確保したのか!!❞
❝アレスティングフックを切り離して、また飛んだ❞
❝さっきからとんでもない事ばっかりやってるぞこの子!❞
❝エレガントだ、スウ❞
「ユーは黙って!!」
❝しかしもう、スウにハチャメチャ機動されまくって、なにされてるのかわっかんねえ❞
正直、訓練シミュレーターから出たばっかの私じゃ、ここまで戦えなかったと思う。
70層までの戦いで、私も成長したんだ。
❝ビーナスが触手を切り離した❞
❝触手を利用されて、困ったか❞
❝弾幕がさらに激しく!❞
ビーナスが強くなればなるほど、私のゾーンも深くなっていく。
もう少し、もう少しで何か掴める。
❝まてまて、今度こそ隙間がないぞ!? 何処探しても、有効射程内に飛行機が飛べる隙間がない!!❞
❝スウ離れろ、無理だ❞
その時、私にまばゆいほどの光が見えた。
そうか――これだったのか!
「入れ、」
❝ゾーンなら、もう入ってるだろ!?❞
「――セカンド・ゾーン」




