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495 最強の敵が顕れます




   ◆◇◆◇◆




 気づくと、妙な空間にいた。

 毒々しい色のまだら模様の空間に、ビルやら橋やら、標識やら色んな物が浮いている。

 眼下には海。風もある。でも、空がない。

 奇妙な空間をしばらく進んでいると、右の方の空間が揺れて、マイルズが出てきた。


『――やっと命中したか、弾丸をスウみたいに避けるんじゃない。全く』

「あっ、マイルズも倒したんだね」

『ああ、お前も倒したか。なかなか手強い相手だったな』

「やっぱ強かったよねぇ」

『実戦で横転コルク抜きを初めて使ったぞ。さて、と――おいでなすった』


 マイルズが前方を睨んだ。

 私も前に向き直る。

 懐かしい姿がそこにあった。


「・・・やっぱり、ここのラスボスはお前なんだね――」


 現れたのは頭のない縄文のビーナスのような見た目。

 そこからケタタマシイ笑い声。


「――ビーナス!」


 間違いない、ビーナスだ。


 私が今まで戦った中で、最強の敵。

 どんな相手も、コイツよりは弱かった。


 最強が、遂にリアルで私に立ちはだかった。


(勝てる? ――いや、勝つ!!)


「マイルズ! アイツは強いよ。でも勝つよ!」

『おう!』


 今日は、一人じゃない。


「お前がMoBの最強なら、こっちの相棒は、人間の最強だ!」

『奇遇だな、ボクの相棒も、人間の最強だ』


❝ヴィーナス、人類最強戦力を喰らえ!❞

❝やっちまえ、人類最強バディ!!❞


 コメントが加速する中、ビーナスから放たれる、土砂降りのような弾幕。

 私とマイルズは踊るように躱していく。


「行ける、躱せる。この機体は凄く小さいし、大気中だから空気を利用した色んな機動ができる。それに、レシプロ機の運動性高さ――小回りの良さで躱せる!」


 それに機体が軽いから――無茶苦茶な空中戦機動ができる。


「今必要なのは速さや航続距離みたいな機動力でもない。ドックファイトをするわけでもないんだ。ひたすらの格闘戦――なら運動性の高いレシプロ機がいい!」


 私は失速を利用して、側転するように弾幕を躱す。速度はそれほど必要ない――だから捨てて大丈夫。

 さすが前進翼のプロペラレシプロ機とかいう、格闘戦に特化しすぎた機体、瞬く間に〝捻り込み〟に入れた。ジェット機じゃこうはいかない。


 さらに今度は速度を失っていたのを、上昇するサーマルに機体を乗せて登っていく。


❝なんでプロペラ止まってるのに上昇してんの・・・あの子❞

上昇気流(サーマル)を捉えたんだ❞

❝しかも見つけるのが難しい、何処にあるか目印の無いブルーサーマルだぞ❞

❝空気を読む(物理)❞


 私はビーナスを撃ちながら、エンジンのスロットル全開。


 弾幕の間を縫っていく。

 そうしてすれ違いざまの急上昇。


 プロペラを逆回転させて、ビーナスの上でホバリング。


❝プラモデルじゃねぇんだよ・・・w❞


 パワーアップで取得したミサイルが落下してビーナスに衝突していく。

 なかなかの火力。


「これ、良いかも」


 弾幕は、ブレイクダンスのように踊って回避。


 危なくなったら一旦背面飛行になってから、状況を確認。


 背面飛行から、機首を下げてバク転のようなハンマーヘッド・ターンで落下する。

 だけど上空からみてたから分かるけど・・・・。


「マイルズ」

『どうした?』

「この先、弾幕を抜けられる場所があそこしか無い」


 マイルズが、私の指した方を見る。


『なるほど――一部は〖無敵〗で反射するとして』

「うん。それでも通れる場所が2機分ない」

『縦一列になるか?』

「だめ、あそこは斜めから飛んでくる弾幕を躱せない。二人で横に並ぶしかない」

『なるほど』

「だから――」


 私はマイルズに作戦を伝える。


『また無茶な』

「マイルズならできるでしょ?」

『当然だ』

「行くよ! 入れ、ゾーン!」

『ラジャ』


 私は、切れていたゾーンに再び入る。

 よし、輝くような青の世界になった。


 私とマイルズは左右に並んで並走。

 コメントが騒ぐ。


❝二機が躱せる空間なんてない、どうやって回避する?❞

❝翼が互い違いに、ほぼ重なっている!?❞

❝だけどその後どうするんだよ、弾幕は螺旋を描いて飛んできてるぞ!?❞


 迫ってくる弾幕。

 コメントが言う通り、螺旋を描いて飛んできている。


 躱せるルートも螺旋状だ。

 このまま二人でそれぞれが横転すると、翼が弾幕に接触する。

 だから、


「カウント、2、1――右横転舵(エルロン)低揚力機(スポイラー)引き上げる!」

『左横転舵(エルロン)高揚力装置(フラップ)を引き下げる』


 私は、右の翼の揚力だけを失わせた。


 マイルズは左の翼の揚力だけを上げる。


 二人は重なっている翼を中心に、手を繋いて回転するように旋回。


❝な、なんだあの動き!?❞


 私とマイルズは翼を重ねるようにして螺旋を描きながら直進、弾幕を躱し続けた。


「抜けた!」


 するとマイルズが褒めてくれる。


『アメイジングだ! スウ!』

「なんかユーっぽくて嫌だ」


❝なんだと、スウ!?❞


 あ、本人も見てたか。


 でもマイルズは凄いな、ゾーンなしで今のやっちゃうんだもん。

 そこから私とユーは二人で同時に〝捻り込み〟。

 二人共、標準のプロペラの回転向きは右に揃えてある。だから二機とも左旋回が得意。同じ動きができる。


❝なんでこの二人、失速機動でシンクロできるんだよ❞

❝成功させるだけでも難しい捻り込みで、失速のタイミングを合わせて宙返りで並走とかもう意味わかんねぇ❞


 そうしてビーナスの上空に回り込み、二人で逆さホバリング。

 パワーアップで取ったミサイルと、機銃で攻撃しまくった。


 やがて、ビーナスに罅が入った――。

 私は、ポカンと呟く。


「え」

『どうしたスウ』


 そうして、除々に警戒。


「・・・ない」

『ない?』

「ビーナスに、こんな現象ない!」


 体中に罅が入ったビーナス。

 その罅から、無数の触手が生えてくる。

 ビーナスが叫ぶ。


『ア゛ア゛ア゛ア゛―――キ゛キ゛キ゛キ゛キ゛キ゛キ゛キ゛ィ゛ィ゛ィ゛ィ゛ィ゛ィ゛』


❝モデレーター(クナウティア):スウさん、気をつけて下さい! ドミナント・ビーナスです! 星団帝国でも銀河連合でも、一度も〝撃破されたことない〟MoB!❞

❝クナウティアさんをモデレーターにしたのかよ、この子❞


「えっ、ドミナント・ビーナス?」


 ビーナスより強いってこと!?


『第2形態か!』



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